↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/89

第6章 02

 馬の蹄の音が次第に遠ざかり、アンナの合図で私は馬車から降りた。

 待ちに待った王宮――

 数年前に男女共学の課程を修了していたため、宮殿に来るのは必要な時だけで、同級生たちと会う機会は激減していた。最近は、殿下以外で会うのはアイリーンだけだった。

「エヴァン様、ご案内させていただきます」と侍女が挨拶をしながら言った。

 アンナと私は馬車で宮殿に到着した。馬車を降りると、皇后様の侍女に案内されて皇后様の居室へと向かった。途中、突然、黒い人影が現れた。

「レティシア嬢、お母様のところへ行きましょう」と殿下は優しく温かい笑顔で手を差し伸べた。

 うっ…眩しすぎる。

 今でも定期的に会ってはいるものの、ここ数年の殿下の変化には、いまだに馴染めずにいます。

 ここ数年で急激に成長した殿下を見上げるのに、私は必死に首を伸ばしました。以前は、見上げる必要すらほとんどなかったのに、今では首を伸ばしなければ顔が見えないほどです。殿下は、ゲームのキャラクターにますます似てきていました。完璧な笑顔、謎めいたオーラは、殿下をより一層捉えどころのない存在にし、高貴な王子の風格と、近くにいる時だけ感じられる不思議な魅力が融合していました。最近は、殿下を見るたびに、心臓がドキドキし、胸が高鳴ります。

 本当に…困っています。

 若い頃は、色々な面で理性的に自分をコントロールできたのに、今はただ、この全てから逃げ出したくてたまりません。

 以前は、ゲームをしている時は、殿下は画面の向こう側にいるだけで、こんなことには全く注意を払っていませんでした。

 私…私、落ち着かなくちゃ!どうしてこんなに怯えているの!

 慌てて自分に言い聞かせ、平静を保つために無理やり笑顔を作り、勇気を出すために右足を上げてバランスを取った。

 ようやく高鳴る心臓が落ち着くと、彼はゆっくりと私の手を自分の手に重ねた。

「わ…わかった。」

 私が手を重ねると、殿下は優しく笑い、私を皇后様の元へと案内してくれた。

 彼は全く動揺していないのに、私だけがパニック状態だった。なんて不公平なんだろう。

「殿下はなぜ急に皇后様のお茶会に出席することになられたのですか?」

「たまたま少し時間ができたんです。」

 …本当に?

 殿下のお姿をちらりと見たが、何を考えているのか全く見当がつかなかった。

 殿下はやはり王族。その学識は私の想像をはるかに超えている。そんな多忙な時期に、時間を割くことができるとは、実に不思議だった。

「レティシア嬢、入学準備は順調ですか?」歩きながら、殿下が突然尋ねた。

 私は何気なく「順調です」と答えた。

「そうですか?」

 その後、私たちはそれ以上会話を交わすことはなかった。

 私たちの関係は変わらなかった。殿下は婚約者としての務めを全うし、私の以前の決断以来……以前よりも殿下の優しさを受け入れるようになったものの、特に変化はなかった。おそらく「相互尊重」という言葉が、私たちの関係を最もよく表しているのだろう。

 ちなみに、皇太子殿下は数年前、北王国との交渉に派遣された。その結果、北王国の神殿は派閥争いに巻き込まれ、敗れた側は独立した組織を結成しました。理由は不明ですが、彼らは我が国で数々の活動を秘密裏に行っていました。彼らの活動を阻止するため、我が国は皇太子殿下の仲介により、北王国神殿から分派したこのカルト教団を取り締まる合同捜査機関を設立しました。

 私が襲撃された理由、孤児院事件、そして行方不明のクイン伯爵の件など、不明な点が多々あります。しかし、犯人は依然として多くの謎を抱え、捜査機関による捜査を待つばかりの、あの組織のメンバーである可能性が高いと思われます。

 そのため、皇太子殿下はここ数年、これらの問題への対応に追われ、東王国の王女との結婚を数年延期していました。しかし、最近になって再びこの話題が持ち上がり、結婚が間もなく行われる可能性が出てきました。

 夏至祭での出来事を思い出すと、思わず笑みがこぼれた。きっと近いうちにまた会えるだろう。

 東の王女からいただいたブレスレットは、今もそのままの状態で私の部屋にある。王女に手紙を書いたら、まだ効果があるはずだと返事が来たので、必ず学校に持っていくことにする。

 やがて、皇后様がお茶会を開かれている宮殿の中庭に到着した。周囲の茂みに咲き誇る花々から察するに、それらは皇后様が育てられたものだろう。

「ふふ、私のカイル来てくれたのね、なんて嬉しいことでしょう。」皇后様はいつものように微笑み、その態度は変わらなかった。

「レディシアも、ふふ。」

「お招きいただきありがとうございます。」

「も」って…

 私は微笑みを浮かべながら、心の中で苦笑いを浮かべた。

 皇后様は相変わらずだ。

 今日は皇后様のとりとめのない話に耳を傾ける必要はないようだ。ただ食事と飲み物を楽しめばいい。

 ふむ、待ちに待った王室のデザート――じっくり味わおう!

 テーブルに並べられた数々のデザートを、私は物思いにふけりながら眺めた。

 突然、殿下が「レディシア嬢」とお呼びになった。

 振り返ると、殿下は丁寧に椅子を引いてくださり、ご自身も腰を下ろした。一瞬、殿下の顔に苦笑いが浮かんだ。その後、皇后様は何も動かなかった。何も問題がないのが一番だろうと思い、それ以上考えるのをやめた。この間、皇后様とのティーパーティーは、彼女の話題にはならなかった。せいぜい、他の主婦と同じように、国王陛下の不満を口にする程度だった。

 皇后様という肩書きを持ちながらも…彼女は母親でもあった。

「カイルももうすぐ学校に行くのね。月日が経つのは早いわ。カイルに会えなくなるのが寂しいわ」皇后様はハンカチでそっと目を拭った。

 本当に泣いているのだろうか?

 なぜか疑念が湧き上がり、目の前のケーキに目をやり、食べ始めた。

 殿下は微笑んで、「どうぞご安心ください。休暇中には必ずまたお会いしに来ます」と答えられた。

「さすがカイル、親孝行ですね。」

 母と息子の心温まる(?)やり取りを眺めながら、ふんわりとしたシフォンケーキをゆっくりと味わった。子供の頃とは違い、今の私は想像もしていなかったほどの忍耐力を持っている。

 ふむ、このケーキにはバラが入っているようだ。全体的に風味が豊かで、口の中にバラの香りが広がる。

 バラのシフォンケーキを食べ終え、次のケーキに移ろうとした。

 次は…マカロンにしよう!

 まさに食べようと手を伸ばしたその時、殿下が突然「レティシア嬢もご一緒に」とおっしゃった。

 えっ?

 突然手を止められたため、マカロンの前で固まってしまった。

 皇后様とカイル王子が私の方を見て、私は呆然とした。

 ……

 殿下の笑顔をよく見てみた。普通の笑顔だったが、まるで「食べるのをやめろ」と叱責しているような、どこか罰を与えるような雰囲気が漂っていた。

 腹黒いの王子様め!

 思わず心の中でそう思った。

 私は慌てて「はい…はい、必ず行きます」と答えた。

 そう言うとすぐに手を引っ込めた。

「ふふ、もちろんよ」と皇后様は微笑みながら言った。

「…」殿下は何も言わずに微笑んだ。

 その後、二人は楽しそうに会話を続け、私は放っておかれ、デザートを思う存分堪能していた…時折、邪魔される以外は。

 デザートを食べるのをやめるつもりはないわ!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。