第5章 08
ジーンの様子がおかしいのを見て、おっさんは独り言を呟きながら私たちを客室に案内した。おそらく重要な人物との会合に使われた部屋だろう。内装は豪華だった。私たちが座ったソファは、私の家のものほどではないにしても、とても柔らかかった。
おっさんは私を疑わしげに見つめ、「さて、彼女が君が話していたお嬢様か」と言った。
私はおっさんの問いかけるような表情を見た。
どうやら証拠が必要なようだ。これで十分ではないだろうか?
私は一瞬ためらい、ジーンに目をやった。ジーンは頷いた。
それを見て、私はすぐに頭を覆っていたスカーフを外した。すると、金色の髪がたちまち流れ落ちた。
おっさんは少し間を置いてから、「…プラチナブロンドの髪だ」と言った。
「もしそれでも信じてもらえないなら、ここに家紋が刻まれたハンカチがあります」おっさんは私を一瞥し、それから慎重に言った。
「失礼ですが、お嬢さん、私の職務上、確認のためにハンカチをお借りしなければなりません。」
そう言って、おっさんは申し訳なさそうに顎鬚を掻いた。
それを聞いて、私は急いでハンカチを取り出し、彼に見せた。彼はそれを丁寧に受け取り、しばらくじっと見つめた。
「…確かに、お嬢さんにそっくりですね。それに…」おっさんは私の家紋を見て、何かを悟ったようだった。
しばらく考え込んだ後、おっさんは言った。
「お嬢様、昨夜、ある十代のお嬢様を探すという緊急命令を受けました。捜索は極秘で行わなければならず、大変頭を悩ませています。」
それを聞いて、私はほっと息をつき、緊張が少し和らいだ。
よかった、どうやら私を探しているらしい。だって、私は殿下の婚約者なのだから。
でも、極秘捜索…? もしかして、彼らは評判を気にしているから? だって、彼女は殿下の婚約者なのだから。
私がまだ混乱しているうちに、おっさんは続けた。「申し訳ございません、お嬢さん。急なことで、祭りの時期で人手が足りず、できる限りの人員を捜索に派遣しております。」
「ええ…ええ、大丈夫です。とにかく早く家に帰りたいんです。」
彼は明らかにとても忙しそうだった。誰かを責めるつもりはなかった。早く家に帰りたかっただけなのに。「おっさん、嘘つき。またサボってたんでしょ?」
「ははは、何を言ってるんだ?ジーン、俺はいつも真面目なんだぞ。」
「そうだろうな…」ジーンは疑わしげな顔をした。
「俺は正義の味方だ」とおじさんは得意げに言った。
「「…」」ジーンと私は黙り込んだ。
うわあ、このおっさん、本当に信じられない。
密室にいたにもかかわらず、背筋にぞっとするような寒気が走った。
どうしたらこの場を収められるのか、言葉が見つからなかった。
「本当、本当、あなたのことは気にかけているのですが、どうしても私の力ではどうにもならないこと、解決できないことがあるんです。」
「でも、お嬢様の件は私にお任せください。必ず解決します。ご心配なく。」おっさんは自信満々に言った。
彼の返事を聞いて、孤児院の状況がなぜ解決しないのか、ますます不安になった。男は少し頼りなさそうではあったが、とても親切そうだったし、ジーンでさえ詳しいことは知らないようだった。一体何が原因なのだろうか?
混乱した私は、思わず尋ねた。
「あの、ジーンの件はなぜ解決できないのですか?」
「レディ…」ジーンは少し驚いたように私を見た。
「あぁ…はは、お嬢さん、大人の事情は説明するのが難しいものなんですよ」と、おっさんはためらいながらも私を安心させようとした。
これだ!大人の事情だって!そんな建前で私たちを騙そうとしているの?!
おっさんの説明を納得できず、ジーンの鋭い視線に気を取られながら、私は彼から情報を聞き出す方法を考え始めた。
「すみません、お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
「あ、すみません、お嬢さん。ヘンリーと申します。この部隊の副隊長です。」男は私に頭を下げた。
ああ、副隊長。
私は少し驚いた。
近くに立っていたジーンはそれに気づいたようで、次第に期待に満ちた視線を向けた。
「ヘンリーさん、あなたにもいろいろと大変なことがあるのは承知しています。」
「はい、お嬢さん。」
おっさんは私が何を言おうとしているのか察したようで、眉をひそめた。
私は真剣な表情で言った。「ジーンさんは私に親切にしてくれました。帰ったら必ず両親に伝えますし、必ず恩返しをします。ですから、孤児院の状況に変化が訪れるかもしれません。」
「…お嬢さん。」
私は真剣に続けた。「でも、もしあなたの部隊が助けられなかったら、何か問題が起きますか?」
ジーンのこれまでのやり取りと我々の以前の会話から判断すると、この部隊は協力する意思はあったものの、力はなかった。たとえ力がないとしても、希望はなく、罰を受ける可能性もあった。ふむ、今こそ私のお嬢さんとしての立場を活かす時だ!
「もし本当にあなたの部隊もこの件に関わっているとしたら、私には何も言えません。」私は少し目を伏せ、落胆した表情を浮かべた。
この言葉は、私が彼らのために嘆願することも、刑罰を軽減する手助けをすることもできないことを意味していた。
この表情とこの言葉が相まって、もっと説得力があったはずだ。初めてとはいえ、私の演技力はきっとかなり良かったのだろう。
視界の端で、ジーンがニヤリと笑っているのが見えた。
何がおかしいの!
「ああ、お嬢さん、どうかやめてください。分かりました、話します、話します。」おっさんは両手を上げた。
やった!私の演技力は悪くなかったみたい?
おっさんの皮肉っぽい笑みを見て、私は喜びを隠しきれず、必死に表情を抑えた。
でも、あの男は私の家紋で私だと分かったんだろうから、私の意向に逆らうことはできないはずだ。
とにかく、やっと真相が分かる。
ふん、これはいい。
自分の正体が少しでも役に立ったことに、急に安堵した。
「…さすがお嬢様、恐ろしい。」ジーンは震えるふりをした。
もう!
何がそんなに恐ろしいのよ!理由を明確に説明しようとしているところよ!




