第5章 12
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暑い。
喉が渇いた。
体は明らかに警告を発していたが、私は動く力もなかった。
やがて、かすかな足音が近づいてくるのが聞こえた。誰かが後ろから優しく私を支えてくれたので、私はゆっくりと起き上がった。
「レイ…。」
黒髪の少年はかすかに微笑み、突然私の口元にブドウを差し出した。
「…殿下…」
「…だめだ…」
私を支えてくれた人が、もう一人の人に何かを言っているようだった。
「…」
私はぼんやりと目の前の光景を見つめた。
…喉が渇いた。
そう思いながら、私はあまり深く考えずにブドウを口にした。
「…甘い。」
朦朧とした意識の中で、私が考えられたのはそれだけだった。
「…もっと。」
私の言葉を聞くと、黒髪の少年はもう一つを私の口元に差し出した。
私が満足するまで、それが何度か繰り返された。すると、彼が何か言ったような気がしたが、眠ってしまったのでよく聞こえなかった。
青空には雲一つなく、鳥たちが絶え間なくさえずっていた。今日もまた美しい日だった。夏至祭の最終日だ。
「なんて穏やかなんだろう…」
私はぼんやりと窓の外を眺めた。ここ数日の出来事はまるで夢のようで、目の前の穏やかな景色と比べると、現実とは思えなかった。
家に帰るとすぐに熱が出て、両親は大変心配した。過保護な両親は、私をほとんど部屋に閉じ込め、数日前の出来事については一切触れず、静かに休ませようとした。
今はすっかり回復し、ほぼ日常生活に戻れる状態だが、両親はまだ外出を許してくれない。
…ジーンたちの計画に支障が出ないことを願うばかりだ。
エイダ王女からもらったブレスレットに触れながら、母や他の人たちに伝えたことの進捗状況を考えた。事態はどうなっているのだろうか、そして私のマントが両親に調査のために持ち去られ、手元にないことも気になった。両親は私が回復に専念できるように、これらのことについては何も言わず、私が問い詰めても断片的な答えしか返してくれなかった。今日に至るまで、私は事態の全容を知らないままだった。
もうそろそろ連絡があるはず!もう2週間近くも療養中なんだから!
その間、勉強仲間はみんな見舞いに来てくれたけれど、両親は私の体調を心配して、プレゼントはロマンス小説と花と果物だけ。ロマンス小説はアイリーンから。彼女は私の好みをよく知っている。花と果物は男の子たちから。きっと私が具合が悪いから心配してくれたんだろう。だからデザートは誰も持ってきてくれなかった。ちょっと残念。
…それから、私の体調が少し良くなったら、見舞いに来てくれるのは殿下だけ。
…ブドウ。
思わずテーブルの上のブドウの皿に目をやった。我に返った瞬間、何かがひどくおかしいことに気づいた。私の記憶が正しければ、殿下は私にかなりの量のブドウを食べさせてくれたはずだ。恥ずかしすぎる!我に返った瞬間、穴にでも飛び込みたい衝動に駆られた。
…ハハハハ…なんて大胆なことを言ってしまったんだろう?
彼に何回食べさせたかって?
いや…いや…問題は回数じゃない。
彼が私に食べさせたんだ、それだけ!
うーん…次に会った時、どうしたらいいんだろう?
頬が熱くなるのを感じながら、手で扇ぎ、部屋の中を行ったり来たりしながら、次の会合をどう切り抜けるか考えていた。
…殿下はきっと来て、私をからかうに違いない。
うーん…どうしたらいいんだろう?
…
…
来てくれたのはありがたいけれど、すごく恥ずかしい。
寝るふりをしよう!だって、あの時は半分寝ぼけてたし、殿下はきっと何も聞かないだろう。
そうだ!そうだ!死ぬまで否定するんだ!
でも…でも、殿下はあんなに手間をかけてくださったのに、お礼を言わないのはおかしい気がする。
…それに、殿下はジーンの件でも助けてくださったし…。
私は悩みながら部屋の中を行ったり来たりしていると、突然ドアをノックする音がした。
慌ててドアを開けると、アンナがすぐに「お嬢様、ご主人様がお見えになりました」と言った。
アンナがドアを開けると、父親が入ってきた。父親はちらりと視線を向けると、ドアを閉めて出て行った。
「レディ。」
「お父様。」
私は父の元へ駆け寄り、父は私の頭を撫でてくれた。
「レディ、ずいぶん元気になったようだね。」
ジーンたちのことが気になって仕方がなかったので、私は父の前でくるりと一回転し、笑顔で言った。「ええ、ご覧の通り、元気いっぱいですっかり回復しました。」
父は頷き、再び私の頭を撫でると、ソファに座らせてくれた。「心配するな。孤児院は既に調査を進めており、子供たちは皆、別の孤児院で暮らしている。」
「…断られなかったの?」私は少し不安そうに父を見た。
実は、お金の件は父に伝えようとしたのだが…案の定、父は丁重に断った。結局のところ、お金は目先の問題を解決するだけで、根本的な原因を解決するものではない。もちろん、全く何も申し出なかったわけではなく、生活に必要な物資を提供してくれたのだ。
父は再び私の頭を撫でながら、「心配しないで。君が言っていたジーンには事情を説明して、他の子供たちとも話せるようにしたから、もう大丈夫だよ」と言った。
「ありがとう、お父さん」
私は慌てて父に感謝した。私にできるのは、彼らの状況を伝えることだけで、実際の対応は父と他の人たちに任せていた。
「どういたしまして、レディ。偶然知ったとはいえ、孤児院のことは決して小さなことではない。むしろ、君は大きな貢献をしてくれたよ」と父は苦笑いを浮かべながら言った。
父に苦笑いを浮かべた。
本当にすごいことを成し遂げたんだ…まるで夢のようだった。
しかし、この件は確かに非常に深刻だ。祭りの最中だったため、捜査はまだ行き詰まっていた。
「その後、警備隊たちはどうなったんだ?」
「陛下は激怒していらっしゃったが、彼らの責任が全てではないと分かっていたので、減給処分にされた。実際には、彼らの上官の方がより重い処分を受けた。近いうちに人事異動が起こるだろう。」
父の真剣な表情を見て、それ以上詳しいことは聞かないことにした。警備隊たちがそれほど重い処分を受けなかったと分かっただけで十分だった。
よかった!ベア隊長!おっさん!
少し安心した。
「ジーンの家族も見つかりました。西方の領地に住む男爵家です。何世代にもわたり騎士として活躍していましたが、近年はその道を歩まず、静かに領地を耕作しているようです。」
西方の領地に住む男爵家…どこかで聞いたことがあるような名前だ。だが、なぜジーンを首都の孤児院に預けたのだろう?
彼らのうちの一人が首都出身だったからだろうか?それとも、社交祭のために首都に来ていたからだろうか?
父の話を聞きながら、私は自分の考えにふけっていた。
「とにかく、もう連絡を取らせるために人を派遣した。もうすぐ返事が来るはずだ。」
ジーンと実の家族との間で、これから何か問題が起こるのだろうか?
私は心配そうに「お父さん…」と呼びかけた。
父は私の頭を撫で、苦笑いを浮かべた。「これから起こることには口出ししない方がいい。彼らの家族の問題だ。」
父の言うことは正しいのだが、あまり干渉しすぎるのは良くないことだと、私は心の中で分かっていた。
「はい、ありがとうございます、お父さん。」私は頷いた。
彼らがジーンを受け入れ、虐待しないことを祈った。
ジーンに手紙を書いて、彼が傷つかないように注意を促すべきだろう。
私はまだとても心配だったが、せめてもう一度だけは手助けしようと決めた。
ジーンにどう伝えようかと頭を悩ませていると、父は話を続けた。
「それで、ついにレディを襲った犯人が見つかったんだ、もちろんね。」
そうそう、私の状況もあるんだけど。
色々なことが重なって、自分がなぜ襲われたのかすっかり忘れてしまっていた。自分が滑稽に思えたほどだ。
「レディを襲ったのは…」




