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サカサの塔と謎解く獣  作者: 玄武聡一郎/山白一人
6/6

冒頭としてのエピローグ

「よし、こんなもんかな」


 パンパンになったリュックを背負って、僕は家を出た。

 裏庭に足を向ける。簡素な板が二本刺さったところで足を止め、手を合わせる。


「エリ、レイナさん。二人をここに置いていくことになっちゃって……ごめんなさい」


 二人が死んでから二年の月日が流れた。

 村の人から疎まれながら、守ってくれる人がいない中で、それでもあの日の決意を果たすために、僕は今日までみっともなく、かっこ悪く生き続けてきた。


「僕は今日、ここから旅立ちます。……ソラト病を無くす方法を探そうと思うんだ」


 それが僕の決意だった。

 レイナさんの遺志を継ぎ、エリの願いをかなえるためには、それしかないと思った。


「まずは王都に行こうと思ってる。歩いたら結構な距離があるけど……安心して、二年間、ちゃんと鍛えたから」


 ソラト病を無くす方法を探すなら、こんな小さな村に引きこもっている場合ではない。

 王都の資料館や、各地に散らばる研究所を訪ねる必要があるだろう。

 遺跡にだって足を運ぶ必要があるかもしれない。

 そうなれば何より必要なのは、体力と武術だから、僕は二年間鍛え続けた。


「レイナさんの五尺棒、借りますね。レイナさんほどはうまく使えないけど……でも、一番しっくりくるから」


 君に使いこなせるのか? と不敵に笑うレイナさんの顔が一瞬脳裏に浮かんだ。

 まだまだあなたの足元にも及びませんけど、これからゆっくり追いつきますよと、心の中で返した。


「それじゃあ……そろそろ行きますね」


 この家は村から少し外れた場所にある。

 あの一件以来、村の人からは忌み嫌われていて、良くも悪くも有名になってしまった。

 これまでは僕が住んでいたから、みんな薄気味わるがって近づかなかったけれど……今日からはどうなるか分からない。


 心無い者が二人の墓を荒らすかもしれない。

 この家は取り壊されてしまうかもしれない。

 放っておかれて、自然に飲みこまれて、跡形もなくなるかもしれない。


 それでも。

 そうなると分かっていたとしても、僕は今日ここを後にする。

 ソラト病を無くす方法を探すために、終わりの見えない旅に出る。


「行ってきます」


 僕のつぶやきは、ひときわ強く吹いた風に飲まれて、どこか遠くへと運ばれた。

 行ってらっしゃいと、背中を押された気がした。


本作はいったんここで完結となります。続編は現在構想中です。

お読みくださり本当にありがとうございました!


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