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第80話 助けてー、わーえもん!


 大物ムーブの演技を続けた翔太郎はストレスが蓄積し、何かハッチャケてみたい衝動に駆られたが、脳内チップを通してAIに自重を求められた結果、無言になってしまった。

 そこをエンドに怪しまれたようである。


「……候補として、もともと魔法技術の低い国も挙げられたが、結局は世界中で魔力が消失するのだ。ならば魔法が発達した国をターゲットにするのも同じだことだと考えたのだ」


「何しれっと話を続けてやがる。ガキの話はどこ行った?」


 エンドは今度は誤魔化されてくれないようであった。


「我々が信じられないか? まあ、そうだろうな。私もいきなり金塊を積んで協力しようなどとのたまいつつ、偉そうに眉唾な話を聞かせて代わりに実験に協力しろと言う人間など信用できんだろうな。だが、それではここを訪ねた意味もない。どうだろう? お互い秘密にしたいことは秘密のままで利用し合うと考えればいいのではないか? 貴公は魔法至上主義のやり方が気に食わない。我々は魔法どころか魔力のない世界について危惧している。協力はできるのではないかな?」


「どう見てもアンタらのほうが秘密が多いだろうが。ガキのことは言わないつもりか?」


「研究者の私が言うのもおかしいが、世の中には知らないほうがいいこともある。知ってしまえば面倒なことになるぞ?」


「そうはいかねえ。俺の縄張りに手を出されて黙ってられるか!」


「縄張りか。では聞くが、まともに生活ができない子供がいるのはこのスラムだけなのかね?」


「ああ?」


「他の国、他の街のスラムの子供たちも貴公が面倒を見ているとでも言うのかね?」


「そんなわけねえだろうがよ」


「それが答えだ」


「……」


 大物ムーブ継続中のため、翔太郎自身も何のことか意味のわからない回答になった。

 しかし、即興でシナリオを書いているAIはともかく、エンドも何か思い至ったようである。


「革命後、国の再建を果たした後ならともかく、今の段階で他の国に手を出すのはリスクが大きすぎるのではないかな? 貴公はまず革命に注力すべきだろう」


「……マジで他の国のスラムからもガキを攫ってるのかよ……いや、それとこれとは話が違う。俺の縄張りで勝手なコトしてんじゃねえよ!」


「(ちっ。しつこいヤツだ。助けてー、わーえもん!)……縄張りというが、貴公と我々が協力すれば、縄張りに手を出したことにはならないだろう? 身内のようなものだ」


「そんな言葉遊びで誤魔化されるか! オトシマエはつけさせてもらうぞ!」


「……落とし前というが、カネで気が済むなら目の前にあるだろう? 貴公は一体どうしたいと言うのだ? まさか子供たちを元の食べるものも着るものもない、最低の環境に戻せというのではないだろうな?」


「そ、そんなことは言ってねえ。俺はただ……」


「他のスラムも劣悪な環境だろうが、特にこの国は戦禍に見舞われる公算が高い。おそらくは、そう考えた親切な旅人が子供たちに教えたのだろう、食料が豊富で安全な村がある、とな。このままでは飢え死ぬだけだと子供でも理解できる。騙されてもいいからとスラムから逃げ出したのだ。そのことで子供や旅人を責めるのはお門違いではないかね? 責められるべきはこの国の大人だろう? その大人の一人である貴公はスラムの子供全員を飢えと戦乱から守ってやれると誓えるのかね?」


「……」


「沈黙は……って、この件《くだり》はもう要らんわ。ああ、こっちの話だ。ともかく、経済的に子供たちの面倒を見られなかったのは理解できる。だからそのことで責めたりはしない。だが、同じ理由で今更縄張りどうのこうので子供たちへの支配権を主張されても我々が認める必要もない。先ほども言ったが、貴公は革命に注力すべきだ」


「……ガキどもは無事なんだろうな? 惨い実験材料にして使い捨ててるんじゃねえだろうな?」


「飢え死にと戦乱に巻き込まれて殺されるよりは遥かにマシだろう? 話が逸れすぎた。これ以上子供のことで話すことはない。貴公も、情に厚い男をアピールするなら、逃げ出した子供たちにではなく、これから増えるであろう戦災孤児たちにしてやってくれ。そのほうが効果的だ」


「そんな理由じゃねえ! お前たちが怪しすぎるって言ってるんだよ!」


「そればかりは今までの説明で判断してもらうしかない。これ以上の情報開示は、貴公が我々の協力者になったと確認されなければ、不可能だ」


「……つまり、仲間になればガキどもに会えるんだな?」


「何故子供に拘る? 今更すぎるだろう」


「こっちにもメンツってモンがあるんだよ! そりゃ、今まで放っておいたさ。だが、ウチのチンピラにはガキに手を出さねえように言ってあるし、時々は仕事も回してやったこともある。人攫いも入れねえようにしてるんだ。それをまんまと攫われて、この商売やっていけるか!」


「メンツか。くだらんと吐き捨てたい気もするが、確かにこれから革命の旗頭になるのだから、メンツは必要だろうな。だが、表面上だけでいいのならどうにでもなる。何度も言うようだが、我々と協力するのならば、だ」


「……本当なんだろうな?」


「無論だ。要は子供たちがいなくなったのは貴公の失態ではなく、秘密裏に戦火から子供を逃がしたためだ、ということにすればいい」


「そんなウソくせえ話、誰が信じるかよ」


「ウソではないさ。貴公が我々の協力者となれば、我々もできる限りの支援はする。子供たちの脱出などもな。時期が前後するのは、敵に見つからないようにするために、貴公の部下たちにも秘密にしていたから。あるいは、我々に協力する条件として、秘密裏に子供を逃がすこと。それが本当に達成されるかわからなかったから今まで周りに説明しなかった。ほら、理由はいくらでも付けられる」


「……てめえは詐欺師か。このインゴットも偽物じゃねえだろうな?」


「……(わーさん、逆に疑いが増した気がするんだが……)」


 裏社会の実力者が舌を巻くほどのシナリオを即興で書いているAIの優秀さを改めて頼もしくも恐ろしいと感じる翔太郎だった。



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