第7章 10
じ—
「ヒルダ嬢。」殿下は生徒会長の方へ歩み寄り、書類を彼女の上に置いた。
…ヒルダ嬢。
「まあ、殿下、早いですね。」
生徒会長は殿下から書類を受け取り、ざっと目を通すと、驚いたように言った。
「さすが殿下。この方法は確かに効率的です。」
「ヒルダ嬢の当初の案にも多くの利点がありました。この方法で進めれば…」
しばらく話し合った後、聖母先輩が近づいてきて、生徒会長に書類を手渡した。生徒会長は、重要な書類のようだったので、殿下に目を通してもらうよう指示した。
じ—
「殿下~どうぞ~」
聖母先輩は、聖なる光のように輝く笑顔で、殿下に書類を手渡した。
殿下はためらうことなく書類を受け取り、素早く目を通した。
「問題ありません、デビー嬢。」殿下は書類を聖母先輩に返した。
「はい~」
…デビー嬢。
その後、殿下は生徒会役員たちと談笑し、話し合った。次期会長となる殿下は、あらゆる事柄を把握する必要があり、多忙を極めていた。いつものリラックスした表情で皆と談笑する殿下の姿からは、その様子は想像し難かった。
「…嬢、これはおかしいです。」
じ—
「はい…嬢、確かに改善すべき点があります。」
じ—
「会長も既に修正が必要だとおっしゃっていました…嬢。」
生徒会の仕事をしながら、私は殿下のあらゆる動きをこっそりと観察していた。
確かに、リリス以外の女性には皆「嬢」と呼びかけていた。
……
……また胸が痛んだ。
……うう。
……これが、恋人に浮気された時の気持ちなのだろうか?
……それとも、これが失恋の痛みなのだろうか?
……うう。
でも、私たちは互いに好きだと言ったことは一度もない。恋人同士と言えるのだろうか?
これって、彼の浮気は成立しますか?
前にたくさん泣いたせいか、今は少し冷静になって、状況をある程度分析できるようになった。だから、殿下を観察し始めた。
いや、待って。彼が私を好きかどうかは関係なく、私たちは婚約している。色々な利害関係がある。せめて私に知らせるべきだった!
なんてひどい!あの、腹黒い王子様!
言いようのない憤りを感じ、ペンを強く握りしめながら情報を書き写すと、ペンと紙が擦れる音がますます大きくなった。シーッ……
……真剣に考え始めたのに、ますます混乱が増し、頭痛がどんどんひどくなる。思わず頭を抱えてしまう。
……うっ、痛い!鎮痛剤が欲しい!
「レティシア、どうした?いろいろと動き回って、今度は頭を抱えて。具合が悪いか?」
顔を上げると、大きな子供の代表であるアルジャーが、困惑した表情で私を見つめていた。
ところで、こいつはリリスに好意を抱いているみたいだ。
もし本当なら、将来、二人は喧嘩することになるんじゃないか?
ゲームには戦闘シーンがあるけれど、それはアルジャーのルートに限られている。
もし両方のルートが選択可能だったらどうなるんだろう?そんな展開はゲームにはない…
それに、もしリリスが本当にアルジャーを口説こうとしたら、アイリーンは間違いなく止めようとするだろう。
アイリーンにも気をつけないと。
「アルジャーが私のことをあれこれ言う筋合いはない…私は大丈夫。」
大きな子供の代表の初恋を見ていると、私の失恋の可能性に比べれば、アルジャーは本当にまだ子供だ。
「な、なんだ?学校に入ってから、どうして俺に分からないことを言うようになったんだ?」アルジャーは頭を掻きながら言った。
「まあ、君はまだ子供だから、理解できないのも当然だよ。」
「え?」アルジャーは困惑した表情で私を見つめ続けた。
…もしかしたら、大人への一歩を踏み出しているのかもしれない。
……いや…まだ分からない、落ち着いて!
私が仕事を続けながらアルジャーと話していると、ドアの外から声が聞こえた。
「兄さん!やめてくれ!」
カテランが弟を引っ張って中に入ってくるのを見て、カテランの弟抵抗は明らかで、生徒会の全員が二人を見た。
「あの二人に騙されるな、目を覚ませ!」カテランは叫んだ。
リリスとジーンは、少し気まずそうにゆっくりとドアのそばに立っていた。
カテランの弟は少し間を置いてから、すぐに答えた。「騙されてなんかいない、これは俺の意見だ、生徒会には入りたくない!行きたい奴らは行かせろよ、兄さん!」
「オリ!何を馬鹿なことを言ってるんだ!あの二人に騙されたんだろう!」
「経験がなくても、他の方法でお手伝いできますよ、兄さん!」
二人は生徒会室で大声で言い争いを始めた。そして――
「あなたたち、ここは他の場所だと思ってるの?やめなさい!」生徒会長のヒルダが叫んだ。
「……」
「……」
ようやく二人は言い争いをやめ、まるで裁きを受けるかのように、生徒会メンバーに囲まれ、会長の裁きを待たされた。
「……」殿下は微笑みながらその様子を見ていた。その心境は読み取れない。会長という立場を考慮し、会長に任せたのだろう。
…それとも彼はまだリリスを見つめているのだろうか?彼女の加入を予期しているのだろうか?
また胸が締め付けられた。
ヒルダ会長は額をこすりながら言った。「……一体何があった?きちんと説明しなさい。」
彼らの説明は概ねこうだった。カテランは、リリスとジーンが弟に何かをしたせいで、普段は従順な弟が突然反抗的になったのではないかと疑っていた。しかしオリは、二人が自分に新たな視点を与えてくれ、それが大いに役立ったと反論し、そもそも自分は加わるつもりはなかったので、この機会を利用して二人に役職を譲っただけだと主張した。
ヒルダ会長は突然ため息をつき、「……わかったわ」と言った。
彼らの説明を聞いた会長は深く考え込み、部屋はしばらく静まり返った。
「……」皆が会長の決定を待った。
「いかなる過程を経ようとも、生徒会は熱意のない者を歓迎しない。」
「会長!」カテランが叫んだ。
「熱意のない者よりも……生徒会は心から参加したい者を歓迎します。」
ヒルダ会長の目は一瞬鋭くなり、その視線には何か隠された意味が込められていた。
「会長!」カテランは叫び続けた。
「異論は認めない!決まった!」
審判の言葉を聞いて、まるで魂を失ったかのように地面にひざまずく兄カタランを見て、弟は少し気まずさを感じたのか、そっと兄のそばに歩み寄り慰めた。
重苦しい雰囲気とは対照的に、生徒会長のヒルダは笑顔でリリスの方へ歩み寄り、こう言った。
「生徒会へようこそ。」




