第5章 01
スラム街――文字通りの意味だ。この世界には自然に存在するものであり、特に階級制度の下では顕著になる。どんなに豊かな国でも、スラム街の存在から逃れることはできない。私が暮らしていた世界でさえ、程度の差こそあれ、スラム街が存在していた。
意識を取り戻すと、私は再びスラム街にいた。ますます荒廃し、混沌とした光景に衝撃を受けた。正体不明の悪臭が空気を満たし、瞬時に鼻腔を刺激した。しかし、体がこの急激な変化に反応する間もなく――
「……」
中にいた人々は沈黙していたが、鋭い視線が獲物を見つけたかのように一斉に私に向けられた。
彼らは皆、私を引き裂こうとでもいうように、一斉に私に襲いかかった。彼らの目には、私はまるで屠殺場に連れて行かれる子羊のように映っていたのだろう。何かがおかしいと感じた私は、慌てて逃げ出し、身を隠した。
はぁ…はぁ…
毎日運動しているし、体力には自信があったけれど、こんなに走り続けたら、本当に限界だった。
心臓がドキドキして、走ったせいなのか、それともこの状況の緊張のせいなのか分からなかった。
逃げるように走り、ジグザグに身をかわしながら、徐々に多くの人を置き去りにして、ようやく大きな箱の山陰に身を隠した。
とにかく、ようやく身を隠して落ち着きを取り戻した私は、これからどうすべきか考え始めた。
「…い…おい…」
まずはスラム街を抜け出して、労働者階級の地域で助けを求めるべきだろうか?
前世にあった警察署みたいな場所があるはずだし、両親も私が行方不明になったことを知って、捜索隊を派遣しているはずだ。
確か、治安部隊って言うんだったかな?それとも市民が結成したパトロール隊?どちらにしても、両方から助けを求めることができるはずだ。
まずは、スラム街から抜け出す方法を見つけなければなりません!
服を隠す方法を見つけなければ、あまりにも目立ってしまう。
服を見ていた時、手首のブレスレットに目立つひびが入っていることに気づいた。
…まさか!
「…おい…」
エイダ王女からいただいた大切なブレスレットが壊れている?!
どうしよう?!
襲撃で壊れたのか、走っている時に壊れたのか分からない。ショックで、思わず行ったり来たりところだった。魔法が効いて命を救ってくれたとはいえ、明らかに壊れてしまっている。エイダ王女からの大切な贈り物なのに。罪悪感が胸を締め付けた。
ところで、カイル王子と皇太子は馬車で帰路についており、私とは別のルートを通っている。おそらく私の異変にはすぐには気づかないだろう。
…
…
しかし…
ブレスレットをよく見てみると、魔法のルーン文字はまだ残っているようだ。
まだ効くのだろうか?
私はブレスレットをじっと見つめた。かすかに光る魔法のルーン文字が刻まれている。
まだ効果があるかどうかは分からなかったが、とりあえず身につけておくことにした。しかし、これ以上の怪我を避けるために、ブレスレットを外してポケットにしまった。そうすることで少し安心できた。将来、学園で役に立つかもしれないから、まだ使えることを願っていた。
ようやく決心して周囲を見渡すと、いつの間にか夜になっていた。辺りは真っ暗で、かろうじて一、二本の松明が辺りを照らしているだけだった。落ち着いて周囲を見渡すと、ますます静まり返り、恐怖に襲われた。
……なんて恐ろしいんだ。
どうすればいいんだ?
……
今、残っているのは燃える松明のざわめきだけ。その音は、一層耳障りだった。
「おい――」
不安な気持ちでいると、突然誰かが呼ぶ声が聞こえた。
用心深く逃げようと身構えたその時、黒い人影が目の前に飛び出してきた。
「おバカさん、耳が聞こえないのか?」
その人影はしゃがんでいた姿勢から立ち上がった。立ち上がると、私より少し背が高く、黄褐色の髪、灰色の瞳、灰色のマント、そして黒いズボンを身につけていた。灰色の瞳は私をじっと見つめ、表情にはかすかに不満が滲んでいた。
私は数歩後ずさりして言った。「誰…誰ですか?」
「やっと俺を見たか、おバカさん。」
「おバカさんって、私のことか!?」
「俺はジーン。お前をスラム街から連れ出してやる、優しい男さ。」
ジーンという名の少年は、信じられないような悪戯っぽい笑みを浮かべながら話し終えた。
「…」私は疑わしげに数歩後ずさった。
「ふっ、この間抜けなアヒルは見た目ほどバカじゃないんだな」ジーンという名の少年は悪戯っぽい笑みを浮かべながら続けた。
彼の落ち着いた笑みを見て、私の不安は募ったが、平静を装って尋ねた。
「目的は何?お金?」
「もちろん、お金と他の報酬が欲しい」ジーンは悪戯っぽい笑みを浮かべながら続けた。
やはりそうだったか?
…まあ、それもいいわ。
「…わかった」
「屈辱的だと思うだろう、お嬢さん?でも他に選択肢はないんだから、いい子にしてろよ…」
「わかったわ!報酬は何が欲しいの?」
「はっ!」
「お礼に何が欲しいか言って!何でも用意してるよ!」
ただし、誇張しすぎでなければ…
それについては、無事に家に帰ってから話そう。
ジーンは一瞬驚いた後、「…奇妙なお嬢さんだ…」と呟いた。
目的を持って手助けするのが一番安全な方法だ!知らないのか?!
ジーンはニヤリと笑いながらマントを脱ぎ、ボロボロの灰色のノースリーブシャツを見せた。
「ふっ、いいだろう、まずはこれを着てみろ。」
ジーンという名の少年は、自分が着ていた灰色のマントを私に手渡した。彼の意図は明白で、私はすぐにそれを受け取った。マントからは強烈な、正体不明の臭いがしたが、どうしようもなかった。今の状況では目立ちすぎるので、急いで着た。
…うっ。
着てみると臭いはさらに強烈になり、私は吐き気をこらえるのに必死だった。 「…君は気が利くね…変わったお嬢さんだ。」
私がそれを着けると、ジーンは怪訝そうに頭を掻いた。




