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間章 08

 あの気まずい状況の後、私たちはアンナと伯爵に二人きりの時間を与えた。アンナの言葉にならないプレッシャーは感じ取れたが、計画は続行しなければならなかった…。ごめんね、アンナ。

 えっ!それは…

 商店街で先生に別れを告げ、私たちは向きを変えて反対側へ歩いて行った。ふと、ある店の片隅に見覚えのある人影を見つけた。

「あう、もう着いた。」

「レティシアさん!」

「…」

 アルジャー、アイリーン、そしてデュークは、屋外の片隅でゆったりとお茶を飲んでいた。皆、今まで見たことのない一般的な服装だったが、それでも良家の出身であることは明らかだった。

 ここで何をしているの!

 驚いた私は、思わず口を開いた。

「ここで何をしているの…」

「もちろん、こんな面白いものを見に来ないわけにはいかないだろう」とアルジャーは微笑みながら言った。

 あなたは議論の間、明らかに不思議なほど興味を示していましたね…。

「兄のせいでここに来たんです…」アイリーンはうつむいた。

 アイリーンの恥ずかしそうな表情から察するに…彼女もかなり興味を持っているようだ。

 アイリーンと尾行の件について話していた時、彼女は確かにとても興味を示していた…。

 一方、傍らに立っていたデュークは、まるで何事もなかったかのように、静かに紅茶をすすっていた。

「…」

 デューク…どうしてあなたも興味を持っているのですか?

「皆、とても興味を持っている」と殿下は微笑みながら言った。

 …

 彼らのリラックスした表情を見て、私は次に何を言えばいいのか分からなかった。

 なぜ?!

 殿下は突然振り返り、「レティシア嬢、少しお休みください」と言った。

 そして、気づけば私は殿下について、お茶をいただくテーブルへと向かっていた。

 私たちが座っていた屋外の席には傘のような天蓋があり、テーブルと椅子は白い模様のタイルでできていて、上品な雰囲気を醸し出していた。店が幹線道路沿いにあったからか、内装はそれほど粗末ではなかっただろう。

 そこに座って、私は疑問でいっぱいだったが、口には出さなかった。

 後から尾行するのだろうか?殿下が護衛の一人に追跡を続けるよう命じたばかりだったことを考えると、私たちも後を追うべきだろうか?

「レティシアさん、ここのお茶は美味しいですよ!」アイリーンは愛らしい笑顔で、ティーカップを手にしながら言った。

「それは素晴らしいですね」と私は微笑んで答えた。

 私は殿下とアイリーンの間に座り、デュークとアルジャーの向かい側にいた。

 しばらく歩いた後は、休憩するのが良いでしょう。

 テーブルに置かれたばかりの紅茶を手に取り、二人の歩調に合わせてゆっくりと一口飲んだ。食後には小さなデザートが運ばれてきた。

 ふむ…この紅茶はなかなか美味しい。意外にも上質な茶葉を使っているようだ…。

 予期せぬ出来事が次々と起こり、思考を一時的に中断して紅茶をゆっくりと味わいたいと思っていたのだが、自分が喉が渇いていたことに気づかなかった。

 …ああ…人生は予測不可能なことばかりだ。

 伯爵との会話を思い出すと、不安な気持ちがよぎった。

 アンナ…彼女は大丈夫だろうか?

 そう考えると、急にアンナのことが心配になった。

 不安を鎮めるため、目の前のクレームブリュレを口にした。その美味しさに、少し気分が晴れた。 …懐かしい味がする。

「このお店は長い歴史があるらしいわ。私の祖母も若い頃、ここで修行していたのよ。」

「えっ?そんなに時間が経っていたなんて知らなかったわ」

 振り返ってみると、全然古びてはいなかった。ずっと改装中だったのかもしれない。

 そして、アイリーンのおばあちゃんがここで働いていたという事実は、さらに驚きだった。

「ここでたくさんのデザートの作り方を覚えたみたいだし、おじいちゃんと出会ったのもここなの。ロマンチックでしょ?」アイリーンは照れくさそうに微笑んだ。

「なんて驚きだ…」ここのデザートが懐かしい味がするのも無理はない。

 乗馬の練習をしていた頃、みんなが親切にしてくれたことを思い出すと、懐かしい気持ちがこみ上げてきた。

 お茶を飲みながら何気ない会話を交わしていると、突然デュークが「殿下」と呼びかけた。

 突然の呼び声に、皆の視線が彼に集まった。殿下は頷き、背後の召使いから書類を受け取り、デュークかこう仰せになった。

「……クイン伯爵の三男のうち次男、ルパート・クインは、現在当学院で魔法関連科目を教えております。幼い頃から並外れた才能を発揮してこられましたが、控えめな性格のため、特に目立つ存在ではありません。学生時代に一度、誰かと揉め事がありましたが、担任教師が仲裁に入り、その後は問題を起こしませんでした。卒業後は、優秀な成績と家柄のおかげで、当学院の教職にスムーズに就くことができました。教職に就いてからは、時折遅刻や早退はありましたが、特筆すべき問題はありませんでした。」

 ……

 えっ?

 君たち、調査したの?!

 私は驚きのあまり、二人をじっと見つめた。一方、アイリーンとアルジャーは、まるで動揺した様子もなく、お茶をすすり続けていた。先ほどの視線のやり取りから察するに、二人は既に知っていたようだ。

 どうして私に教えてくれなかったの?!

 殿下は優雅にお茶を一口すすり、「口論の詳細は?」と尋ねた。

「宗教に関することです。相手が冒涜的な発言をしたことがきっかけで、口論になりました。」

「遅刻や早退の理由は?」

「体調不良、家庭の事情、そして宗教活動への参加です。」

「頻度は?」

「許容範囲内です。」

 うわぁ…すごい、そして意外にも真剣だ。

 私は二人のやり取りをじっと見つめ続けた。ゲームの中では二人がこんなにやり取りしているのを見たことがなかったので、とても新鮮だった。おそらく、女性主人公が生徒会の一員ではなかったため、彼らが協力し合う様子を目撃できなかったからだろう。

「…敬虔な信者ですか?」

「…はい、報告書によると、クイン伯爵は毎週欠かさず教会に通われています。」

 殿下は突然私の方を向き、「レティシア嬢、何かお尋ねになりたいことはありますか?」と尋ねられました。

 デュークも私の方を見ました。

 えっ!

 あまりの驚きに、私は何も考えずにぼうぜんと彼らを見つめていたので、少し間を置きました。

 慌てて平静を装い、軽く微笑みながら、「まさかここまで徹底的に調べていらっしゃるとは思いませんでした。ええ…殿下のおっしゃる通り、クイン伯爵は敬虔な信者のようですし、報告書を見る限り、特に問題はなさそうです…」と言いました。

「…」

 片側で微笑む殿下と、もう片側で黙ってじっと私を見つめるデュークの姿に、私は冷や汗をかきました。

 待ってください!お二人とも、急すぎます!

 少し時間をください!あなたちって本当に怖い!

 私は笑顔を盾にして身を守りながら、優雅に紅茶をすすり続け、心の中で他に質問がないか考えようとしていた。

 抜き打ち試験のように、背筋が凍るような思いがした。

 デュークの言葉と殿下の質問を思い出した。

 クイン伯爵が敬虔な信者であるという点は正しかった。そして、彼の奇妙な頑固さを除けば、性格は問題なさそうだった……他に何か足りないものがあるのだろうか?

 一連の出来事を頭の中で反芻した。私は最初から全ての出来事を考える。まず、アンナの体調が悪そうだったので、彼女の様子を調べたことから始まった。それから、メイドのマナへの聞き取り調査や教師からの情報で、アンナが結婚に反対していることを知り、クイン伯爵について調べ始めた。その後、教師から伯爵が校長と関係を持っていることを思いがけず知らされ、婚約に断固反対するに至った。そこで、伯爵がアンナにどう接しているかを見極めるため、他の者たちと共にこの尾行作戦を計画したのだ。実際の尾行作戦はまだ始まってもいないが……

 ……先ほどの面談で、アンナに対する彼の気持ちを大まかに理解できたような気がした。

 しかし、残るは先生が持ってきた情報、つまり犯人の校長との繋がりだけですよね?

 だからこそ、向かいの部屋での結婚式に不安を感じ、何としても阻止したいと思ったのです…。先ほどの伯爵の激しい言葉に、そのことを尋ねるのを忘れてしまいました。

 先生が話していた伯爵と校長に関する噂を思い出しました。報告書にもその噂は載っていたのでしょうか?

 ようやく質問が浮かび、私は慌てて尋ねました。「伯爵は在学中、どんな友人関係や噂がありましたか?」

 デュークは報告書にざっと目を通し、「…同年代で特に親しい友人はいない。ただ、当時その揉め事を扱った担任のバルカー先生が、後にクイン伯爵と親しくなった。生徒たちはよく二人が話し合っているのを目撃していて、放課後に一緒に出かけることもあった」と言った。

 つまり、二人の友情はその揉め事がきっかけだったということだ。関係の深さはともかく、確かに繋がりはあったようだ。

 うーん…でも、それ以上の証拠はないようだ…あるいは、ただの友達だったのかもしれない。

「もうすぐ時間だよ、アル」

 するとアルジャーは自信満々に立ち上がり、私に言った。「ああ、今度は僕の番だ。ストーカー体験にお連れしよう、レティシア」

 …ストーカー体験?

 間違っていませんか?!私は本気だよ!


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