第5章 11
会話が途切れ、おっさんは両親に連絡を取るために部屋を出て行き、私たちは客室で休むことにした。
「お邪魔して申し訳ありません、お食事を持ってきました。」
突然、ドアをノックする音がして、濃い緑色の髪をした隊員が入ってきた。湯気の立つ食事がテーブルに運ばれてきた。ふわふわで柔らかいパンとクリーミーなスープだ。
美味しそうな香りが漂ってきて、お腹が鳴った。
ゴロゴロ…ゴロゴロ…
今…聞こえましたか?
恥ずかしさを隠すように、私はうつむいた。
ジーンはちらりと私を見たようだったが、何も言わなかった。
「どうぞお召し上がりください」と隊員は言った。
私は落ち着いた声で「ありがとうございます」と答えた。
ジーンは驚いたように隊員を見て、「ああ、ありがとう」と言った。
隊員は微笑んで頷き、静かに席に着き、私たちの食事を見守っていた。
空腹だったので、私は一言も発さずにパンとスープに顔をうずめた…とはいえ、食事中は体裁を保とうと努めた。
パンは特に味はなかったが、柔らかく、スープによく合った。長い間何も食べていなかったので、温かい食べ物が胃を落ち着かせてくれるのは間違いなく必要だった。
ああ…なんて美味しいんだ。生きているって素晴らしい。
実はもう午後だったので、これは遅めの昼食だった。昨晩から何も食べていなかった私にとっては、まさに天の恵みだった。
おそらく庶民の食事よりは少し贅沢な食事だったのだろうが、貴族には物足りないかもしれない。しかし、私にとっては何か食べられるだけで十分だった。味は問題ではなかった。
「ジーン、みんな最近どうしてる?お金はまだある?」
「ああ…うん、問題ないよ。」ジーンは食事をしながら隊員と談笑しているようだったが、私は食べることに夢中で、あまりよく聞いていなかった。
うわぁ…美味しすぎて泣きそうになったわ。
すぐにジーンと私は全部食べ終え、目の前には空になったお皿が残された。
隊員が食器をドアまで運んだが、すぐに戻ってきた。他の隊員が外にいることを知らせるように。
「お嬢様に喜んでいただけて嬉しいです」と隊員は笑顔で言った。
目の前の隊員を見た。平均的な体格で、筋肉質な体つき、少し長めの濃い緑色の髪を後ろに撫でつけていた。視界を遮らないようにしているようだった。表情は少し硬かったが、無理に笑顔を作っているのが分かった。人当たりは良さそうだった。彼は無理に笑顔を作って私を見ていたので、少し恥ずかしくなった。
彼はまるで熊みたいだ。
熊の隊員!
なぜか心の中で彼にニックネームをつけてしまった。
「お料理、美味しかったです。ありがとうございました」と私は彼に微笑みかけた。
「また逃げ出さなくてよかった」
それを聞いて、私は困惑した表情で彼を見つめた。
え?逃げる?どういう意味?私が完全に混乱していると、ジーンが私の代わりに尋ねた。「隊長、どういう意味ですか?」
ジーンの言葉に、私は再び驚いた。この隊員はただの隊員ではなく、隊長だったのだ!
見た目に騙されてはいけない!
「申し訳ありません、お嬢さん。」
隊長はオールバックの髪を前に払い、その佇まいは一気に恐ろしいほど威圧的なものになった。
彼は同じ表情のまま続けた。「昨晩、私はあなたに近づきましただけど、別の任務から戻ったばかりで、身なりが乱れていたんだ。驚かせてしまって申し訳ない。」
冷酷な隊長を見て、私は少し動揺したが、平静を保とうと努めた。
「…私はあなたに近づきましただけど」と、私は思い出そうとしながら言った。
えっ、じゃあ私たちは出会ったの?いつ?
昨夜の出来事を思い出すと、大勢の見物人と追っ手がいて、誰が誰だか見分けがつかなかった。
でも、あんな風に見えたら、逃げ出したくなるのも当然だろう!
ジーンはため息をついて言った。「隊長、レディが怖がっています。ふざけた態度はやめてください。」
隊長は何度かくすくす笑い、いつもの調子に戻り始めた。
「すまない、すまない。確かに、お嬢さんは普通の子供とは違う。」
「普通の子供なら誰でも怖がるよ」とジーンは答えた。
「えっ、ジーンは大丈夫なのか?」
「だって、俺は子供より経験豊富だからな!」
「そうか!」
…もうどっちが大人なのかも分からない。
隊長と話している時のジーンの興奮した表情を見て、私は不思議な新鮮さを感じた。
ジーンは私の方を向いて言った。「ごめん、レディ。隊長はこれで子供をなだめようと思ったのですが、逆効果でした。」
「…そうですか。」
なだめる…子供をなだめる?
あれで子供をなだめるつもりだったの?
…彼は子供の扱いがあまり得意ではないんたろ。
「はは、本当に申し訳ありません、お嬢さん。」
ベア隊長の照れくさそうな笑顔を見て、私は疑問符だらけになった。
このベア隊長…確かにちょっと変わっている!
「では、ヘンリーが連絡を取ってくる間、もしよろしければ、お嬢さん、今の状況を説明しましょう。」
私は頷き、ベア隊長の簡単な質問に答えた。馬車の中で何があったのか、なぜ庶民の通りにいたのか、なぜジーンに会ったのか。要するに、公式調査の手がかりを見つけるために、一連の出来事を話したのだ。しかし、最終的には騎士たちが捜査の責任を負うことになるだろうと私は考えていた。
やがて外から足音が聞こえ、ドアの前でたちまち騒ぎが起こった。ベア隊長がドアにたどり着く前に、ドアが開いた。そこに立っていたのは、両親とアンナだった。
近くに立っていたジーンとベア隊長は敬礼した。
「レディ!」
両親は同時に叫んだ。母は興奮して私の方へ駆け寄り、私も立ち上がって二人の元へ走った。私たちは長い間、しっかりと抱き合った。アンナは相変わらず無表情だったが、目が赤くなっているように見えた。
「レディ、無事でよかった…本当に良かった…」母は感情を抑えきれない声で言った。
「よかった」父も目を赤くしながら答えた。
私たちはしばらく抱き合った後、離れた。母はまだ心配そうだったので、離れた後も私の手をしっかりと握り、私も母の手をしっかりと握った。
「エヴァン様、奥様、失礼いたします。座ってお話しましょう。」
今思えば、客室は人でいっぱいだった。皆、戸口の周りに集まっていた。父とベア隊長が少し言葉を交わした後、母と私は先に部屋を出た。
「お父さん、ちょっと待ってて。」
そう言って、私は母の手を離し、急いでジーンのところへ駆け寄った。
「レディ!」母は驚いて叫んだ。
「ジーン、手伝ってくれてありがとう。あとは私に任せて。」
「あ…ありがとう。」ジーンは少し戸惑いながら、自分のマントを私に手渡した。
これはスラム街を出る前に約束していたことだった。もし全てがうまくいけば、しばらく彼のマントを借りて調査することになっていたのだ。
彼の落胆した表情を見ると、まだ少し自信なさげな様子だった。
私は急いでハンカチを取り出し、リボンを外して彼に渡した。
「何か進展があればお知らせします。何か緊急の用事があれば、ハンカチに描かれた家紋を使ってご連絡ください。もしお金が必要になったら、リボンを売ってもいいですよ。良い素材でできているので、きっといい値段で売れると思います。」
皆の視線を感じながら、私はジーンに小声で手短に説明し、別れを告げると、母の後について馬車へと向かった。
馬車の中で、アンナは私の身なりを素早く整えてくれたが、私は自分の状況とジーンの件を早く説明したくてたまらず、二人が準備をしている間もずっと喋り続けていた。母は終始驚いた様子で私を見つめ、話し終えるとぎゅっと抱きしめてくれた。
「レディは大変な冒険をしたみたいね…無事でよかったわ。」
「…」アンナは何も言わずにじっと私を見つめていた。
全てを話し終えると、肩の荷が下りたような気がして、母の腕の中で眠りに落ちた。




