第70話 魔法でパーッと解決できたらいいのに
AIの献策により、第三層に孤児院となる建物を造るだけでなく、治療槽の増設と保母さん保父さんロボットの製造、子供服などの日用品、消化のいい病人食の大量生産が始まった。
すでに惑星プタルカの人間すべてにはナノロボットが取り付いていて生活環境調査などは終わっている。あとはAIからのゴーサインが出るのを待つだけだ。
「子供はストリートチルドレンを優先してくれ。孤児院にも入れてない子供が対象だ。それから、身分に関係なく虐待を受けている子供もな。ああ、貴族の子供としては冷遇されているけどメシは食えてるってのはテンプレとしてはおもしろいがしばらく我慢してもらおう。直ちに命に関わる肉体的な虐待のほうは問答無用で攫っていい。神にも文句は言わせない」
『わかりました。そのように手配いたします』
「それから、両親がまともでも経済的な事情や医療技術の問題で子供が苦しんでる場合、どうしたらいい? こっそり治療できるか?」
『可能です。大半が栄養失調とそのために抵抗力を失ったことによる感染だと判明しております。ステルスで栄養剤と治療薬を投与すればある程度回復するでしょう。しかし、症状によっては治療槽を使用しなければならない場合もあると考えます』
「要相談ってヤツだな。どうしようか? 無料で治療するから子供を引き渡せって言われてまともな親が素直に応じるかな? 説得が間に合いそうになかったら家族ごと拉致した方がいいか? いずれ騒ぎになりそうだけど、子供だけ攫うよりはマシか? 攫われた病気の子供が元気になって帰ってきたら、目立つだろうし、金の亡者を引き寄せそうだな。よし、本格的な介入まではコッソリやろう。子供の病気を苦にして夜逃げしたって噂を流せば追求はされないだろう。それよりも、最終的には人間だけじゃなく魔物も動植物も遺伝子治療するんだよな? 全部ここに連れてくるのも大変だし、治療施設を惑星に造るか? 何とかナノマシンだけでその場で治療できないか?」
『オーナー。焦りすぎです。惑星改造については、悪神プタルカ成敗の報酬という形のはずです。今はそちらに注力すべきだと進言します』
「……そうだったな。いや、忘れてたわけじゃないが、たしかに焦りすぎてたわ。スマン」
『いえ、問題ありません。その上でオーナーの疑問に答えますと、現状でも現地でのナノマシンによる遺伝子治療は可能です。ですが、今運用しているナノマシンは汎用のため治療効率は非常に悪いです。すべてを一ヶ所に集めて人間一体を治療できる程度でしょう。逆にいうと人間一体にナノマシン一体を対応させていれば治療に数年かかります。ですが、それでは億単位のナノマシンが本来の任務を遂行できず本末転倒となります』
「わかってるよ。今は情報収集とプタルカとの戦闘が大事なんだよな。だが、死に掛けてる子供はほっとけないからな。そこは頼むぞ?」
『はい。その程度でしたら、現状の設備で対応可能です。お任せください』
「ああ、頼む。それにしても、そうか、ナノマシンにも治療特化とか考えるべきなのか。一個二個作るのは簡単でも惑星全域用だと大変だなこりゃ」
『はい。ですので、悪神との決着が着き次第製造に取り掛かる予定です』
「そうか……って、何で俺がこんなことで悩まなきゃいけないんだろうな。魔法でパーッと解決できたらいいのによ」
『オーナー、お言葉ですが、魔法などという理不尽な力を頼みにするのは如何なものかと存じます』
「……謎科学だって十分理不尽だと思うがな……いやいや、よく考えたらアーたんも神なんだから、魔法じゃなくても神の力でパーッとできんだろ?」
『オーナー。可能かもしれませんが、無駄な希望かと……』
「う……確かに……『できるけど、疲れるから嫌』とか『面倒だからヤダ』とか言われそう……そういえば『忙しいから任せる』って言われてたわ」
『はい。すでにオーナーが責任者です。諦めてください。実務は私がしますのでオーナーに負担はありませんよ?』
「……わかってるよ。ったく、エライのに見込まれたもんだな。ま、惑星改造にどれだけ時間がかかるかしらんが、俺が常駐しなきゃならないってことはないんだな? だったら気楽に考えるか。宇宙を旅しながらたまに確認に来るとしようか」
『はい。それでよろしいかと』
「よし。じゃあ話は終わりだな。進捗はどうだ?」
『はい。言語、文化方面のデータ解析は終了しております。社会情勢もほぼ完了して、現在は推移を監視中です。残るはやはり医療関係です。ウイルスや細菌の数も問題ですが、特定地域の固有種への対策も考えなければなりません。オーナーがどうしても惑星で活動したいというのであれば、その前に動物実験とオーナーの培養細胞での生理反応実験が必要になります』
「……そういや血を採られたな。あれを培養して実験するのか。まさか俺のクローンを作るとか言わないよな!? SFのお約束だけどよ」
『実験にクローンである必要はございません』
「……創れないとは言わないんだな、やっぱり……」
『オーナー。医療関連のデータが解析終了しました。これより現地での実験に移ります。ご確認ください』
謎科学の存在は認めているものの、未だ翔太郎の中の常識との技術格差には慣れないことに黄昏ていると、AIから待ちに待った報告があった。
これで更に一歩進めると顔を綻ばせる。
「よし! 現地に施設なんて造ったら今度こそプタルカが出てくるかもしれん! すぐに対応できるように気を引き締めていこう!」
『了解しました。実験艦、敵惑星へステルス状態のまま転移します』
スクリーンには、予め目を付けていた、無人島が映し出されている。ここが第一拠点となる。
そして、翔太郎にもわかりやすいように、ステルス状態を画像処理して目に見えるようにされた中型宇宙戦艦が無人島海岸に転移した光景が映し出された。
翔太郎の乗艦である中型船うーさんの中は緊張に包まれる。
果たしてプタルカはどう出るのだろうか?
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