新しい仲間(第22話)
夜の広場では、剣と剣がぶつかり合う音が響いていた。
その音は乾いた金属音ではなく、空気そのものを震わせる衝撃のようで、広場の石畳がそのたびに微かに震えた。
夜風が吹き抜けるたび、舞い上がった砂埃が星明かりに照らされ、白い粒子となって散っていく。
レオンとアレス。二人の戦いは、人間同士とは思えない速さだった。
剣が見えない。衝撃波で地面の石畳が砕ける。
破片が飛び散り、建物の壁に当たって乾いた音を立てた。
カイトが呟く。
その声は驚愕と、戦士としての本能的な恐怖が混じっていた。
「やばいな……この二人」
ミナも目を見開いている。
その瞳には恐怖だけでなく、圧倒的な力への畏怖が宿っていた。
「この二人本当に人間なの?」
ルミナはキーリを見る。
その目は冷静だが、キーリの胸の奥に眠る力を信じている光があった。
「今よ」
キーリはうなずいた。
胸が熱い。星の力が呼ばれている。
鼓動が速くなり、体の中心に光が集まっていく感覚があった。
レオンが叫ぶ。
その声は戦場の轟音を切り裂くほど強かった。
「やれ!」
キーリは剣を握る。
手のひらが熱く、剣が星の光を吸い込むように震えた。
「……星よ」
魔法陣が地面いっぱいに広がる。それは、綺麗に光り輝いていた。
青白い光が石畳を走り、広場全体が昼のように明るくなる。
風が巻き起こり、髪が揺れ、空気が震えた。
黒星教団の兵士が叫ぶ。
「まずい!」
アレスも気づいた。
その目が鋭く光り、わずかに警戒の色が宿る。
レオンが笑う。
その笑みは、勝機を見つけた戦士のものだった。
「遅い!」
剣を振るう。アレスはそれを剣で受け止める。だが一瞬、動きが止まる。
その瞬間、星の光が輝いた。
光が降る。
ドォォォン!!!
轟音と共に、巨大な星の光が広場に落ちる。
爆風が発生し、建物の窓が割れる。
破片が夜空に舞い、光に照らされてキラキラと散った。
黒星教団の兵士が吹き飛ぶ。
そして、白い煙に包まれた。
しばらくして──煙の中から影が出てくる。アレスだった。
だが、マントが破れ、血を流している。
その姿は傷ついているはずなのに、どこか不気味な余裕を感じさせた。
「……なるほど。これが、星の力か」
アレスは少し笑っていた。
その笑みは、痛みすら楽しんでいるようだった。
キーリが驚く。
胸が強く脈打つ。自分の全力が通じていない現実に、恐怖が走る。
「なんで、まだ立てるの」
レオンも言う。
その声にはわずかな驚きと、戦士としての興奮が混じっていた。
「タフなやつだな」
アレスは肩に剣を乗せる。だが……
「今日は、ここまでだ」
カイトが言う。
怒りと悔しさが混じった声だった。
「逃げる気か!」
アレスは笑う。
その笑いは冷たく、広場の空気をさらに冷やした。
「逃げる? はっ、笑わせるな。今日の目的は確認だ」
キーリを見る。
その視線は、獲物を値踏みするように冷たかった。
「──星の器。それがどの程度なのか」
そして言った。
「また近いうちに会うことになろだろう。その時は──こんな程度じゃ済まないぞ」
次の瞬間、黒い煙があたり一面を覆った。
煙が生き物のように渦を巻き、視界を奪う。
煙が消えた頃には、アレスも黒星教団の兵士も姿を消していた。
夜の広場には、キーリたちだけが残った。
風が吹き抜け、割れた窓の破片がカラカラと転がった。
ミナが大きく息を吐く。
その肩はまだ震えていた。
「終わった……?」
カイトが肩を回す。
戦いの余韻で腕が痺れているようだった。
「とりあえずは、そうみたいだな」
ルミナがキーリを見る。
その目には心配と、少しの誇りがあった。
「キーリ、大丈夫?」
キーリはうなずいた。
胸の痛みと、星の力の余韻がまだ残っていた。
「うん。なんとか」
その時、レオンが剣をしまった。それを見て、キーリが近づく。
「レオンさん……助けてくれてありがとうございます」
レオンは少しだけ笑う。
その笑みは、どこか寂しさを含んでいた。
「礼はいらない。俺は、やりたいことをやったまでだ」
ミナが聞く。
「なんで助けたの?」
レオンは空を見た。空では、星が光り輝いていた。
その光を見つめる横顔は、どこか過去を思い出しているようだった。
「昔──星の器に助けられたことがある」
キーリが驚く。
胸が跳ねる。
「え? 私以外の……星の器」
レオンは続ける。
「だから、今回は俺の番だ」
カイトが笑う。
「おっさんいい人なんだね」
ミナが言う。
「で、これからどうするの?」
レオンはキーリを見た。
その目は真剣で、どこか覚悟を決めた者の光があった。
そして、少し考えてから言った。
「旅をする予定なんだ。どうせ、どこかにとどまることなんてできやしないから。星の器──いや、キーリと言ったか。俺を仲間に入れてくれ。少しは役に立つ」
キーリはうなずく。
胸の奥に、心強さが広がった。
「もちろん」
ミナがニヤッとする。
「仲間がまた増えた」
カイトも笑う。
「強い人は大歓迎だ」
ルミナは静かに言った。
「ありがと」
レオンは肩をすくめる。
「気にするな」
こうして、キーリの旅に新しい仲間が加わった。
♢♢♢
現在の仲間。
キーリ。(星の器)
ルミナ。(星の運び手)
カイト。(盗賊)
ミナ。(盗賊)
レオン。(剣士)
♢♢♢
だがその頃。
遠く離れた場所。黒く大きな神殿。
黒星教団の本拠地で、アレスがひざまずいていた。
巨大な柱が立ち並び、天井は闇に溶けて見えない。
冷たい空気が流れ、松明の火が揺れて影が歪む。
その前には、椅子に座る人物。
顔は影で隠れている。
静かな空間に低い声が響く。
「どうだった」
アレスが答える。
その声には、敗北ではなく確信があった。
「確認しました」
顔を上げて、そして言った。
「──星の器は本物です」
影の人物がゆっくり言う。
「そうか。ならば、計画を進めよう」
夜空の星が、不気味に輝いた。
おもしろかったら評価、ブックマークよろしくお願いします




