第4章 05
かつて静寂に包まれていた森は、今や凶暴なモンスターに蹂躙されていた。貴族たちが足を踏み入れた途端、森は咆哮と金属のぶつかり合う音で満ち溢れた。待ちに待った大規模な狩りは、そこに集まった戦士たちの闘志に火をつけ、活気に満ちた興奮の空気を生み出した。
森の一角では、帝国第四皇子ライアンもこの大狩りに招待されていた。彼は容赦なくモンスターを討伐し、傍らの騎士たちは彼の討伐数を証明するために、倒したモンスターの体の一部を回収していた。彼はカイル皇子と討伐数競争を繰り広げていたのだ。
「殿下!」
「心配するな!」
ライアン皇子は魔法を使って、素早く襲いかかってくるモンスターの攻撃をかわした。討伐数を数える必要があるため、モンスターにあまりダメージを与えるわけにはいかず、慎重に行動しなければならなかった。
「ハッ!」ライアンは慎重にモンスターに攻撃を仕掛けた。
(我が国に比べれば、奴らは取るに足らない存在だ。)
「君にまかせる。」
「はい、殿下!」
護衛騎士たちはライアン王子の指示に従い、先ほど攻撃したモンスターから証拠品を素早く回収し、丁寧に保管した。
(この国は本当に生ぬるいな。)
ライアン王子は前日の盛大な歓迎を思い出しながら、狩りを続けた。
やがて、ライアンは遠くに見覚えのある黒い人影を発見した。よく見ると、それはライバルと彼の護衛騎士たちが近くで狩りをしている姿だった。
俊敏なタウロスの一群に襲われたカイルは、表情を一切変えず、難なく攻撃をかわした。タウロスたちを一箇所におびき寄せると、電光石火の炎攻撃で一掃した。そして、巧みに攻撃の威力を調整し、モンスターの証拠品だけを残して、助けようとした護衛騎士たち活躍の場がない。
「もうここにはいないはずだ。」
「殿下、さらに奥へ進みましょうか?」
「ああ、だがその前に。」
カイルは既に遠くからライアンの気配を察知していた。ライアンはカイルが近づいてくるのを見守った。
「狩りはどうだった?」
無傷でリラックスした様子で微笑みながら近づいてくるカイル王子を見て、また彼の後ろに控える騎士たちが抱えている獲物の数に気づいたライアン王子は、くすりと笑った。
ライアンは背後の護衛たちを指さした。カイルは振り返り、「見事だ。」と言った。
「おあいこだ。」
(見たところ、私のほうが少し少ないようだな。まったく、腹立たしい。)
「今、さらに奥深くへと進むな。だがその前に…」
ガチャン――
ライアン王子はそう言い終えると、即座にカイルの攻撃に向かって突進した。
「殿下!」
突然の行動に、両陣営の護衛たちが一斉に叫んだ。
「…素早さ、アルに匹敵する。」
カイルは即座に防御した。表情は依然としてリラックスしており、口元には笑みが浮かんでいた。ライアンの攻撃を予期していたかのようだった。ライアンは「勝負しようか?」と言った。
「もう勝負を挑んじゃったな?」
カイルはライアン王子を突き飛ばし、戦闘態勢に入って挑戦を受け入れた。
ライアンは即座に攻撃を開始し、先制攻撃を仕掛け、カイルの死角を素早く狙い、弱点を探った。
「俺の友人に比べれば、まだ少し遅いが…」
カイルはこの戦術に熟知しており、ライアンの攻撃をことごとく受け流し、計画を阻止した。
「まだこんな話をする暇があるのか?!」
これを見て、ライアンはすぐに戦術を変え、カイルの剣技を試して突破口を探ろうとした。カイルの剣技は一見すると宮廷剣術のようだったが、戦闘が進むにつれて、未知の剣技が混ざり合っていることが明らかになり、理解し難いものとなった。
(ちっ!やっぱりな!この王子は本当に怪物だ。)
(後ろにいる騎士もすっかり魅了されているようだ。見ていて不快だ。)
「思ったほど頑固ではないようだな。」
「ちっ。」
相手が自分の動きを一つ一つかわしていくのを見て、ライアンはますます苛立ちを募らせた。帝国では様々な怪物たちに鍛えられ、剣技は最高レベルと評され、並外れた才能を示していた。
(伝説の英雄王と同じように、その技量は怪物級だ。実に厄介な存在だ。)
(あの退屈な戦いから解放されて、ここにいられて本当に良かった。)
「天があなたにその容姿と資質を授けたのなら、なぜただ神の意志に従わない?あなたには無能な皇太子が一人しかいないでしょう?」
(それが未来を面白くするので。)
「…」
ライアンは悪意を込めて、わざとカイルを挑発し、「おい、英雄王よ」と言った。
カイル王子は一瞬ためらったが、当然のようにその挑発を受け入れ、反論した。
「そんなつもりはなかった。」
カイル王子は予想されたような興奮は見せず、ただ冷ややかな笑みを浮かべただけだった。しかし、ライアン王子はその笑みが全く偽物だと感じ、名状しがたい怒りがこみ上げてきた。
(…もったいない。)
カイルの護衛の一人が突然、「殿下、国王陛下はもうすぐ…」と告げた。
「分かっている。」
ガチャン――
カイルが話し終えた途端、ライアンは突然、カイルが目の前から消え去ったことに気づいた。そして、何かが物音を立てた。彼の剣は既に地面に突き刺さっていた。ライアンは反応する間もなく、後ろに控えていた騎士たちも呆然としていた。
(一体何が起こったんだ?!何も感じなかった!)
カイルはライアンに微笑みかけ、「そろそろ時間だ。失礼、ライアン王子、私はこれで失礼する」と言った。
呆然と立ち尽くし、カイル王子が立ち去るのを見送るライアンを見て、まだ立ち直れていない様子のライアンに、
「……殿下」と護衛の騎士が呼びかけた。
国王陛下は森の奥深くに潜む最も凶暴な怪物、トゥヴィラールを狩るために出発しようとしていた。つまり、狩りは終盤を迎えていたのだ。カイルもまた、国王を応援し、狩りの成功を助けるために同行する予定だった。それは国王の威厳を示す象徴的な行為でもあった。
「……」
(隠された才能の持ち主め、本当に厄介な奴だ)
ライアンは思わず呟き、ほとんど声に出して悪態をつきそうになった。
その後、ライアンも国王陛下の狩りを見物しに行った。いつもの通りだった。皆の助けと支援のおかげで、陛下はついに怪物を倒し、その悲鳴は空を切り裂いた。
「陛下、おめでとうございます。」
「陛下は相変わらず昔取った杵柄ですね。」
周囲の人々は国王陛下に祝辞を述べた。ライアンは遠くから貴族たちが陛下に媚びへつらう様子を眺め、カイルは作り笑いを浮かべていた。ライアンの心には不快感しかなかった。
(何という愚かな行為だ。)
遠くから彼らを見守っていた近衛騎士は、水晶を通して帝国からの伝令を受け取り、慎重にライアンに報告した。
「殿下」騎士は厳粛な声で呼びかけた。
「兄の件は進展があったか?」
「ああ。」
「さすがは兄だが…」
(私が未来の王となる。)
ライアンは拳を握りしめ、将来、誰もが認める存在になるという野心に満ちた深い誓いを心に刻んだ。




