第5章 03
突然、家の反対側から私たちよりもさらに小さな子供が走ってきて、こちらに向かってきた。
「ボス!やっと帰ってきた!」
茶髪の少年が私たちのところに駆け寄り、ジーンに向かって「ボス!」と叫んだ。
ボス?
そう叫んだ後、少年はまるで宝物を見つけたかのように目を輝かせ、じっと私を見つめて言った。
「さすかボス!金の母鶏を見つけたんだ!」
金の母鶏!
…私のこと?
どうしていつもこんな呼び方をするの?!
私は一瞬戸惑い、少年を見つめた。
「もちろん、私にかかればこんなもよ。」
ジーンは群れの王様のように得意げに笑った。
私は微笑み、少年をまっすぐ見つめて言った。
「私の名前はレディ。よろしくね。」
私が望んでいたのは、彼が私への呼び方を変えてくれることだけだった、私はそれを目で伝えようとした。
可愛い男の子だからって、好き勝手に呼べばいいじゃない!
「はじめまして!金の母…レディ!」少年は無邪気に微笑んだ。
うっ!その笑顔は少しギラギラしている。
ジーンに続いて小屋に入った。周りを見渡すと、たくさんの幼い子供たちがぐっすり眠っていた。男の子と女の子は別々に、それぞれ小さなグループになって干し草の山に身を寄せ合っていた。彼らを起こさないように、私は声を潜めて歩いた。
小屋の中はとても簡素だった。テーブル代わりに使われていると思われる木箱がいくつか、そのうちの一つにろうそくが一本、床にはたくさんの干し草、そしてぼろぼろの木桶が二つ。それだけだった。
これを見て、私の気持ちは複雑になった。貧富の差は、本当に歴然としていた。
政府が孤児のための施設を設けているはずなのに、なぜこんなにたくさんの子供たちがいるのだろう?
そう考えていると、小さな男の子がジーンに言った。
「ボス、準備できました。」
「バン、ありがとう。」
男の子は微笑んで言った。
「レディが気に入ってくれるといいな。」
バンは微笑み、干し草の山の一つに歩み寄り、横になるとすぐに眠ってしまった。
「レディ、今夜はそこで寝ていいよ。」
ジーンが指差す方を見ると、そこの干し草の山は周囲の干し草よりも明らかに厚かった。どうやら今夜の私の寝床らしい。
「今夜は私のマントを貸してあげるよ。」
マントをふとん代わりに使うのだろうか?
少し驚いた。
しかし、他の子供たちは毛布さえ持っていなかった。みんな身を寄せ合って寝たり、自分の干し草を積み上げて寝ていた。私の待遇は明らかにかなり良いものだった。
「…ふとんはいらないわ。」
「他の子たちに使う。」
「…ちゃんと覆っておいてくれ。もし君に何かあったら、俺には責任が取れないんだ。」ジーンは意地悪そうな笑みを浮かべながら言った。
…なに!
それを聞いて、私は不満を表すように頬を少し膨らませたが、反論できなかった。彼には彼なりの理由があったのだ。もし私に何かあって彼に影響が出たら、ご褒美は罰に変わってしまう。それは冗談ではない。
「わかりました。」
「ご協力ありがとうございます。」ジーンはわざとらしく敬礼した。
本当に!彼はわざと私をからかっている!
恥ずかしかったけれど、言われた通りに素直に従った。干し草に触れ、その上に横になった。ざらざらとした感触は不思議なものだった。それからマントを羽織った。悪臭がしたが、ボロボロの見た目とは裏腹に、意外にも上質な素材でできていた。不思議に思った。すると天井に隙間があり、そこからかすかに星が瞬いているのが見えた。前世では経験したことのない光景を、今、私は目の当たりにしている。
瞬く夜空を見上げながら、両親のことを思わずにはいられなかった。
お父さんとお母さんは、きっと心配しているだろうな…?
ここで一晩過ごしたことで、両親は今頃、ひどく心配しているに違いない。
すぐにスラム街を出て、助けを求めに行くべきだろうか?
自分の判断に少し迷っていると、ふと隣で何かが動いたのに気づいた。
振り返ってジーンをちらりと見た。彼はドアのそばの壁まで歩いて行き、腰を下ろして壁にもたれかかり、目を閉じた。眠っているようには見えなかった。ただ休んでいるだけで、まるで私たちを見守る守護霊のようだった。その姿に、私は思いがけず安心感を覚えた。
この世界の子供たちは……驚くほど大人びている。
私の勉強仲間は皆貴族で、幼い頃から教育を受けているので、早熟なのは当然だが、一般人ですらこうだなんて……信じがたい。
年齢に似合わない彼らの成熟ぶりは、本当に驚くべきものだ。
「早く寝ろ、ひどい顔色だ。」
えっ!目を開けてもいないのに、どうして分かるんだ!
私は慌てて反対側に寝返りを打ち、目を閉じた。すると、いつの間にか眠ってしまった。どうやら思っていた以上に体調が悪かったらしい。もうすっかり疲れていた。




