第5章 05
「あの…もし可能であれば、この紋章に描かれている貴族を探すお手伝いをしていただけるとありがたいのですが。」ジーンは少し気まずそうにマントを手に取り、広げて、ほとんど見えない紋章を指差した。よく見てみると、馬と剣のように見えた。
「幼い頃、孤児院の門前に捨てられた時に、このマントに身を包んでいた。」
騎士の家系でしょうか?
記憶に留めていた貴族の名前を必死に探してみたが、しばらく考えても似たような名前は思い出せなかった。下級貴族かもしれない。
時間が限られていたので、全部覚えるのは無理だった。アンナに教えられた貴族の姓は、主に上層、中層、そして特筆すべき特別な姓ばかりだった。
どの家系か確信が持てなかったので、これ以上は詳しく話さないでおこう。
「ええ、戻ったら必ず探すのを手伝うよ!」
「…ありがとう。見つかるといいんだけど」ジーンは沈んだ声で言った。
理由は分からなかったが、親に捨てられるのは辛いことだったに違いない。
「証拠があるんだから、見つかる可能性は高いよ!」私は彼に少しでも希望を持たせようとした。
「そうだな」ジーンは苦笑いを浮かべた。
しかし、それは本当に予想外だった。ジーンも貴族の息子だ。もしかしたら、物語によくあるような私生児なのかもしれない!
もし私が彼を探すのを手伝ったら、血みどろの争いになるんじゃないか?夫婦喧嘩だ!うわあ!恐ろしい!ジーンの立場はすごく厄介になるだろう。何かアドバイスをした方がいいだろうか?怖がらせる前に、心の準備をさせた方がいいだろうか?
「どうした?」
ぼんやりと空想にふけっていた私は、ジーンの問いかけるような視線に慌てて我に返った。
「な、なんでもない。」
まるで初代ヒロイン、リリスのように、彼の人生はドラマと驚きに満ちていた。
……あれ?何かがおかしい。
突然、説明のつかないデジャヴュを感じた。まるで喉に何かが詰まったような、なかなか振り払えない、もどかしい感覚だった。
「よし、行こう。時間がない。まずはスラム街から連れ出して、それから警備隊に助けを求める。それでダメなら、その時に考えよう。」
え?ダメになるなんてあり得る?警備隊って何してるの?
「わかった。」
私は頷き、数々の疑問を抱えながらもジーンの後について小屋を出た。
まずは自分の問題を解決しなくてはならない!
夜より昼の方が視界が良いので、ジーンのマントを羽織り、髪を別の布で覆って結んだ。そして、昨日よりもさらに荒れ果てて手入れの行き届いていない土の道を歩き始めた。その時初めて、自分の靴が泥だらけで原型をとどめていないことに気づいた。
周りを見ないようにしたが、目に飛び込んできた光景は、昨夜見たものよりもさらに荒廃していて衝撃的だった。
乱れた身なりの中年男性が地面に座り込んでいた。私たちが近づくと、彼は突然こう言った。「坊や、今日はどこへくずひろい行くんだい?」
「町へ行くんだ」ジーンは私を見もせずに答えた。
私はジーンの後ろ姿にじっとついて行き、二度と彼の方を見なかった。
出発前に、ジーンは道で話しかけてくる人にはあまり構わないように、すべて彼に任せるようにと私に忠告していた。おそらく面倒を避けるためだろう。
「よく頑張ったな、坊や!ハハハ!俺の分も任せたよ。」
「…」ジーンはそれ以上何も言わず、足早に立ち去った。
「…」私は何も言わずに彼の後をぴったりとついて行った。
孤児院のみんなはくずひろいを集めて生計を立てているのか?
この予想外の生き方に、私はまたしても言葉を失った。
道中、驚くほど多くの人が私たちに話しかけてきた。
「坊や!昨日、獲物が迷い込んできたって聞いたけど、見たかい?」
「昨日は大変な騒ぎだったな。」
「…残念だ。昨日祭りに行ったのに、誰にも会わなかった。」
どうやら私の噂が広まっているようだ。昨日の騒ぎは本当に大きな影響を与えたらしい。気をつけないと。
でも意外なことに、ジーンはここの住民とかなり親しくしているみたいだ。
…もし親しくなかったら、私はここに住めないだろう。それに、ここの人々はどこか結束が固いようだ。
「うっ…死にたい…」
「西の方で…災厄が…起きたらしい。」
「…なんだか…臭い…。」
「今日はガラクタ集めに頑張るぞ!」
私はジーンの足跡を辿った。道行く人々は昨日の狂乱状態とは違っていた。皆、落ち着いていて冷静だった。ぼんやりと座っている者、何かを話し合っている者、そしてジーンたちのように、まだ生き延びようとしている者もいた。要するに、実に多様な人々だった。
殿下の婚約者として…もっと彼らに気を配るべきだろうか?誰もが生活を改善できるとは思っていないけれど、せめて本当に生き延びたいと願う人たちには、もっとチャンスを与えるべきではないだろうか?
いや、いや、今は集中しなければ。家に帰ってから考えよう。
彼らの境遇に思い悩まないように、混乱しないように努め、彼らの後を注意深く見守ることに集中した。
ひたすら歩き続け、永遠にも思える時間が過ぎた後、ようやくスラム街を抜け出した。




