間章 04
私はアンナの婚約状況について、主に「アンナは今、婚約したくない状況にある可能性が高い」と手短に説明しました。校長に関する疑惑については、確たる証拠がなかったので触れませんでした。ゲームの内容に基づいた憶測に過ぎなかったからです。ですから、「ご主人様として心配している」としか言えませんでした。
ゲームの中で校長は主人公リリスの母親に恋をしていたものの、後にリリスに異常な執着を抱くようになったことを覚えています。彼女が最終的にリリスを愛していたのか、それとも単に過去の過ちを償おうとしていただけなのかは不明です。クイン伯爵と校長の関係については、まだ分かりません。もしそうなら、五つ巴の三角関係になりますね。
なんて複雑な雰囲気でしょう!でも、とてもワクワクします!
こうして考えてみると、事態の複雑さに改めて気づかされます。ゲームをプレイしていた時は、そこまで深く考えず、ただ校長が怖いと思っていただけでした。
うーん――もし私が傍観者だったら、きっとこの展開を楽しみながら、色々な組み合わせをあれこれ想像していたでしょう。でも、アンナが深く関わっていて、もしかしたら私が口出しするかもしれないとなると、ちょっと複雑な気持ちです。
説明の後、皆は意外にもしばし考え込んだ。最初に笑顔で尋ねたのは、殿下だった。
「レティシア嬢、これからどうお考えですか?」
「……できれば、婚約を延期、もしくは解消したいと思っています。」
何しろ、クイン伯爵の真意は未だに分からず、考えるほど疑念が深まるばかりだった。しかし、それはあくまで憶測に過ぎず、それがまた不可解だった。
私の言葉を聞くと、デュークはすぐにこう言った。
「…やはり本人に聞くのが一番確実でしょう。」
殿下も付け加えた。「レティシア嬢がなぜそんなに心配されているのかは分かりませんが、やはり本人の意向を改めて確認するのが一番です。」
デュークは私をじっと見つめ、殿下の笑みは話しながらますます不気味さを増していき、私は再び冷や汗をかいた。
…どうやら二人とも、私が何かを隠していることに気づいたようだ。
うっ!この二人はこういうことに本当に敏感だ。表には出さないけれど、鋭い視線で私の隠しているものを探ろうとしているのが感じられた。しかし、うまく説明できない。何しろ、前世に関わることだし、正直なところ、確たる証拠など何もないのだから。
内心は不安だったが、必死に真面目な顔を保とうとした。
「は…はい!本人の考えが一番大切です。」
「…」
「…」
ハハハ…
心の中でくすりと笑った。
二人は黙って私を見つめ、いかにも疑わしげな表情を浮かべていた。背後からは、まるで黒煙のような、ぞっとするようなオーラが漂っていた。私は微笑んだが、心臓がドキッとした。
いとこ同士とは思えないほど、恐ろしい二人だ!
私は隣にいる双子にちらりと視線を向けた。
「でも…でも、アンナは今休暇中なんです。なかなか会えなくて。どうしたらいいか分からないんです。」
「ああ、戻ってきてくれって言えばいいじゃないか」とアルジャーはぶっきらぼうに言った。
アイリーンが付け加えた。「…だって、アンナ様はまだ正式に辞職していないんですもの。会えるはずですよ。」
「会えるはず…?」
…考えすぎだろうか?
もしかしたら、まだ自分が主人であるという自覚が足りない、というか、慣れていないせいで、単純に呼び戻すという発想すら思い浮かばなかったのかもしれない。
「実際、アンナ嬢がレティシア嬢に何も言わないのは、少々失礼なことだ」と殿下はおっしゃった。
「……何しろ、レティシアさんはアンナさんの主人ですからね」とデュークは苦笑いを浮かべながら言った。
えっ!言われてみれば、ちょっと…うっ!ちょっと傷ついたわ。ご主人様として、私はいい仕事をしていないのかしら?
いえ、そうでもないです…あまりお話をしていないだけです。
少し落ち込んでいると、アルジャーがとどめの一撃を放った。
「レティシア、侍女とは仲が良くないのか?」
…まるでそよ風が吹いたかのように、一瞬静寂が訪れた。
うっ!まさか!アルジャー、この大馬鹿者!
私は彼をじっと見つめ、「…ちゃんとした関係を築いています!」と反論した。
アルジャーは信じられないといった表情で笑った。
この男!わざとやってるの?!まさか私を出し抜こうとしてるなんて!
殿下は何度かくすくす笑い、「アル、本当に仲が良くないなら、レティシア嬢はそんなに心配しないだろう」と言った。
殿下、何がおかしいのですか?
「ああ、そうだった」とアルジャーは微笑みながら言った。
「兄上、そんなことを言わないでください」とアイリーンは慌てて彼を制止した。
デュークは慰めるような口調で言った。「……レティシアさんがおっしゃったように、アンナ嬢は言うまでもないとお考えかもしれませんし、婚約に依然として強く反対されているかもしれません。」
ええ…ええ!多分かも!
だから、早く何が起こっているのか突き止めなきゃ!
「ええ、それは本当かもしれませんね。」
だから、状況を早く突き止めなければ!
まずは、最近護身術のクラスに行っていないという口実から始めようか?
ようやく魔法の基礎を習い始めたんだけど、ほとんど想像と練習ばかり。休暇申請でクラスを休んだから、独学で練習するしかなくて、全然上達してないんだ。
アンナに聞くにはそれで十分だろうけど、相手側はどうだろう…?
「クイン伯爵を知っている人はいませんか?」
男の方はちょっと厄介だ。私には彼との繋がりが全くないし、いきなり連絡したら変に思われるだろう。
アンナの知り合いに頼むべきだろうか?
みんな知らないって言う。
「え…どうしたらいいの?」
これは本当に困ったことになった。
「レティシア嬢は、彼が本当にアンナを愛しているのかどうかを知りたいんですよね?」
「ええ、直接会ってみないと確かなことは分かりませんから…」
皆は再び沈黙し、それぞれどうすべきか考え込んでいた。
皆が真剣に協力してくれているのを見て、私は感謝の気持ちでいっぱいになった。
やがて、アルジャーが沈黙を破った。「ああ…面倒くさいな。いっそ二人とも誘ってしまおうか!」
「えっ!」
「兄さん!うん…そうだね、二人とも誘って確かめてみよう!」
「えっ!二人とも誘うのか!」
突然の提案に、私は少し驚いた。
「…でも、でも、どんな口実で?」と私は尋ねた。
「…愛するご主人様が、二人にお祝いの贈り物をしたいとお考えなのかしら?」とアイリーンが言った。
「お祝いの贈り物…」
でも、それってつまり…
「ああ、街で会えば、二人の自然な反応がもっとよく分かるだろう。」
それは本当だ!
アルジャーはあまりにも気楽そうに話すので、彼は頻繁に外出できるのだろうか?それにアイリーンも気にしていないようだ。もしかして……?
私は急に彼らを疑うようになった。
あなたたちは皆、貴族の子息ではないのか?
「……ちょっと待ってください、レティシアさん、彼女が外出できるかどうかは分かりません」とデュークがアルジャーの言葉を遮った。
はい、はい!
私は慌てて頷いた。
提案は良さそうだったが、私が外出できるかどうかは確かに問題だった。
……何しろ、つい最近、あんな目に遭ったばかりなのだから。
私は苦笑いを浮かべた。また同じような目に遭うのは怖いが、だからといってずっと家に閉じこもっているのは得策ではないし、両親の許可を得るのが一番難しいだろう。
殿下は突然口を開いた。「レティシア嬢、もしそのような障害が何もなかったら、お出かけになりますか?」殿下の言葉は気楽なものだったが、その目つきから、私が本当に行きたいのかどうかを試しているのが分かった。
「わ、行きたいです!彼らの状況を確認したいんです!」
もしクイン伯爵と校長が本当に容疑者なら、アンナにも影響が出るかもしれないし、知り合いが巻き込まれるのは避けたい。
殿下は笑みを深め、「ならば、お望み通りに」とおっしゃった。
どうやら殿下は既に何らかの計画をお持ちのようだ。




