第4章 12
時間が近づくと、私たちは王族御用達のレストランに到着した。豪華な内装は、まさに貴族のための場所であることを物語っていた。中に入るとすぐに、防音仕様のVIPルームへと案内された。
しばらく待っていると、ドアをノックする音が聞こえた。護衛が応対し、ドアを開けた。
そこに現れたのは、ひときわ目を引く銀髪の男だった。北国の先王妃も同じ髪色だったため、彼がウェンシウ王子であることは容易に分かった。エメラルドグリーンの瞳、すらりとした体つき、そしておそらく髪色のせいか、どこか虚弱に見え、表情はやや硬かった。
ウェンシウ王子は、まるでテレパシーで通じたかのように、入室してすぐにエイダ姫に気づき、エイダ姫もすでに彼を見つめていた。
「ウェンシウ王子…」
「…エイダ。」
二人は言葉を交わすことなく、まるで二人だけの世界に閉じこもっているかのように、周囲の視線を完全に無視して、長い間見つめ合っていた。
「…」
「…」
…お二人とも、見つめ合いすぎですよ!
心の中でツッコミながら、私はウェンシウ王子の後ろにいるカイル王子に気づいた。ウェンシウ王子が戸口で立ち止まったため、カイル王子は回り道をして外に出ようとしていた。その表情は少し困惑しているようだった。彼がそんな表情をしているのを見たのは初めてで、思わず口元を覆って小さく笑ってしまった。
死んだ魚の目ってやつね!
「はは…だって、長い間会ってなかったから」とロザリンドが小声で言った。
「ゴホン。」
リードさまが何度か咳払いをしたので、二人は我に返った。
リードさま!よくやった!
私は心の中でリードさまの機転の利いた介入を称賛した。
リードさまの咳払いを聞くと、二人はまるで新婚夫婦のように、恥ずかしさを隠そうとするかのように同時に頭を下げ、ピンク色のロマンチックな雰囲気を醸し出し、周囲の人々はどこに目を向けたらいいのか分からなかった。その場は一瞬静まり返った。
「とにかく、まずは座ってください」と、殿下は苦笑いを浮かべながらおっしゃった。
今度はカイル王子が口を挟んだ。またあの死んだ魚の目をしていたが、気のせいだろうか。
ようやく皆が席に着いた。
「エイダ…会えて本当に嬉しいよ」
「殿下…」エイダ王女はウェンシウ王子を少し嬉しそうな表情で見つめた。
「だが!これはあまりにも危険すぎる!もしエイダに何かあったら…私は…」
「殿下、ご心配なく。私は一人で来たわけではありません。帰りは替え玉が付き添っています。大丈夫です」とエイダ王女は言った。
えっ!替え玉!
ということは、東王国は今、王女になりすます替え玉を使っているということか?
予想外の答えに、私は言葉を失った。
「…デニースはいつまで持ちこたえられるだろうか」と、リードは静かに呟いた。
「…あの子は賢いから、あと数日は大丈夫でしょう」とロザリンドは静かに答えた。
つまり、デニースは王女になりすましていたのだ。
私は二人を見つめ、少し考えた。
「エイダ…」
「殿下…」
「…」
「…」
二人は再びそれぞれの世界へと戻っていった。
恋愛物語ではよくある展開だが――男女の主人公がそれぞれの世界に入り込むのは、とても微笑ましいものの、傍から見ている者にとっては、ひどく気まずく感じられるだけなのだ。
「ゴホン。」
リードさまが何度か咳払いをしたので、二人は我に返った。
リードさま…本当にご尽力いただき、ありがとうございます。
私は静かに深く頭を下げた。
「兄上、時間がありません」とカイル王子はウェンシウ王子に微笑みながら言った。
この瞬間、カイル王子の周囲はまるで黒煙に包まれたかのように感じられ、その微笑みには絶対零度のオーラが漂っていた。
殿下…その微笑みは、とても暗い。
私は少し顔をそむけた。
ウェンシウ王子はカイル王子を一瞥し、少し間を置いてから、慌てて言った。
「あのエイダは…」
「ええ。」
「私たちの結婚は変わりません。」
「ええ!」
エイダ王女の表情は、先ほどの優雅で威厳のある様子とは打って変わって、とても幸せそうだった。まるで恋に落ちた少女のようだった。
でも…それは素晴らしい。
ウェンシウ王子から直接この言葉を聞けば、彼女も安心するだろう。
しかし、結局のところ、原因はウェンシウ王子からの問題のある手紙にあるのです!!彼女は途方に暮れるなってしまった。
その後、ウェンシウ王子はエイダ王女に現在の状況を説明し、結婚が1、2年延期されるかもしれないと告げ、心の準備をするように頼んだ。エイダ王女は真剣に耳を傾けていたが、二人の間には何度か短いながらも親密な時間が流れ、カイル王子とリードさまが仲裁に入るまで、会話は途切れなかった。
「エイダ、父上の承認を得られるよう努力します!もう少しだけ待っていてください!」
「頑張ってください!ウェンシウ王子、私はいつもあなたを応援しています!」
「そう言っていただけると、勇気づけられます!」
ウェンシウ王子を見ると、ほんの数分前まで弱々しく見えた姿とは打って変わって、今は幸福感に満ち溢れ、生き生きしている。
「……」
「……」
ようやく二人はそれぞれの世界へと戻っていった。
「ああ、やっと話が終わったの?」ロザリンドさまは眠そうに目をこすった。
ロザリンドさんは会話の途中で居眠りをして寝床についたので、今起きたばかりだった。実に満足そうな巫女だった。
「……やっとだ。」リードさまは額をこすりながらため息をついた。
「……」殿下は何も言わなかった。
ああ…よかったですね…
ようやく会話を終えてレストランを出た後、私は死んだ魚のような目で沈む夕日の残光を眺めた。




