表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生した元公務員の俺は、 貧乏辺境伯領を教育改革で立て直す ~文字も読めなかった領民が王国を支えるまで~  作者: 芋平


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
29/33

第29話 押しつけられる改革

 翌日の議会は、異様に静かだった。


 誰もが、昨日の広場での発言を知っている。

 だが、それを直接口にする者はいない。


 沈黙は、準備だった。


「……本日の議題に入る前に」


 議長が、ゆっくりと言葉を選ぶ。


「教育行政局より」

「“責任の所在を明確にする改革案”が提出されています」


 嫌な予感が、確信に変わる。


 配られた資料に、視線を落とす。


『教育制度改革特別法案』

『責任者:教育行政局制度設計担当』


 ――俺の肩書きだ。


 内容は、整っている。

 あまりにも。


「再審制度の恒久化」

「教師資格の全国一律管理」

「教育内容の統一指針」


 そして、最後の一文。


『本制度により生じた不利益については、責任者が説明責任を負う』


 説明責任。

 処罰ではない。

 だが、守られもしない。


「……巧妙ですね」


 隣席の官僚が、低く呟く。


「あなたが“責任を取る”と言った」

「だから、全部あなたの名で出す」


 否定できない。

 俺自身が、名乗ったのだから。


 エドガーは、表情を変えずに言った。


「あなたの発言を」

「制度に落とし込んだだけです」


「逃げ道は?」


「ありません」


 即答だった。


 議場で、意見が飛ぶ。


「責任者が明確で、良い」

「これで、混乱は収束する」


「いや」

 別の声。

「一人に背負わせすぎだ」


 賛否は割れる。

 だが、流れは一方向だ。


 ――通す気だ。


「……発言を」


 議長が、俺を見る。


 立ち上がる。

 視線が、集中する。


「この法案は」

 静かに言う。

「秩序を守るためのものです」


 ざわめき。


「ですが」

 続ける。

「秩序は、責任を一人に押しつけることで」

「守れるものではありません」


 正面から、切り込む。


「私が、説明責任を負うことは」

「構いません」


 どよめき。


「しかし」

 声を強める。

「判断責任まで、私一人に集約するなら」


 一拍。


「それは、改革ではなく」

「責任の放棄です」


 議場が、静まり返る。


「制度は」

 続ける。

「多くの判断の積み重ねです」


「だからこそ」

「判断の記録を、残すべきだ」


 資料を掲げる。


「誰が、どの段階で」

「何を理由に、決めたのか」


「それを」

 言い切る。

「公開条項として、追加してください」


 ざわめきが、一段階大きくなる。


 それは、痛い。

 官僚にとっても、議会にとっても。


 エドガーが、ゆっくりと息を吐いた。


「……あなたは」

「本当に、逃げませんね」


「逃げたら」

 即答する。

「教育は、ただの道具になります」


 短い沈黙。


 議長が、木槌を打つ。


「……修正案を含め」

「継続審議とする」


 一気に、空気が緩む。


 否決ではない。

 だが、即決もされなかった。


 廊下に出ると、トーマが駆け寄ってくる。


「……止めましたね」


「いいや」

 首を振る。

「遅らせただけだ」


 それでも、意味はある。


 その夜。

 執務室で、一通の匿名文書を受け取る。


『あなたが責任を背負うなら』

『我々は、判断を外から支える』


 差出人は、ない。


 だが、内容から分かる。

 官僚の中にも、同じ危機感を持つ者がいる。


 同時に、別の報告も届いた。


『学んだ側の一部が』

『独自の改革案を準備中』


 ミレイユの動きだろう。


 責任を名乗った瞬間から、

 俺は、ただの官僚ではなくなった。


 矢が、集まる。

 支えも、集まる。


 次に来るのは、

 “提案”ではない。


 **選択を迫る、本当の改革案**だ。


 それを、誰が、どこから出してくるのか。


 嵐の前の静けさの中で、

 俺は、深く息を吐いた。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ