第4章 14
皆に別れを告げ、護衛の指示に従って馬車に乗り込んだ。人目を忍んで移動できる人数が限られていたため、アンナは同行せず、護衛の増員に重点が置かれていた。
ガタガタ――
意外性に満ちた人たちね…
帰り道、馬車に座りながら、彼らと過ごした時間を思い出し、心が温かくなった。困難ながらも、また会える機会があればと願っていた。
私は微笑みながら、黄色の翡翠のブレスレットにそっと触れた。
突然、馬のいななきが響き、馬車が急ブレーキをかけた。幸いにも、私は馬車にしがみつき、落ちなかった。
な…何が起こったの!?
突然の出来事に、私は混乱した。
「…エヴァン家の紋章だ。」
「…誰だ?!」
「…チッ…」
金属がぶつかり合う音、叫び声、そして衝撃音が響き渡った。明らかに、外で何かが起こったのだ。
突然の出来事に、私の体は思わず震えた。
外からは戦闘の音が絶えず聞こえ、私の体はますます震え始めた。
落ち着かなければ!
慌てて平静を取り戻そうと、ただ傍観して運命を待つわけにはいかないと自分に言い聞かせた。震える手でカーテンの端を少し開け、外を覗き込んだ。
外では人々が戦闘を繰り広げていた。敵は黒ずくめの服を着て仮面をつけており、顔は判別しにくい。彼らの俊敏さゆえに、我々の側は不利な状況に陥っていた。
この実戦はまさに目の前で繰り広げられており、逃げ場はない。震えながら、私は彼らの戦いを不安げに見守った。
助けたい気持ちは山々だったが、外に出ても邪魔になるだけで、全く無駄だと悟った。
……どうすればいい?
彼らの会話から察するに、どうやら私を狙っているようだ。そして今、護衛たちが次々と倒れていく――恐ろしい光景だった。冷静でいろと自分に言い聞かせ続けた。
…このまま見張っていたら、捕まるだけだ。
体は震えていたが、意外にもこの瞬間、私の心は比較的明晰で、そのことをはっきりと理解していた。
馬車のドアのこちら側の窓をそっと覗き込み、周囲に誰もいないことを確認した。敵は今、護衛兵側に狙いを定めている。
今しかない!
私は本能的にドアを勢いよく開け、飛び出して外へ駆け出した。走って、走って、走り続けた。少し走ったところで、黒い人影が突然現れ、鋭い刃を私の心臓に向けて構えていた。
必死に走ったせいで息も絶え絶えで、反応する間もなく…
まさか…死ぬのか?
そう思った瞬間、刃は私の心臓からほんのわずかのところまで迫った。その時、「ドスン!」という大きな音が響き、まるで何かが刃を遮ったかのようだった。
「ちっ!そんなもの聞いたことないぞ!」
死が目前に迫っていると思い、まだ意識が朦朧としている中、黒衣の男が悪態をつくのが見えた。
我に返った私は、男の進路を体で押し退け、股間を蹴り飛ばし、その隙に反対方向へ走り出した。
衝撃の瞬間、男の体に神殿の紋様が見えたような気がした。
私はひたすら走り、走り、また走り続けた。自分がどこにいるかも気にせず、ただひたすらその場から逃げ出した。
危機的状況ではアドレナリンが急上昇すると言うが、まさにその通りだ!この走りのスピードは、普段の練習スピードの何倍も速い。もしかしたら、子供のギネス世界記録を更新できるかもしれない。
ハァハァハァ…
どれくらい走ったのか、どれくらいの距離を走ったのか、自分がどこにいるのかも分からなかった。体が限界のサインを出すまで走り続け、それからゆっくりと止まった。
「…ゴホッ…ゴホッ…」
息切れが激しく、あまりの速さに思わず咳が出てしまい、胸が痛んだ。
「ハァ…ハァ…」
しばらくして、ようやく息を整えることができた。
相手はまだ追いついていないようで、少し安心した。
「…ん?」
ようやく息が戻り、周囲を見回して自分の位置を確認する気力が湧いてきた。
周囲は、先ほどまで歩いていた広場や商店街、ましてや貴族の通りとは似ても似つかない場所だった。道は明らかに汚れていて混沌としており、舗装はでこぼこで途切れ途切れだった。家々は密集していて、夕方だったため、多くの露店商が様々な種類の生の鶏肉や果物、その他の日用品でいっぱいの屋台を片付けるのに忙しそうだった。行き交う人々は比較的質素な服装をしていた。
……どうやら……
ここは、いわゆる下町地区に違いない。私はその光景をじっと見つめ、少し途方に暮れ、呆然とした。
「この子、一体どうしたの?」
「ふふ、もしかしたら誘拐された貴族の子かもね。」
「あらまあ、そうかもね、はは。」
「彼女を守ったら、何かお礼でももらえるの?」
「馬鹿なこと言わないで。犯罪者みたいに尋問されるかもしれないわよ。」
突然、周りの人たちが立ち止まってひそひそ話をしているのに気づいたが、誰も近づこうとはしなかった。普段より地味な服装だったとはいえ、やはり周りの人たちとは違って目立っていた。明らかに、私は多くの注目を集めていた。
「…お嬢ちゃん、怖がらなくていい。お父さんとお母さんに会わせてあげるから!」
突然、明らかに悪意のある、威圧的な顔をした男が近づいてきた。私はすぐに路地裏に向かって走り出した。
「…待って!」
「わあ、あっちへ走ってる。」
一連の出来事で私は理性を失っていた。注目を避けようと必死だった私は、知らず知らずのうちにさらに恐ろしい場所、スラム街に足を踏み入れてしまったのだ。




