第75話 『ザマア』はあくまでも手段の一つに過ぎない
『神聖タルカ教国』『シンラ魔導王国』
この2国は、翔太郎が『身勝手な権力者たちすべてにザマアしてやりたい』という暗い欲望とは関係なく、プタルカを誘き出すために、そして惑星改造のテストケースとして混乱が起こることが決定付けられた可哀想な国々だ。
何故この2国なのか。
それは、前者はプタルカを奉っている宗教の代表国だからという、国民・信者からすると理不尽極まりない理由からである。どちらにしろプタルカの排除は決まっているのだ。大人しく棄教するか、居なくなる神に祈りを捧げ続けるのか、はたまた殉死するのか。翔太郎はどうでもいいと考えている。惑星改造のテストができて、ついでにプタルカが信者の危機だと言って出てきたらオールOKだ。AIも翔太郎も結構非道である。
後者は、この惑星にある文明は多かれ少なかれ魔法に依存しているが、その中でも特に魔法文明が発達している国だからである。
惑星改造のテストも兼ねるので、始めは逆に魔法文明が遅れている地域からにしようという意見もあったが、それだと惑星全体に与える影響も少なく、プタルカもわざわざ出てこないかもしれないという反論があったため、それならば魔法が使えなくなって一番影響が大きそうな国を選んだという経緯がある。
もちろん、魔法至上主義だから差別はありまくりだ。名目上実力主義ということになってはいるが、国の上層は特定の家門に独占され、ぽっと出の平民魔法使いの出る幕はない。そもそも、働かずに魔法の勉強や修行ができるなら金持ちの方が有利に決まっている。才能はあってもそれを伸ばす機会のない庶民はいつまでも下に見られるのだ。
そんな事情もあるので、本来の目的とは違うが、翔太郎はやる気に満ちている。得意顔している人間が一夜にして何もかも失うカタストロフィー。いわゆる『ザマア』。これを見て喜ぶなど少々危ない趣味のようだが、言い換えれば翔太郎も普通の人間だということだ。宇宙要塞が手に入ったからといって、いきなり聖人になるわけがない。しかも神サマのお墨付きだ。多少のヤンチャは許されるのである。
お墨付きといっても、ヤンチャには限度というものがある。
要は『目的と手段を履き違えない』ことである。翔太郎の場合『ザマア』するのはいいが、『ザマア』はあくまでも手段の一つに過ぎないことを理解し、それに固執しないことが肝心だろう。
更に言うなら、目的も見方を変えれば別の大目標のための手段に過ぎない場合が多い。つまり『Aという目的のためBという手段を採るが、Bを遂行するためにCを行う必要がある』という具合に目的と手段が延々と連鎖しているのだ。BとCを見れば確かに目的と手段の関係だが、Bだけに拘って『目的のために手段は選ばない』などと過激な方法を採った結果、Bは成功したものの、肝心のAが失敗に終わることになったら、これぞ本末転倒である。
例えば『ゴ○ラが東京湾に現れた! 日本を守らなければならない! 条約に基づいてA帝国に救援を求める! ヤン○ーども、頼んだぞ!』『イエーイ、OK! 任せろ! ポチッとな。ドカーン!! ハッハッハ!! 見たか、水爆を越えるスーパー爆弾の威力よ! 半径1000キロ吹っ飛んだぜ! これでゴッディーラも生きちゃいないだろうよ! ……おや? ジャ○プの反応がないぞ? 礼の一つもないとは、これだからイエ○ー○ンキーは……』などということになったら目も当てられない。
『目的のために手段は選ばない』というのは、追い詰められた人間の切羽詰ったセリフを除けば、『惰性でしかない常識』『権力に阿った忖度』『情報操作された風潮』などに踊らされて無駄に視野を狭められないようにしようという、いわば『臨機応変』であり、くだらない反対意見や非難に対抗しようという心構えと考えていい。言葉通りの『何をしてもいい』ではないのだ。
むしろ、目的遂行には様々な条件が付随していることを見落としてはならず、手段は選ばなければならない。当たり前のことである。
だが、すべての条件がクリアされれば、その条件の範囲の中で『何をしてもいい』ということにはなるだろう。言葉というものは難しいものである。
つまり、翔太郎は最終目的である『プタルカ討伐』を念頭に置いて、依頼された『プタルカの誘き出し』をしなければならない。そのための手段が『敵惑星でプタルカの我慢がならないほどの騒ぎを起こす』ことになるのだが、さらにその騒ぎをどうやって起こすかを考えなければならないのだ。神々の力や宇宙要塞の力を使えば惑星ごと破壊するのは容易かもしれないし、大騒動ではあるだろうが、それではプタルカは完全に逃げ出してしまう。挙句は派閥間の抗争に発展する恐れが多分にある。
ゆえに手段は慎重に選ばなければならない。
幸いというか何というか、翔太郎は人間社会という檻から解放されている。無論、神という存在が確認された以上は完全な自由というわけではないが、形式上どの派閥にも属していないことになっている。何度も話に出てきた『星間連盟』にも未加入だ。
ならば、物を言うのは個人の力のみである。それはアーテラス謹製の宇宙要塞があるので心強いことこの上ない。惑星の一個や二個、物の数ではないだろう。
だが、翔太郎が今の環境に身を置くようになって1年足らず。未だ地球の、日本の価値観に縛られたままである。
だから、すべての条件をクリアして提案された『洗脳』作戦を、有効だとわかっていながら却下してしまうのである。
さらにこの非日常的環境での行動規範は、つい『ラノベ』『アニメ』『ゲーム』に準じてしまいがちであった。
せっかくファンタジー世界&SF世界なのだから、冒険活劇をしてみたい、という発想である。
「第一目標は『シンラ魔導王国』とする。そこの反政府グループにコンタクトをとるぞ。革命だ!」
という方向に舵が切られるのであった。
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