第7章 02
「すみません、あの…」
私が言い終わる前に、目の前の少年は走り去ってしまった。
…
彼の後ろ姿を見つめながら、私は呆然としていた。
一体何が起こったの?
クラスメイトの女の子に聞いてみようか?
私は見知らぬクラスメイトの女の子に声をかけ、こう尋ねた。
「すみません…」
「すみません!エヴァンさん!」
目の前の女子クラスメイトも、あっという間に走り去り、手の届かないところへ行ってしまった。
…まさかこんなことになるとは思わなかった。
殿下のおかげで目立っているだけだと思っていたのに、まさか自分一人でこんな目に遭うとは。
…自分を過小評価していたのだろうか?
最初は1年生の教室の廊下の影に隠れて様子を伺っていたが、しばらくその場に留まってみてもジーンもリリスも見当たらなかったので、他の生徒に居場所を尋ねてみたものの、手がかりすら得られなかった。
ほとんど生徒がいなくなってしまったのを見て、恥ずかしくなった。
…他の場所を探すべきだろうか?ついさっき生徒会室にいたばかりだし、もしかしたら二人はもう会うてしまったのかもしれない。
生徒会室を出ると、他の生徒はまだ全員残っていたので、まずはジーンとリリスを探してみようと思ったが、それもうまくいかなかった。
今他の攻略対象はもうほとんど作業を終えていたので、プレイヤーがよく行くような場所をうろうろしてみることにした。
とにかく、次の場所へ向かうことにした。
その後、生徒会室のある建物の西側の外をうろうろしてみたが、攻略対象の姿はほとんどなかった。それから中央の中庭を見に行った。
夕日に照らされた噴水の水面は、まるで金色に染められたかのように黄金色に輝き、噴水を飾る女性像もまた金色に輝いて、空間全体を変貌させ、独特の雰囲気を醸し出していた。
…もう少し奥へ進んでみましょうか?
私は様々な花々が咲き誇るエリアへと足を踏み入れた。色とりどりの花々に加え、目を引く花壇の配置や、学生のための東屋のような休憩スペースもあった。
「あぁ、このお茶、本当に美味しいわ…」
「ふふ、もちろん、これは…」
周囲を見渡すと、明らかに上級生と思われる数人の女性が談笑しながらお茶を飲んでおり、時折メイドが出入りしていた。そこにいるのはほとんど女性ばかりで、男子学生の姿はほとんど見かけなかった。
ふと、来週の新入生歓迎会がここで開かれることを思い出した。今後も何らかのイベントが開催されるようだ。学外者の外から訪れる人も必ずこの場所を目にするだろうから、植物の手入れには気を配る必要がある。
うーん、デュークを見つけるのは本当に難しい。
リリスが彼を見つけるとなると、さらに困難だろう。
ゲームでは、オプションをクリックするだけで彼に会えるのに、現実ではこんなに難しいなんて。
歩き回りながら辺りを見回したが、見覚えのある顔は一つも見当たらない。
午前中の実習薬の授業から考えると、デュークは今頃部室のあたりにいるはずだ。
…別の場所を探した方がいいだろうか?
考えながら中庭を出て、部活動が行われている建物の方へ向かった。すると突然、木の陰から声が聞こえた。
「エヴァンさん!」
驚いて振り返ると、私より背の高い人物が木の幹の陰に隠れていた。服装からして、おそらく男性だろう。顔は見えなかったが、手を伸ばして私を手招きしていた。
うーん…怪しい!
彼は何度も私に近づくように手招きしていたが、近づく気配はなかった。ますます怪しくなってきた。
これは怪しすぎる!
彼がしつこく手を振るのを見て、背筋に寒気が走った。
この状況があまりにも奇妙で、無視して一刻も早くその場を離れたかった。
怪しいだけでなく、生死に関わる問題かもしれない。
ポケットの中のブレスレットに触れた。学校に入ってからずっとポケットに入れていた。
急がなきゃ!
急いでその場を離れようとしたその時――
「待ってください!エヴァンさん!」
男が私の前に飛び出してきて、危うくぶつかりそうになった。
「エヴァンさん、ちょっとお待ちください!」
えっ!?
まだ混乱したまま顔を上げると、見覚えのある顔があった。
「コリン先輩!」驚いて叫んだ。
明らかにハンス・コリン副会長だった。
「エヴァンさん、驚かせてしまってすみません。」先輩は少しふらついていた。
「コリン先輩、一体どうしたんですか?」よく見ると、コリン先輩の服装は生徒会での服装とは違っていた。制服の上に、まるで魔法使いのローブのような、独特な模様のローブを羽織っていたのだ。
うちの学校では、こんなローブは支給されないはず…?
私はコリン先輩を見つめ、ひどく戸惑った。
コリン先輩は眼鏡をかけ直し、「えーと…あの、エヴァンさん、どの部活に入るかもう決めたんですか?」と言った。
え?部活?
「いえ…いえ…」
私は部活に入るつもりはなかった。
私が話し終える前に、先輩は私がまだ入部していないと思い込んで、こう言った。
「やっぱり!エヴァンさん、絶対にうちの部活に来てください!」
えっ!先輩が私を部活に紹介しようとしているの?
でも、入部するつもりはないんです!
私は慌てて「あの…あの、先輩…」と付け加えた。
「さあ、行きましょう、エヴァンさん!」
そう言うと、先輩は先導して歩き出した。私は一瞬呆然としたが、先輩だし兄の知り合いでもあるので、ついていくことにした。
…ただの見学だし、無理やり入部させられるわけじゃないよね?
先輩の独特なローブに目を奪われ、私は急いで後を追った。
先輩に案内されて部室に入ると、部員たちは皆同じローブを着て、中くらいの大きさの像を崇拝していた。像の服装から判断すると、以前出会った魔女に似ているが、髪型は違っていた。やはり何らかの魔女だろう。
彼らは何やら儀式を行っていた。魔女の像の前で、それぞれが祈りの姿勢を取り、中にはひざまずいて崇拝する者もいた。
…これは一体何だ?!
私はこのような光景に、ただただ呆然と立ち尽くした。私の学校にも、こんな部活があったなんて!
「どう思う、エヴァンさん?」
先輩は誇らしげな表情で私の方を向いたが、私はあまりの光景に言葉を失い、戸惑いながら答えた。
「うーん…うーん。」
「君の兄さんの魔女同好会は、たくさんの生徒を救ってきたんだ。分かっているだろう?そんな大切な部活を私に託したんだ。この光景を見ろ。きっと君の兄さんの期待にも応えられるはずですよね!」先輩は両手を固く握りしめ、熱弁を振るった。
私の先輩に対するイメージは、一瞬にして崩れ去った。
「でも、魔女たちと連絡を取るには、君の兄さんのコネクションが欠かせないんだ。今学期の魔女集会の成功は、まさにこれにかかっている!エヴァンさん、どうか手を貸してくれ!」
一瞬呆然とした後、彼の言葉を思い出した。
兄さんがこの場所の創設者なの!?
それに魔女同好会!?それって何!?
「えっと…えっと…?」
先輩の言葉は、さらに私の理解を妨げ、私はその場に立ち尽くし、後ずさりしたような感覚に襲われた。
「それは素晴らしい!エヴァンさん、ぜひ兄さんにも伝えてください。」
「えっと…えっと…」
あまりの驚きに言葉が出ず、思わず何気なく返事をしてしまった。
「エヴァンさん、魔女同好会に入ってください!未来の栄光はあなたにかかっています!」
…それって何!?
先輩のますます熱を帯びた視線を見て、もし誰かが見ていたら、私たち二人の間に何かあると勘違いしたかもしれない。いずれにせよ、私は彼と兄の関係を垣間見ることができた。
今、彼の燃えるような視線には、奇妙な期待が混じっているのが見て取れ、私は今すぐにでも逃げ出したくなった。
つまり、兄がそう思っているのだから、私も同じ気持ちになるべきだと彼は考えているのだろう。そして、私を将来の社長にしようと企んでいるようだ。
しかし、たとえ彼がそう思っていたとしても、私の答えはただ一つ――
「お断りします!」




