第78話 自己嫌悪に陥りそう
「立ち話もなんだから、座りたまえ」
翔太郎の屋敷ではないが、大物ムーブの演技と主導権を取るため敢えて翔太郎から席を勧める。
エンドことエドワルト・クレッセンは渋い顔をしながらも素直に座る。
二人は金塊の山を挟んで対峙した。
「……それで、俺に何の用だ? 俺のことは調べたようだが、貴族どもへのツテだったら無駄だぞ? アイツらは俺の敵だ!」
「それは『中央の』と冠が付くのだろう? 貴公のような没落貴族や不遇に甘んじている貴族も多いはずだ」
『貴公』って、ラノベの中の貴族かよ! とシナリオを書いたAIにツッコミたいのを気力で抑える。きっと船に帰れば黒歴史に悶え、床を転げまわることだろう。
「ちっ……木っ端貴族でいいなら、確かにツテはないこともない。結局それが目当てか?」
「いや、話の流れだ。無論そのツテを含めてが貴公の実力であるのは間違いないがな」
「じゃあ何だよ? もったいぶらずにさっさと言いな」
シナリオのせいではあるが、どうも大物の振りをするともったいぶった言い回しになる。そこを元貴族だったらしいエンドに指摘されるのも妙な気もするが。
「既に言ったはずだが? ああ、こうして面と向かって話さねば信じてもらえぬということか。ではもう一度始めから説明しようではないか」
「だから、さっさと言ってくれ」
どうやら翔太郎の大物ムーブは融通がきかなそうである。内心焦りながら翔太郎は話を続けるのであった。
「革命を起こすのだろう? それに協力しようというのだ。主に資金面でな」
「何故そのことを……いや、具体的な計画を立ててるわけじゃないから、その程度ならバレても構わないか……だが、何故だ? この国に恨みでもあるのか? 俺のような没落貴族ではあるまい?」
「ふむ。腹の探りあいは苦手なのだ。こちらが開示できるだけの話を聞いて、それで判断してくれぬか?」
「……いいだろう。何も聞かずに飛びつくほど馬鹿とは思われたくはないし、胡散臭いからというだけで追い出すほど高潔な生き方はしていないからな」
「それはよかった。では長い話になるが聞いてくれ。私たちはとある研究グループなのだ……」
優秀なAIよって書かれたシナリオ。それを、脳内チップの補助を借りながら翔太郎は語りだした。
実は、AIはもっと単純に、『洗脳』計画を却下されても、力押しの『魔力除去』を提案していた。翔太郎はその案にも待ったをかけていた。どうせならプタルカにもっと嫌がらせをしたい。翔太郎だけで惑星改造するよりも、この星の住人、つまりはプタルカの信者たちに自ら『魔力除去』をさせたほうがプタルカも飼い犬に手を噛まれた気分になって怒り狂うだろう。そう予想した。AIはオーナーの意向を汲み、脚本を練り上げたと言うわけだ。
「我々の研究は多岐に渡るが、あるチームが未発見だった遺跡を発掘し、中から古い石版を見つけ出したのだ。現物はここにはないが、写しと翻訳したものがある。まずはそれを見てくれ」
翔太郎はロボットに命じ、2枚の紙を取り出させる。石版も捏造してあるが、写しという設定なので新品で問題ない。この世界はお約束の羊皮紙だけではなく植物紙も流通しているので、金塊の山の前では多少品質が高いことはスルーされた。
「……こっちは全く読めんが、この翻訳とやら、本気でこんなこと書いてたのか?」
エンドが目を通した翻訳文にはこんなことが書かれていた。
『……この世界はいつの頃からか魔力に侵されるようになってしまった。人々は変質し、魔法などという自然の摂理に反する力を得た。だが、獣もまた魔物となり凶暴化した。人と人が争うばかりだけではなく魔物との争いも増える。これでは文明の進歩は望めまい。だが、永遠にこのままということはないだろう。始まりがあれば必ず終りがある。魔力が突然生まれたのなら、消えることもあり得る。筆者の計算によると、世界の大きさから見て○○年後にはおそらく魔力が尽きるはずである。それまで人類が生き延びることを祈る。また、生き延びていたとしても、魔力消滅後更なる苦難が待ち受けているだろうが、乗り越えられることを祈る。 ○○研究所主任アーテラス』
最後のアーテラス云々を含めてすべて捏造だ。
だが、SF派の神から見れば内容にウソがあるとはいえない。この世界のほうこそプタルカによって手を加えられているはずなのだから。
エンドは胡散臭そうに翔太郎を見た。
それはそうだろう。こんな与太話、誰が信じるというのか。地球なら、ネットに飽和しているネタを切り張りしたモノだと思われそうだ。
だが、翔太郎は演技を続ける。想定の範囲内だ。(古い)
「信じられないか。だが、否定するだけの根拠はあるのか? ただ否定するだけならそこらのチンピラでもできるぞ? 残念ながら我々にはその根拠がなかったのだよ」
「……否定できないからって、信じるのか?」
「そうではない。検証が必要だということだ」
「検証か。面倒臭い話だ」
「それが研究者というものだ。話を続けるぞ? これはきっかけに過ぎないからな」
「まあ、これと革命と、どう関係するのかわからねえからな。だが、手短にしろよ。俺を煙に巻こうとしても無駄だからな」
「元魔導貴族を騙そうとは思わんよ」
「けっ、落ち零れへの嫌味かよ。聞いてほしけりゃ、さっさと続けやがれ」
「わかった、わかった」
騙そうとは思わないとは、どの口で言っているのだろうかと、自己嫌悪に陥りそうな翔太郎であった。
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