第4章 09
馬車に向かう途中、私はアンナに用意しておいた言い訳を言った。
「アンナ、東の巫女のところで物を落としちゃったの。親切に教えてくれたから、帰る前にお礼を言いたかったの。」
この言い訳なら、それほど悪くないはずだ。少しは真実味がある。
「わかった」とアンナは無表情に答えた。
よし、大丈夫そうだ。
それから私たちは方向を変えた。部屋は馬車とは反対方向だったので、反対方向に歩いた。
しばらく歩くと、東の巫女の部屋に着いた。入り口に立っている護衛は、さっきと同じだった。
「ご用件をお伺いしてもよろしいでしょうか?」とワイルドガードが私に尋ねた。
彼はかすかに微笑んだ。
わあ!なんてハンサムなの!
今、彼は私をじっと見つめている。しかも、さっきよりもずっと近い距離で。私の心臓はドキドキする。
落ち着け…落ち着け!
私はすぐに「先ほどは巫女様にお世話になり、改めてお礼を申し上げに来ました」と言いました。
「かしこまりました。少々お待ちください」と、ワイルドガードはすぐに誰かを中に送り込み、巫女様に知らせました。
私たちは顔を見合わせて微笑みました。
ああ~、まるで偶像の隣に立っているみたい。
こんなに感動するとは思ってもみませんでした。
その後まもなく、私は中に入ることを許されました。
中に入る前に、ワイルドガードはアンナたちに外で待つように言いました。
「…」アンナは少し心配そうに私を見ました。
「すぐ出るから、心配しないで」
アンナは頷き、私は中に入りました。
「ようこそ~、ようこそ~!来てくれて嬉しいわ!私のパフォーマンスはどうだった?」ロザリンドは微笑みました。
「本当に素晴らしかった!すごく興奮した!」
「それは素晴らしい!」
私が話し終えると、ロザリンドはくるりと回り、衣装が優雅に揺れた。
なんて可愛いの!
彼女がこんなに喜んでいるなんて、想像もしていなかった。
舞台での彼女の威厳ある態度とは全く違っていて、本当に驚いた。
私が微笑んでいると、突然誰かが声をかけた。
「レティシア様。」
私はそちらを見た。
メイド服を着た彼女は、頭飾りを外した。
えっ!
メイドの長く艶やかな茶色の髪と、印象的な黄色の瞳が現れ、たちまち高貴なオーラを放ち、自信に満ちた表情を浮かべた。
「時間が限られているので、早速本題に入ります。」
「ウェンシウ殿下にお会いさせてください!」
えっ!
ウェンシウ殿下とは……我が国の皇太子殿下のことです!
「私はフィウレ王国のアイダ・フィウレ王女です。」
えっ!東の王国の王女との予期せぬ出会いに、私は一瞬呆然とした。
「失礼ですが、皇太子殿下にお会いになりたい理由は?」私はすぐに平静を取り戻した。
「真実を知りたいのです。」
「真実ですか?」
「延期の本当の理由。」
「…」
「私たちの結婚は政略結婚とはいえ、たった一通の手紙だけで判断するのではなく、彼の真意を知りたいのです。」
王妃殿下は、意外にも皇太子殿下のことを心配しておられるようです。
現在、皇太子殿下は体調不良のため、邸宅で療養中であると公言されています。しかし、その後、皇太子殿下は内密に陛下の文書作成を手伝っておられる。
真相は、皇太子殿下が帝国軍の攻撃で負傷され、陛下は不測の事態を恐れ、皇后様に関する事柄を処理するため、皇太子殿下を公の場から遠ざけているということです。
殿下に真実を伝えるべきでしょうか?
殿下の毅然とした眼差しに、私は思わず全てを口に出しそうになりました。
少し考えた後、手紙の内容に基づいて判断することにしました。
「皇太子殿下の手紙には、どのようなことが書かれていたか、お聞かせいただけますでしょうか?」
「ご心配なさらないでください。またお会いしましょう。」
そう言って、王女はそれ以上何も言わなかった。どうやら本当にそれだけのようだ。
えっ!
一体どういう返事だ!?
王女があんなに心配していたのも無理はない!
判断の根拠にしようとしていた情報が、あっけなく私の計画を崩してしまった。
どう答えたらいいのか、ますます分からなくなってしまった。
「詳しいことはお話しできませんが、皇太子殿下のおっしゃることは間違いありません。必ずまたお会いできます。」と私は慎重に答えた。
「そう…」王女はため息をついた。
王女は、とても心配しているようだ。
もしかしたら、本当に皇太子殿下のことが好きなのかもしれない。
「それは素晴らしいわ、エイダ!」ロザリンドは王女を見ながら叫んだ。
巫女が王女をファーストネームで呼んでいることから、二人はとても親しい間柄であることがうかがえた。
「でも、さっきも言ったように、私はまだ皇太子殿下に会える機会を願っているの。」
どうやら、事態はそう簡単には解決しないようだ。
私はため息をついた。
「本当のことを話したら、考えが変わるかしら?」と私は尋ねた。
「いいえ。」
これは思ったより厄介だ!
どうすればいいの?私には手に負えない。
「明日と明後日もまたここを観光するから、また会えるかもしれないわ。」
王女はすぐに付け加えた。
え…本当?
私は少し驚いた。そんなことは知らなかった。
でも、もしかしたら、それはまさに私とは関係のないことだからかもしれない。
「ここに来るのは初めてだから、じっくり見て回らなきゃ。馬車の中で面白いものをたくさん見たのよ。」
ロザリンドは、事態の深刻さに全く気づかず、楽しそうに言った。
最初は可愛らしい仕草だと思ったのだが、今となっては楽観的すぎるように思えた。
私はそっと息を吐き出し、「なぜ私を訪ねてきたのですか?」と尋ねた。
「先ほどの質問から、あなたが第二王子の派閥に完全に属しているわけではないことが分かりました」と王女は言った。
つまり、質問には確かにそういう意図があったのだ。
「それに、リードがあなたの燃えるような視線を感じたと言っていましたよ!」ロザリンドは微笑みながら付け加えた。
えっ!
私は顔を赤らめ、二歩後ずさりした。
まさか見つかるとは思っていませんでした。
それで、ワイルドガードの名前はリード…
いや!今はそんなことを考えている場合じゃない。
「い、いえ…すみません。」慌てて謝った。
本当に失礼なことを言ってしまった。
次はもっと冷静にならなければ。
「ローザ。」
「はは、それは当然よ。リードはうちの国ではかなり人気があるの!狩猟対象は子供からお年寄りまでみんなよ。」
まさかそんなに人気があるとは思わなかった。
ワイルドマンの魅力は確かに広く認められている!
でも、ありがたいことに、彼らはあまり気にしていないようだ。
私はすぐに話題を変えた。
「あの、殿下は皇太子殿下の敵になるつもりはないとのことです。」
これは説明しなければならなかった。
「そうか?」
「ええ、そしてそのためには殿下のご協力が必要なのです。」
私は彼女に真摯にそう言いました。
「…」王女は私を見つめ、少し考え込みました。
「分かりました。あなたが助けてくださるなら、信じましょう。」王女は私をじっと見つめました。
人をじろじろ見るのはやめなさい!こういうことが起こるとろくなことにならないわよ!
私は心の中で、密かにツッコむしました。
「ご理解いただきありがとうございます」と言って、私は彼らに頭を下げました。
とはいえ、この件は国王陛下に報告しなければなりません。何しろ、王女は変装してここにいるのですから、何かあれば国際問題に発展する可能性があります。
きっと皇后様には知らせないようにするでしょうね。 とにかく、まずは私が知らせなければ!
連絡先を入手した後、馬車で宮殿へ向かい、殿下にお会いしました。私の知る限り、殿下はその後特に急ぎのご予定はないようです。ここ数日の激務の後、私と同じように少しお休みを取られるとのこと。
ああ!申し訳ない気持ちでいっぱいです。
もし私が来なければ、こんなことにはならなかったかもしれません。
ゲームで言うと、サイドクエストが始まるようなものですね。
どうやら私の夏至祭はまだ終わっていないようです。




