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第5章 10

「えっと、どう言えばいいかな?」

 おっさんはテーブルの上のティーカップをしばらく見つめ、一口飲んでため息をついた。

「お嬢さん、これから言うことは信じがたいかもしれないが…」

「大丈夫です、ヘンリーさん」と私は即座に答えた。

 昨夜以来、前世でも経験したことのないような出来事をいくつも経験してきた。もう何でも乗り越えられるはずだ。

 さあ、かかってこい!

 私は無意識のうちに拳を握りしめ、燃えるような目でおっさんをじっと見つめ、大丈夫だと何度も繰り返し言いながら、彼が口を開くのを待った。

「おっさん、レディは大丈夫ですよ」とジーンが横から声をかけた。

「ジーン、どうしたんだ…」おっさんは頭を掻いた。

「俺たち、今は同じ立場だからね」とジーンは笑った。

 私はジーンに微笑みかけ、再びおっさんの方を向いた。 「大丈夫です」と私はもう一度言った。それを見て、おっさんは諦めたようにため息をつき、「ジーン、君の孤児たちの行方を調べたんだ。そして、彼らがどこに売られたのか突き止めた…北国だ。君たちの先生は、あそこの人身売買業者と結託している」と言った。

 北国!どうして?!

 私は驚きのあまり、思わず口走ってしまった。これは本当に衝撃的だった。西の帝国には奴隷制度があった。授業でそのことを学んだ時、世界にそんな制度が存在することに、私はかなり驚いた。だから、孤児たちがあそこで売られたことは、それほど意外ではなかった。

 我が国の北部に位置するシュウェイテ王国は、大陸で最も平地が少ない山岳地帯だ。ほぼ一年中寒冷な気候で、人々の生活は厳しい。彼らは互いに助け合うことに大きく依存しており、その結果、素朴で親切、そして正直な人々が暮らしている。北の王国の王女が我が国と結婚したのは、彼らが比較的貧しく、私たちの援助を必要としているからだ。私たちは彼らの水晶資源と交換しました。彼らの水晶生産量は大陸で2位です。もう一つ注目すべき特徴は、彼らの宗教活動が大陸で最も盛んで、信仰心が非常に高いことです。大陸最古の英雄王神殿もそこにあります。

「知ったなら、なぜだ?!」

 ジーンは動揺して立ち上がり、その目には理解しがたい悲しみと憤りが宿っていた。

 ジーンほど動揺はしていなかったものの、私もまた困惑していた。

 国際的な問題が絡んでいて、かなり複雑ではあるが、完全に手に負えないわけではないはずだ。

 おっさんは両手を上げてジーンの動揺を鎮め、「……神殿だ」と言った。

「神殿?」ジーンは聞き返した。

 私はまだ戸惑いながらも、おっさんの説明を聞き続けた。

 おっさんは憂鬱な表情で続けた。「そうだ、人身売買業者たちは北の神殿から密かに依頼を受けていたのだ。」

 ……北の神殿!

 これもまた驚きだった。神殿だ。彼らが孤児たちに何を求めていたのか、私には全く理解できず、混乱が続いた。

 しかし、神殿……それは確かに厄介な問題だった。

 この件が隠蔽された理由が、おおよそ理解できたような気がした。

「これが我々が見つけられた全てだ。」

「えっ?」ジーンは依然として困惑した表情を浮かべていた。

「我々の権限は人身売買犯の逮捕と首謀者の尋問に限られている。その後は上官に引き継がなければならない。」

 おっさんの言う通りだった。

 ジーンは疑惑地問道に尋ねた。「なぜ?」

「一つには、神殿の管轄区域内の行政階層が我々の管轄外だからだ。もう一つは、神殿は本質的に超法規的な組織であり、独自の自治制度を持っているからだ。」

 おっさんはため息をつき、続けた。「上層部はこの厄介な問題に関わりたくないので、いくら懇願しても無駄だ。」

 その通りだ。神殿は独自の制度を持つ超法規的な組織なのだ。各国にはそれぞれ独自の神殿があるものの、一般的には政治にはあまり介入せず、結婚式、葬儀、祭りなどの際にのみ姿を現す。夏至祭のような日は、神殿が最も盛大に公の場に姿を現す機会であり、巫女の剣舞は寺院の威厳を象徴する最大の演目である。

 …しかし、今年の巫女の決闘はあまり注目を集めていないようで、王族でさえそれを国力の象徴として利用しているように見える。

 この奇妙な力関係は、多くの根深い問題が潜んでいることを示唆しているに違いない。

 そして、信仰の衰退は避けられない。

 そう考えると、私は苦笑いを浮かべずにはいられなかった。

 しかし、今回の北の神殿の行動は実に不可解だ。一体何が起こっているのだろうか?

 この話を聞いて、ジーンの表情は暗くなり、絶望的な表情になった。

 そんな彼を見て、私は慌てて「ヘンリーさん、分かりました」と言った。

「お嬢様」とおっさんは私を見て言った。

 ジーンは私を見上げて「レディ?」と尋ねた。

「戻り次第、『あちら』に任せます」

 おっさんは理解して、「ああ…すべてお任せします、お嬢様」と言った。

 ジーンは困惑した表情で私を見た。

 私はジーンの方を向き、「心配しないで、ジーン。私が戻ったら任せて」と言った。

 敵対できるのは、おそらく王室だけだろう。



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