二つの影(第25話)
巨大な石の守護者。その身体は、塔の天井にまで届きそうなほど大きい。
その存在感だけで、空気が重くなる。キーリは思わず息を呑んだ。胸の奥がざわつき、足が震えそうになる。
腕がゆっくりと持ち上がる。
その動きは遅いのに、まるで山が動いているような圧迫感があった。
そして──
ドォォォン!!!
拳が地面に落ちた。
衝撃で床が割れ、砂埃が視界を遮る。
耳がキーンと鳴り、胸にまで振動が響いた。
「何あいつ! デカすぎ! 1発が強すぎ!」
ミナが叫ぶ。声が震えていた。
レオンが叫んだ。
「全員散開!」
全員が左右に飛ぶ。
石の守護者はゆっくりと動くが、一撃が重い。
その一撃を受ければ、ただでは済まない──誰もが直感していた。
カイトが走る。
砂埃の中、彼の影が素早く動く。
「足を狙って、隙を作る」
短剣が石の足を斬る。だが──火花を散らすだけで、刃は弾かれた。
カイトが舌打ちをする。
「さすがに石は硬いな!」
ミナがナイフを投げるが、傷はほとんどつかない。
レオンが剣で斬りかかる。
火花は散らしたが、それでも石は砕けない。
「硬すぎて普通の攻撃じゃ無理だ!」
焦りが声に滲む。
ルミナがキーリを見る。
その瞳は揺らぎながらも、どこか確信めいていた。
「星の力を使うしかないわ」
キーリがうなずく。
胸の奥が熱くなる。星の力が脈打ち、身体の中心に集まっていく。
「わかった!」
星の光が、キーリの手に集まる。
守護者が、キーリに向かって腕を振り上げた。
巨大な影が覆いかぶさる。
轟音とともに拳が落ちる。
キーリは叫んだ。
「星剣!」
光の刃が現れた。
剣が星の光で包まれ、空気が震える。
そして──
ズドン!
キーリの剣が、石の守護者の腕を斬った。
石が割れ、守護者が初めてよろめく。
「やった! 初めて効いた!」
ミナが驚きの声を上げる。
「今だ、カイト!」
レオンが叫ぶ。
カイトが背後から跳ぶ。短剣を構えて、守護者の関節を狙う。
皆もその後に続く。
ルミナは光魔法で援護した。
守護者が怒りの声を上げる。
身体が赤く光った。
その光は、まるで内部から煮えたぎる怒りが漏れ出しているようだった。
レオンがいち早く気づいた。
「でかい攻撃が来るぞ!」
守護者の胸が光る。
次の瞬間──衝撃波。
塔の床が爆発した。
キーリたちは吹き飛ばされた。
小柄なミナは床を転がり、砂埃にまみれる。
「うわっ!」
カイトも壁に強くぶつかる。
「うっ……」
レオンは剣を床に挿して踏ん張った。
「ん……くっ……」
ルミナはキーリを見る。
その瞳には心配と焦りが浮かんでいた。
「キーリ、大丈夫!」
キーリは立ち上がった。
息が荒い。それでも、胸の星は強く光っていた。
その光が、恐怖を押し返してくれるようだった。
「……なんか、わかる気がする……」
ルミナが聞く。
「何がわかるの?」
キーリは守護者を見る。
その胸の中心──そこに、小さな星型の石が埋まっていた。
「石の守護者の──弱点」
キーリが叫ぶ。
「レオン!!!」
レオンが振り向く。
「胸のとこ! 星の模様がある!」
レオンが理解する。
「──核か」
カイトが笑う。
「ナイス、キーリ」
ミナも言う。
「やるね! キーリ!」
守護者が突進してきた。
振動で地面が揺れる。
その迫力に、キーリの心臓が跳ねた。
レオンは守護者の正面に立った。
「俺が止める!」
レオンが剣を構えた。
守護者は拳を上げた。
ドンッ!!!
レオンの剣が拳を受け止める。
膝が沈むが、止めた。
その姿に、キーリは胸が熱くなる。
「今だ!」
レオンが叫ぶ。
カイトが跳ぶ。
守護者の腕を駆け上がる。
ミナも続いてナイフを投げる。
守護者の視線がミナにそれた。
その瞬間、キーリは走った。
剣を握ると、星の力が強くなった。
身体が軽くなり、視界が鮮明になる。
そして、守護者の胸へと跳んだ。
「星剣!!!」
星の刃が、守護者の胸の星の石を砕いた。
守護者の身体が止まる。
光が消える。そして──巨大な身体がゆっくりと崩れた。
星の塔は静寂に包まれた。
砂埃がゆっくりと落ち、空気が澄んでいく。
「……勝ったの?」
ミナが息を吐く。
「みたいだな」
カイトが笑う。
レオンが剣を下ろす。そして、キーリを見る。
「よくやったな、キーリ」
キーリは少し照れる。
胸の奥が温かくなった。
「そんな……みんなのおかげだよ」
その時、塔の中心にある装置が光った。
ルミナが振り向く。
「装置が動いた」
光が空へ伸びて、天井の星模様が輝く。
キーリの胸の星も共鳴する。
そして──キーリの頭の中に、映像が流れた。
古代の街。
空に浮かぶ星の光。
巨大な星の装置。
人々が話しながら空を見ている。
そして──空から無数の星が降る。
そんな光景をキーリは見せられた。
「……何……これ……」
映像はすぐに消えた。
ルミナが心配そうに聞く。
「大丈夫キーリ。何が見えたの?」
キーリはうなづく。
「大丈夫。それよりも──すごく昔の世界を見た」
レオンが言う。
「星文明か……文献で見た程度だな」
「お宝は! なかった?」
ミナが笑う。
カイトが床を見る。
守護者の残骸の中に、小さな光る石があった。
ルミナが言う。
「星石……」
キーリが拾う。
すると、胸の星が少し強く光った。
「力が強くなるのかもな」
レオンが言う。
キーリはその石を見た。
星の秘密。まだほんの一部だが、確実に近づいている。
胸の奥が高鳴る。
その時、塔の外から風が吹いた。
ルミナの顔が少し変わる。
「何かが……来る」
「何かって……何が?」
キーリが聞く。
ルミナは言った。
「敵。──多分、前と同じの」
塔の入り口。そこに、二つの影が立っていた。
アレス──そして。
白髪の男。黒星のヴァルド。
ヴァルドが微笑む。
「見つけたよ──星の器」
キーリたちの次の戦いが始まろうとしていた。
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