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第5章 13

 父から襲撃事件の真相を聞かされた後、数日間は少し落ち着かない気持ちだったけれど、生活は続けなければならない。そして今日から…

 解禁!解禁!解禁!

 ようやく病気から回復し、制限からも解放された私は、ついに自分の家の中を自由に動き回れるようになった。

 自分の家でさえ移動が制限されるなんて、本当にひどい話だ!

 甘やかされたお嬢様生活って、本当に大変!

「…」

 もちろん、誰かが私の後ろをついてきている。私の専属メイド、アンナが、相変わらず黙って後をついてきている。

 いつものスケジュール通り、先生のいる場所へ向かっているけれど、気分は上々で、足取りも軽やかだ。

 ふふふ、デザートは解禁!ご馳走を堪能するぞ!

 いつもの自分に戻ったということは、午後のティータイムも復活したということ。

 ちょっと食べ過ぎたって、みんな許してくれるだろう。

 午後のティータイムを心待ちにしていた時、アンナが突然「レティシア様」と呼びかけた。

 え?今なんて言った?戸惑いながら、アンナの方を振り向いた。

 アンナは私を見て、「あの日はご一緒できなくて本当に申し訳ありませんでした。何かご不満があれば、直接お申し付けください」と言った。

 アンナは、秘密の会合に私と一緒に行かなかったことを後悔していた。もし一緒に行っていたら、行方不明になったり、トラブルに巻き込まれたりすることはなかったかもしれない。

 しかし、人数制限もあったし、アンナには個人的な用事があったようだったので、彼女のせいではないと思った。こんなことが起こるなんて、誰も予想できなかった。

「アンナ、こんなことは誰にも予測できないわ。私は気にしないし、誰かを責めるつもりもない」

「…………」

 私の言葉を聞いて、アンナは黙り込んだ。彼女が何を考えているのか、私にはまだ分からなかった。

「えっと…本当よ?それに、アンナはその日、お見合いがあったんじゃないの?どうだった?もし好きな人に会えたら、その機会を最大限に活かした方がいいよ!」私は微笑んで話題を変えた。

 父から後で聞いた話によると、アンナの私用は、名門伯爵家がセッティングしたお見合いに関係していたらしい。うまくいけば、アンナの家族にとって間違いなく喜ばしい出来事になるだろう。

 とはいえ、前世の記憶からすると、アンナには心から愛する人を見つけてほしい。家柄のせいで結婚ではなく。

 貴族社会では、真の愛と結婚は実に稀少だ。だからこそ、その空白を埋めるために、数々の空想的なラブストーリーが生まれるのだろう。

 いずれにせよ、あまり口出しすべきではない。アンナ自身が決めることだ。

「………………………………」

 アンナはさらに沈黙し、表情は無表情から、まるで寒気が彼女を襲ったかのように、ますます冷たくなっていく。

 なんて……なんて冷たいんだ!

 えっ、地雷を踏んだのか?

 汗だくになりながら、私はアンナを見つめ、言葉を探そうと必死にもがき、その場に立ち尽くした。

「お嬢様、ご理解いただきありがとうございます。アンナはこれまで以上に勤勉に職務に励みます。」

 無視?!

 お見合いが失敗したから?!

 しかし…「うーん…うーん、きちんと職務を遂行するだけで十分です…本当に。」

 毎日こんなに付きまとわれるのは本当に面倒くさい!

 私は心の中でため息をつき、レッスンが行われる客室へと歩き続けた。

「レディ。」

「おにいちゃん!」

 居間を通り抜けると、兄が目の前に現れた。兄の後ろには、執事と使用人たちが私に頭を下げていた。

 学校は寄宿学校なので、兄とはめったに会う機会がなく、彼がここにいるのには当然驚きました。

「これは魔女が祝福した藁だよ、君にあげる。」

 えっ!

 わあ…本物の藁だ…

 目の前に突然現れたのは、茶色がかった黄色の藁でした。まるでその驚異的な力を誇示するかのように真っ直ぐで、太さと細さのバランスが絶妙で、驚くほど均整が取れていました…少なくともそう見えました。

 私はどう反応していいのか全く分かりませんでした。

 えっと…兄はこれをどこで見つけたの?

 私が呆然としているのを見て、兄は藁を私の手に押し付けました。

「じゃあ、学校に戻らなきゃ。」

 えっ!

 兄がドアに向かって歩き出すのを見送りました。使用人がすぐ後ろをついて行きます。

 執事が付け加えました。「お嬢様、若様は最近お忙しくてなかなかお伺いできず、今日やっと時間が取れたのです。どうかお許しください。」

 夏至の頃に学校でイベントがあることをふと思い出した。生徒会役員の兄は最近かなり忙しかったに違いない。

 ちなみに、前世の私は完全なインドア派で、部活動には一切参加していなかった。もちろん、乙女ゲームに没頭したり、ゲーム代を稼ぐためにアルバイトに励んだりする時間を最大限に活用するためだ。

 執事の説明を聞いて、兄が私に会いに来たのだと分かった。この藁は、おそらく彼からのいわゆる「訪問の贈り物」なのだろう。

「よろしくお伝えください。」

「かしこまりました、お嬢様。」

 執事は私に一礼し、兄の元へ急いで向かった。

 ……藁にもすがる……?

 藁にまつわる形容詞が、突然私の頭の中を駆け巡った。

 はは…まさか。

 私は手に持った藁の根をじっと見つめ、どうすればいいのか分からなかった。授業に行かなければならなかったので、アンナに預けることにした。

「…………」私は藁の根をアンナに手渡した。それを渡した時、彼女の目はかすかにきらめき、何か興味を持ったようだった。

 …まさか。

 考えるのをやめて、客室へと歩き続けた。

「レディ。」

「お母様。」

 午後のティータイムだった。突然、母が私を誘ってくれた。普段は母は他の人のティーパーティーに出席していて、私たちが参加するのはたまにだったが、今回はわざわざメイドを遣わして伝言を届けさせていた。何か重要な話があるのだろう。

 部屋に入ると、母はすぐに私の隣に座るように促したので、私も隣に座った。

 テーブルにはいつもより多くのデザートが並んでいて、思わずよだれが出そうになった。

 わあ、わあ、わあ!ミルフィーユケーキ、アップルパイ、シュークリーム、そしてスフレパンケーキまで!席に着くと、デザートをじっと見つめ、思わずよだれが出そうになった…まあ、比喩表現だけど。

「ふふ、レディ、先に召し上がってください。」

「はい!」

 母は私の気持ちをよく分かっているようで、その言葉を聞いてすぐに食べる準備をした。

「奥様。」

「ふふ、アンナ、大丈夫よ、レディと私で分け合うわ。」

「…はい。」

 するとアンナがデザートを小さく切り分け、私たちに配り始めた。

 ふぅ、まだごちそうの時間じゃないみたい。

 しかし、それぞれ少しずつ食べると、確かにお腹いっぱいになりました。

 母とデザートを片っ端から試食していたら、もうほとんど食べ終わってしまった頃、突然母が尋ねました。「レディ、殿下のぶどうは美味しかったですか?」

 ……ぶどう。

 その時のぼんやりとした光景が、一瞬にして脳裏に蘇りました。

「ゴホッゴホッ……」

 むせそうになりましたが、アンナがすぐに紅茶を差し出してくれたので、急いで飲み干しました。

 飲み終えると、むせそうになったせいか、恥ずかしかったせいか、顔が真っ赤になりました。

「……お母様。」

「ふふ、殿下はあなたのことをとても心配して、わざわざ東からぶどうを持ってきてくださったのね。あちらのぶどうは収穫量は少ないけれど、栄養価は私たちのものより驚くほど高いのよ。殿下はあなたのことをとても大切に思ってくださっているのね、素晴らしいわ。」母は両手を合わせて微笑みました。

「お母様!」

 どうかお許しください…

「レディ、殿下のご意向を真剣に受け止めていただきたい。」

「ええ…殿下は私のことを気にかけてくださっているようです。」

 責任感からでしょう。

 私は言葉を飲み込んだ。政略結婚をした他の人たちと比べれば、少なくとも殿下は私に責任感を持って接してくださっている。

「…婚約者が殿下で本当に良かった。」

 しかし、そこには恋愛感情は一切ない。

 前世の記憶が、愛のない結婚にまだ不安を抱かせていた。そして、未来の伴侶が現れれば、私たちの関係に必ず影響を与えるだろう。

 こうした不安が、今の私を苦しめていた。

 それを見て、母は苦笑いを浮かべた。「レディ、ディスは襲撃者のことを教えてくれましたか?」

「ええ、父から聞きました。」

「…うーん。」

 母は紅茶を一口すすり、目を閉じてしばらく考え込んだ。

「レディ、私のせいでこんなことに巻き込んでしまって、本当にごめんなさい。」

「お母様…」

(「レディを襲ったのは神殿の者だ。」)

 父が当時私に話してくれた真実は、神殿の誰かが私を襲うために人を送り込んだということだった。理由は不明だったが、おそらく母に関係しているのだろう。母は神官の務めを捨てて父と結婚し、家族を裏切った。それが家族の恨みを招いていたのだ。長女である母にとっては、なおさら深刻な問題だった。

 神殿は英雄王を祀っていたが、神官たちは主に女性を後継者に選んでいた。これは当時の伝説の影響によるものだったようだ。そのため、父は、兄の代わりに私を捕らえて後継者にしようとしているのではないかと推測した。

「あの頃、ディスと私は様々な形で手を尽くして、あの家族の問題を解決したのよ。結婚後も特に何も言わなかったし、あなたが生まれてからは平穏だったわ。まさかこんなことになるなんて…」

「王族と婚約したのに、相変わらずあからさまに人を誘拐するなんて。本当に奇妙だわ。いつもの彼らとは違う」と母は独り言のように呟いた。

 母の言葉を聞いて、この件は母だけの問題ではないと感じたが、私は神殿の事情を何も知らなかったので、母の続きを待った。

「ごめんなさい、レディ。もうあの家族のことには介入できません。詳しいことはディスたちが対処するしかないので」

 母は私の頭を撫でたが、その表情はむしろ自分の感情を落ち着かせようとしているようだった。

「お母様…大丈夫よ。お父様が必ず解決してくれるって言ってくれたから」

「ふふ、ええ、レディが慰めてくださったん。ありがとうございます。」

 母が私を抱きしめてくれた。ほのかに漂う心地よい香りが、私に安らぎを与えてくれた。どんな花の香りかは分からなかったけれど、とても気に入った。いつか同じような香水を使いたいと思った。すると突然、母が言った。「ふふ、こんなことを言うのは変に聞こえるかもしれないけれど。」

「でも、レディには殿下を大切にしていただきたいと心から願っています。お二人は色々なことを考慮して結ばれたとはいえ、まだ時間はたっぷりあります。もっとお互いに正直に向き合い、理解しようと努力すれば、きっと愛情は育まれるでしょう。」

 母の瞳には、憐れみと無力感が入り混じった複雑な感情が宿っていた。

 母を見つめ、私は苦笑いを浮かべながら「分かっています」と答えた。

 殿下は既に私たちの婚約についてご説明くださっていたが、今回の出来事で、私たちの側の真意は王室からの保護と神殿の干渉からの防衛だったことが、思いがけず明らかになった。

 思わず胸に手を当て、激しく鼓動する心臓を感じた。

 抑え込んでいた感情が再び湧き上がってきた。

 この感情と向き合うべきだろうか?

 デュークの状況、そして婚約者である自身の状況を振り返る。

 たとえこうなる可能性があったとしても、ゲームの運命が定められていなくても、人生は不確実性に満ちている。これから何が起こるか、誰にも分からない。

 運命に挑むべきだろうか?戦わなければ、結末は誰にも分からない。

 私は心の中で静かに決意を固めた。


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