表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星を拾った少女  作者: 倉木元貴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
27/84

星の欠片(第27話)

 塔の中央で、戦いは二つに分かれた。

 レオンとカイトとミナVSアレス。

 そして、キーリとルミナVSヴァルド。


 塔の中心は、星の光が差し込むはずの天井が黒星の気配に濁り、薄暗い空気が揺れていた。石床には戦いの余熱が残り、焦げた匂いが漂う。


 ヴァルドは壁にもたれたまま、まるで観劇でもしているかのように、楽しげな目でキーリを見ていた。

 その視線は軽く、しかし底の見えない深さを持っている。


「緊張してるの?」


 キーリは剣を握りしめた。

 手のひらは汗ばんでいる。胸の奥がざわつき、呼吸が浅くなる。だが、それを悟られたくなかった。


「し、してない」


 ヴァルドが喉の奥で笑う。

 その笑いは、挑発というより“観察者の愉悦”に近かった。


「あはは、君は、嘘をつくのが下手くそだね」


 ゆっくりと前に出る。

 その足取りは散歩のように軽く、床に落ちる影だけが不気味に揺れた。


 キーリは星の力を手に集める。

 胸の星が脈打つように光り、熱が身体の中心から広がっていく。


 ヴァルドが言う。


「正直面白いよ、君」


 キーリは眉を寄せる。

 この男は何を考えているのか、本当に読めない。


「何がよ。何も面白くなんてない」


 ヴァルドは笑い、指を一本立てた。


「普通。星の器って、力がもっと暴走するもんなんだ。でも、君は違う」


 少しだけ首を傾げる。

 その仕草は無邪気だが、言葉の裏には鋭い興味が潜んでいた。


「なんでだろうね。不思議だね」


 キーリは答えない。

 胸の奥で、恐怖と怒りと焦りが渦を巻く。

 だが、それを押し込めるように──一気に踏み込んだ。


「星剣!」


 光の斬撃がヴァルドの首を狙う。

 だが、スッとヴァルドの身体が霧のように揺れ、剣がすり抜けた。


「……え?」


 次の瞬間、背後に気配。

 ルミナが叫ぶ。


「キーリ後ろ!」


「遅いよ」


 ドンッ!!!


 背中に衝撃。

 肺の空気が一気に押し出され、視界が白く弾ける。

 キーリは床を転がり、石の冷たさが肌に刺さった。


 ルミナが叫ぶ。


「キーリ!」


 すぐに光魔法がかけられ、温かい光が傷をなぞる。

 だが、痛みは完全には消えない。呼吸もまだ乱れていた。


「何……今の」


 ヴァルドが指を振る。


「黒星の力。その一つ、影の移動。前にアレスが見せたと思うけど」


「厄介だ……」


「褒めてくれてありがとう」


 ヴァルドはまた消えた。

 気配が霧散し、塔の空気が一瞬静止する。


 ルミナが叫ぶ。


「キーリ、上!」


 見上げると、黒い影が落ちてくる。

 ヴァルドの刃が黒い光をまとい、空気を裂いていた。


 キーリは咄嗟に剣を上げる。


 ガキィンッ!


 火花が散り、衝撃が腕を痺れさせる。


「くっ……」


 ヴァルドの目が細くなる。


「よく耐えれたね」


 ルミナが魔法を構えるが、ヴァルドの蹴りが先に来た。

 キーリは壁に叩きつけられ、息が詰まる。


 ルミナは光のかべを作る。


「悪くないけど、それは意味ないよ」


 一振りで砕かれた。


「まだまだ」


 ルミナの攻撃は霧の身体に触れず、虚空を切るだけ。

 ヴァルドは歩くように近づいてくる。


「星の器──もっと強いと思っていたのに」


 キーリは歯を食いしばる。

 痛みで膝が震える。

 でも──倒れたままではいられなかった。


「……まだ」


 ヴァルドが首を傾げる。


「まだ? その身体でどうしようと言うんだい?」


 キーリは立ち上がる。

 膝は震えていたが、それでも胸の奥に灯った光だけは揺らがなかった。

 胸の星が強く光り、鼓動が塔全体に響くように感じた。


「まだ終わってない」


 その頃、レオンたちの戦いも激しさを増していた。

 アレスの剣が黒く光り、レオンの剣とぶつかるたび、塔の空気が震える。


 レオンは押されていた。

 カイトもミナも援護に入れないほど、二人の剣撃は激しかった。


「お前、なかなかやるな。ただの人間なのに」


「人間だからな」


 レオンは剣を押し返す。

 その目は折れていない。


「いいな。その剣」


 アレスの斬撃がレオンの肩を裂く。

 血が飛び散り、ミナが叫ぶ。


「レオン!」


 それでもレオンは下がらない。


「まだだ!」


 アレスが黒星の力を膨らませる。

 塔の空気が重く沈む。


 ルミナが呟く。


「まずい。黒星の力を使う気だ」


 キーリも感じていた。

 アレスの圧力、黒星の脈動。


 ヴァルドが言う。


「アレス。そろそろ終わらせてくれる?」


「ああ。もう終わる」


 その瞬間──キーリの胸の星が強く光った。


 ルミナが驚く。


「そんな……共鳴している」


 キーリの頭に、さっき見た映像がよみがえる。

 古代の塔。星の装置。星の光。

 そして──“集まる”感覚。


「……星を集めることができる?」


 キーリは剣を握り直す。

 ヴァルドの目が興味で輝く。


「何? どう言うこと?」


 だが、次の瞬間、ヴァルドの表情が変わった。


 キーリの周りに、小さな光が浮かび始めた。

 一つ。二つ。三つ。

 空気が震え、星の欠片が舞う。


 ルミナが息を呑む。


「星の……欠片」


 カイトが叫ぶ。


「まさか、新しい技?」


 ヴァルドが笑う。


「いいねいいね。ぜひ見せておくれよ」


 キーリは深く息を吸う。

 星の欠片が剣に吸い込まれ、光が強くなる。

 光は呼吸するように脈打ち、塔の空気そのものが震えているように感じられた。

 そして──


「白星剣」


 剣が輝き、塔の中が昼のように明るくなった。

 ヴァルドの目が細くなる。


「これは……」


 次の瞬間、キーリは踏み込んだ。

おもしろかったら評価、ブックマークよろしくお願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ