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第81話 飲む覚悟はあるか?


「沈黙は肯定なんだっけか? は? マジで偽モンかよ!?」


「い、いや。そこまで疑われては、次の言葉に悩んだだけだ。そもそもその金塊は挨拶代わりと言ったはず。もう貴公のモノだ。気の済むまで調べて構わない」


「そ、そうなのか? やっぱり本物か……だが、そうすると、まるで俺がガキどもをこの金塊で売ったみてえじゃねえかよ。奴隷商売だけは手を出さなかったのによ……」


「それとこれは話が別……いや、どちらも我々からの支援だ。革命資金は手に入るし、子供たちも安全なところに避難させた。不都合はないと思うが?」


「アンタの言葉だけじゃな……なあ、もう一つ聞かせてくれ。何故俺のところに話を持ってきた? 国に一泡吹かせたいって考えてるスラムの顔役なら他にもいるぞ?」


「貴公も自分で言っていたろう? 奴隷を商売にしてなかったからだ。奴隷の必要性云々は関係ない。フィーリングの問題だな」


「……ちっ、つまんねえことまで調べてんじゃねえよ」


「(オッサンのツンデレ、誰得だよ……)では、我々に協力してくれる気になったかね?」


「……もう一つ条件がある」


「何かね? できることとできないことがあるが」


「ガキどもに会わせてくれ」


「それは……(わーさん、どうする?)」


「ろくに面倒も見れなかった俺だが、アンタのところでここにいるよりマシな暮らししてるのがわかれば、それだけでアンタたちを信用できる」


「距離の関係で今すぐというわけにはいかないが、代表で一人二人をここに連れてくることはできるだろう。だが、貴公はここのスラムの子供全員の顔と名前を知っているのか? 最低顔を知らなければ、そんなつもりはないが、我々のグループ内の子供を使って貴公を騙すこともできるのだぞ? 本物を会わせても、無理矢理幸せそうな演技をさせられていると疑われてもキリがない」


「疑われるようなマネしてるのかよ!?」


「そうではない。疑ってばかりの目には真実は映らない、ということだ。人間は自分が見たいモノしか見えない、ともいうな。貴公は虐待の心配をしているようだが、『無い』ことの証明は不可能だ。特に疑り深い人間に対してはな。どれだけ事実を見せても、『きっと裏では……』とか『ウソに違いない』とか際限なく疑いだす。それこそ確証もない、邪推というものだよ」


「邪推はそっちだろうが。俺はそこまで疑り深くはねえぞ? 聞くと見るとじゃ大違いだってわかってる程度だ。一目見れば納得してやるよ」


「……そうか。では日を改めて代表の子供を連れてこよう。顔を知っている子供の名前を言いたまえ」


「それなんだが、ガキの顔は手下に確認させる。それよりも、アンタの秘密の村ってところに連れて行っちゃくれないか? そのほうが手下たちも納得しやすいはずだ」


「それが条件になるのなら無理だ」


「……まさか村があるってのはウソじゃ……いや、条件にしたから無理? おいアンタ、どういう意味だ?」


「順序の問題だ。貴公の条件だと、先に村を視察してから我々に協力するかどうかを判断することになるが、我々はそんな危険な条件を受け入れるわけには行かない。どうしても村に行きたければ、正式に我々の協力者になってからにしてもらいたい」


「裏切って情報を流したら困るからか? だが、そんな理由なら、先だろうが後だろうが、裏切る時は裏切るだろうよ。アンタも人に説教垂れたクセに疑り深すぎじゃないか?」


「残念だが、我々の協力者になるというのは、口先だけや契約書にサインするだけの行為ではないのだ。もっと現実的で物理的なことなのだ」


「小難しいこと言うんじゃねえよ。俺にどうしろってんだ」


「ここからはもう少しだけ我々の秘密を開示しよう。なに、仮に話し合いが物別れに終わっても、頭のおかしい研究者がわけのわからん話をしていた、で済む。証拠は何もないからな」


「御託はいい。さっさとその秘密とやらを言え」


「まずは復習だ。話は遺跡のことに戻るが、そこで見つけた発掘品から、遠い過去には魔力のない文明があったと推測されること、近い将来魔力が消失する可能性があるということは理解しているな?」


「ああ。信じてはいないがな。大体、この紙にも何年後ってところが空白じゃねえか」


「それはそれで構わない。正確な年数については研究中とだけは言っておこう。それで、私の研究は、魔力消失現象への対策として、魔力を必要としない文明の再現だ。ここもわかるな?」


「ああ。言ってることはわかる」


「その対策のため、魔力枯渇症の対処薬も開発した。覚えているか?」


「忘れてたまるかよ、そんな神級ポーションみたいな薬をよ! マジで言ってるのか?」


「マジだ。いや、本当のことだ。と、ここまでが復習の範囲だ。そしてこれからが秘密の話だが、私の研究のために作った、元廃村の実験のための村だが、ああ、これからは単に『廃村』と呼ぶぞ? その廃村はある特殊な道具で魔力を完全に取り除いている。大昔の環境の再現だな」


「はあ!? そんなところ、人が住めるわけがねえだろうが!」


「その通り。だからこそ対処薬なのだ。今のところ薬を使用した者に不具合が出たという報告はない」


「くそっ! ガキどもはそんな危ねえ実験させられてるのかよ! 魔力枯渇は下手すりゃ死にかねないんだぞ!」


「そんなことは貴公に言われずとも知っている。研究者だからな。そして、研究者らしく、『実験に犠牲は付き物だ』などとは言わない。安全性はクリアしているつもりだ。子供たちの実験とは魔力なしで普通に生活できるかどうかについてだ。今更薬の効果を試す段階ではないよ」


「そんなことわかるはずないだろうが! くそ、やっぱり俺がこの目で確かめねえと……」


「残念だが、貴公の反応が一般的なのだろうな。だからこそ廃村の存在は公表するわけにはいかない。それに、貴公たちが廃村に行っても無意味だぞ? 子供たちの様子を視察する前に、それこそ魔力枯渇で死んでしまうかもしれんぞ?」


「くっ、何て危険な村を作りやがって……じゃ、じゃあ、その薬とやらをくれ。そうすれば俺も村に行けるんだろ?」


「それが我々の協力者になる条件のキモなのだ。言っておくが、いや、先ほども触りだけは説明したはずだ。その薬はある意味『毒』だと」


「安全って話はどこに行った!?」


「命に別状はない。魔法使いにとっては、毒よりも恐ろしいものになるだろう。聞く覚悟はできたか?」


「つべこべうるせえ! さっさと言えよ! 聞かなきゃ判断できねえよ!」


「では教えよう。その薬、便宜的に『魔力枯渇症対処薬』とは言っているが、副作用として、一切の魔法を使えなくなる。どうだ? 飲む覚悟はあるか?」


翔太郎の説明を聞いて、エンドは固まってしまった。


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