第4章 04
「あなたはカイル王子の婚約者ですよね?羨ましい。」
私たちが話していると、突然ライアン王子が私たちのそばに現れました。
「ええ、私の愛しい婚約者です。」
殿下は微笑みながら私を紹介してくださいました。
うっ!落ち着け!
…ただの挨拶です!
考えが止まらないように、私は急いで自己紹介をした。
「こんにちは、殿下。レティシア・エヴァンと申します。」
「ライアン・クヴィラ。」
ライアン王子は明るい笑顔を見せた。
アルジャーの笑顔が奔放で気ままなものだったのに対し、ライアン王子の笑顔は、明るくもどこか落ち着いたものだった。
よく見ると、殿下は琥珀色の瞳を持ち、私と同じように天然パーマの茶色の髪をしていて、淡い赤と黒の狩猟服を身に着けていた。
陽気なライアン王子の傍らでは、雰囲気が一変していた。護衛たちの表情は対照的で、騎士たちは皆、真剣で近寄りがたい雰囲気を漂わせていた。
……少し怖い。
右の方を見ると、カイル王子を護衛する騎士は、満面の笑みではないものの、穏やかな表情で、とても親しみやすい様子だった。
「ライアン王子にはきっとたくさんのチャンスがあるでしょう?」
「そんなことは言わないでください。帝国の女たちがどれほど恐ろしいか、あなたは想像もつかないでしょう。皆、獲物を狙うような女ばかりです。」
ライアン王子は両手で降参のジェスチャーをした。
…それは、とても積極的な女の子の特徴を表しているようだ。
え?十代の頃からそんなに恐ろしいんですか?ぜひ見てみたいものです。
「それはかなり刺激的な環境でしょうね。」
殿下はくすりと笑った。
「そんな刺激は要りません。」
ライアン王子は、本当に疲れているように、大げさにため息をついた。
しかし、ライアン王子の地位、立場、そして容姿を考えれば、彼が皆の憧れの的であることは間違いない。女の子が誘惑されない方が難しいだろう。
「レティシア嬢にお会いできて、人生にまだ希望があると感じました。」
ライアン王子は突然私の方を向き、こう言った。
「…お褒めの言葉、ありがとうございます。」
それが単なる社交辞令なのか、本心からの言葉なのか分からなかったが、私はそれ相応に答えた。昨日外界と接触して以来、褒め言葉の嵐にさらされている。お世辞に対する忍耐力は格段に向上し、以前ほど動揺しなくなった。
…まるで人生で聞き尽くしたような褒め言葉の数々を、今か今かと聞いているような気分だ。
「そうだね」
殿下は微笑んだ。
私が戸惑っていると、騎士が駆け寄ってきて知らせた。
「殿下、時が来ました。」
「ライアン王子。」
ライアン王子は頷き、「倒したタウロスの数を比較してみよう?」と尋ねた。
「問題ありません。」
殿下は頷き、私のほうを見た。
「レティシア嬢、私の忠告を覚えておいてください。」
「はい、殿下。」
そう言って、二人は森の中へと入っていった。
身分が近いからだろうか?それとも、思いがけないほどのフレンドリーからだろうか?
信じられない思いで、私は二人が去っていくのを見送った。
殿下たちが狩りに出かけた後、私は皇后様の部屋でお茶をいただきました。新しく設営されたテントには、ティーテーブル、小さなテーブル、ベンチ、ベッドなど、客室によくある調度品が揃っていました。
「ふふ、レティシア、今度は私たちが待つ番ね。」
「はい、皇后様。」
皇后様の表情は相変わらず明るかったです。
殿下が私の様子を見に来てくださったとはいえ、あまり緊張する必要はないだろうと思いました。
「……」
「……」
私は皇后様と静かにお茶を飲み、デザートをいただきました。
時折、外の森から鳥のさえずりや野生動物の鳴き声がかすかに聞こえてきます。
今では、こうしてゆったりとお茶を飲めるなんて、我ながらなかなか大胆な方だと思いました。
……私は少しずつこの世界に順応しているのだろうか?
自分の順応力に感心していると、突然王妃が口を開きました。
「……女性は、恋愛となると愚かになるものですが、だからといって全てを忘れるわけではありません。」
皇后様は無表情に狩猟場を見つめながら言った。「……ただ、それを隠しているだけなのです。」
うわっ!
思わずむせそうになり、口の中のチーズタルトを慌てて飲み込んだ。
「…」
どう答えていいかわからず、私は黙り込んだ。
皇后様は恋に夢中で、過去の恨みをすべて忘れてしまったと思っていたのに、この言葉で私の考えは完全に覆された。
つまり、皇后様はまだ全てを許してくださっているわけではないのだ。
恋愛ゲームをたくさんプレイし、数々の恋愛を見てきた私だが、実は恋愛については全くの素人だ。本当に愛を知っているのは、それを経験する人だけなのだ。
突然、殿下の顔が頭に浮かび、私は慌ててそれを振り払った。
「お茶会は楽しかったでしょう、レティシア?」
「…ええ。」
皇后様は静かに笑った。
「あなたなら、私の言いたいことがわかるでしょう?」
「皇后様…」
どうやら皇后様はカイル王子を王にするという夢を諦めていないようだ。
少し胸が痛む。
…殿下に伝える機会を見つけなければ。
「ふふ、相変わらず世間知らずね、レティシア。私のカイルそっくりだわ。」
皇后様を見ると、くすりと笑われた。
「いつか、あの子の世間知らずが命取りになるわ。」
「…ライアン王子は良い刺激になるでしょうね。」
つまり、皇后様は全てをご存知だったのだ。
「…」
皇后様を見つめながら、どう答えたらいいのか分からなかった。賛成も反対も、どちらも皇后様を怒らせるだけだろう。
原作ゲームでは、殿下が王位に就くかどうかは明記されていませんでした。
お茶を一口飲んだ後、皇后様は「ふふ、心配しないで。今は余計なことはしないわ」と言いました。
「では、レティシア、あなたにお任せします。カイルのそばにいてね」
今度は皇后様はまっすぐに私を見つめ、その瞳には以前とは違って私の姿が映っていました。
「頑張ります。」
私は慌てて答えました。
頑張る。
その言葉には確信が込められていません。
将来、殿下の傍にいるのが私ではないかもしれないと分かっているからこそ、完全な確信は持てないのです。




