第59話 何ということでしょう!
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週一投稿になります。
「船長! ゴブさん!」
翔太郎は中型宇宙戦艦『うーさん』から転送されてきた二体のロボットに駆け寄った。
「ゴブさん! 首は!? ちゃんと付いてるか!? 船長! 俺が穴を開けたところ、直ったか!?」
「オーナー。ご心配いただきありがとうございます。このとおり再構築していただきました。新品のボディなので状態は極めて良好です」
プタルカに乗っ取られたロボ船長に首を物理的に刎ねられたゴブリンロボが凶悪そうな顔に似合わず丁寧に挨拶する。無論表情は仕様であることは翔太郎も慣れているので素直に復活を喜んだ。
「オーナー。敵に乗っ取られたことで危険な目に遭わせてしまい申し訳ありませんでした。本来なら廃棄処分が適当なところ、こうして再構築させていただき感謝に耐えません」
「おお、船長。身体はともかく、プタルカに乗っ取られた影響はないか?」
一番心配だったのは船長のことである。AIがウイルスにやられていたら大変だ。
「はい。いいえ、悪神プタルカは魔法でボディを操っていたようで、プログラムには影響はありませんでした。念のため何重にも検査をしておりますのでAI自体に問題はありません」
「そうか。それはよかった。しかし、魔法か。謎科学もそうだが、神の癖に魔法を使うって、チートというよりもズルいよなあ」
『それに関してですが、対策はございます』
「うん? この声は、うーさんじゃなくって、わーさんかな?」
脳内通信は中型宇宙船・うーさんとは何度もしていたので、声の違いがわかる男・翔太郎であった。
『はい。今後は悪神プタルカ対策として全機体に小型魔素吸収装置を搭載予定です。コードネーム・うーさん及び配下の機体は再構築時搭載済みですので二度と魔法による乗っ取りは起こらないものと推測できます』
「さすがわーさん。卒がない。しかし、まあ、相手は仮にも神だからな。力技に出られたらどうしようもない。そこはアーたんに頑張ってもらおうか。搦め手だけでも防げるなら御の字だな」
そう。相手は神を名乗り、そこは翔太郎も認めざるを得ない。像と蟻よりも力の差は大きいのだ。半分諦めている。もう半分はアーテラスに対する期待というところだ。
感動の再会だったが、AIたちは淡々と仕事をこなしていた。
中型宇宙船・うーさんが第三層に下りてきたのは何も翔太郎に会いに来ただけではない。翔太郎の発注したマイホームの完成品を輸送して来たのだ。
崖の上方に停泊した中型宇宙船うーさんの格納庫の扉が開き、そこから建物が丸ごと運ばれていく。すでに翔太郎が理解を放棄した重力操作による搬送である。
地上部は一階平屋だが、地下二階分が一体化しているのでかなりの大きさではあるが、中型宇宙船と対比させるとまさにマッチ箱のような印象が拭えない。翔太郎は素直にそう感じたのだった。
マイホームは音もなく、予め整地されていた崖上の大穴に嵌め込まれた。
中型宇宙船がミスマッチではあるが、崖上の一軒家の完成である。
「おお! もう入っていいか?」
『最終調整が終わるまで、もう少しお待ちください』
お預けを食らい、しょんぼりする翔太郎であった。
数十分後、AIからの完成宣言が出た。
翔太郎はいそいそとマイホームに向かった。
立地の関係で玄関は北向きだが、一応南国であるからそれもアリかと考える。
平屋としては大き目の設計。黒の瓦屋根が武家屋敷を思わせるが、壁や玄関の趣は洋風の感じがしてその和洋折衷の塩梅が絶妙だ。もしかしたらアーテラスの故郷のオリジナルデザインかもしれないが、AIのチョイスは翔太郎にも好評だった。
これで俺も一国一城の主か、などと的外れなことを考えながら、満を持して玄関の扉を開ける。
何ということでしょう!
リフォームではなく完全新築なのだが、翔太郎にはそんなナレーションが聞こえてきた気がした。
玄関は翔太郎のリクエストどおり、和風の上がり框があり、靴を脱いで屋内に入るスタイルだ。当然床はフローリングである。
スリッパも備え付けられていたが、翔太郎は敢えて裸足で入るのだった。
玄関から南に廊下を進むとすぐに扉がある。翔太郎のリクエストは平屋の3LDKなのでこんなものだ。ただしどの部屋も広めに造られており、日本では豪邸の内に数えられるのではないかと庶民の翔太郎は感じる。
南側はダイニングキッチンになっていてテラスも付いている。海を眺めながらの食事は、例え一人きりでも楽しみだ。
また、西側は同じくテラスの付いた風呂場になっている。露天ではないが、窓を開ければ露天気分も味わえそうだ。例え一人きりでも(ry
東側は個室が三つ。今になって誰が使うのかと悩んでいる。
ただし、玄関に近い個室は地下室の入り口があって、実質2LDKらしい。いや、地下室も含めれば5LDKぐらいになるんだろうか。
その地下室も下りてみた。ここは靴を履いていくタイプ。玄関脇から直接入れる。
この屋敷には似合わないSFチックな装置が鎮座している。中型宇宙船うーさんの中で散々見てきた転送装置である。
「これ、もう使えるのか?」
マイホーム見学にもキチンと同行しているロボットたち、メイコに船長、ゴブさんに質問してみた。
「はい。行き先指定さえすればどこにでも。ただし、行き先の環境がオーナーにとって不適切な場合は許可されませんが」
「不適切?」
「重力、大気、気温などです」
「ああ、なるほど……」
ここは宇宙要塞。第三層は地球とほぼ同じ環境ではあるが、それ以外の場所は宇宙なのだ。何を当たり前のことを、と思うだろうが、謎科学を使えば移動も簡単。事故も起き易いというもの。いきなり真空に転移させられてパニクる自分を想像してしまい身震いする翔太郎。転移するときはロボットたちに確認してからにしようと心に決めるのであった。
見学も終り、リビングに備えられていたソファーに座る。いや、行儀悪く寝そべった。
「うーさんも直ったし、家もできた。後は何をしようか?」
翔太郎はソファーでゴロゴロしながら呟く。ロボットたちは三体とも壁際に立ったままだが、その行動にはもう慣れた。庶民中の庶民であるゆえ、もしも生身の人間に傅かれていたら居心地が悪かっただろうが、相手がロボットだったし、数ヶ月間は訓練と学習でとても上流階級気分を味わっている暇などなかったのだ。いつの間にかロボットがそばにいることが当たり前になっていた翔太郎なのである。
そしてどんな小さな呟きでもAIたちは聞き取って反応してくれることにも慣れてしまった。
『創造主様から連絡があるまではご自由にお過ごしください』
このようにである。
「……そうだな。うーさんが直ったんなら、また訓練でもするか。病弱なのは治ったみたいだけど、まだまだヒョロガリだからな。よし、そうと決まったら早速出かけるか」
根が貧乏性だからなのか、ジッとはしていられない様子である。惑星アーテラスでの数ヶ月間もそうであった。なにしろ神との決戦が近いのだ。身体を動かしていないと不安なのだろう。それでも逃げようと思わなかったり、すべてを諦めて自堕落に過ごそうとしないだけ、翔太郎は変わった。サラリーマン時代とは雲泥の差である。
『お待ちください。トレーニング施設でしたら当要塞にも設置できます』
「あー、後でな。まずは懐かしのうーさんの設備を使う。足りない設備があったらこっちで追加してくれ」
『……わかりました。またのご利用をお待ちしております』
何だかAI同士で客の取り合いみたいなことをしているなあ、と考えながら翔太郎は出かけることにした。
目的地は懐かしの(笑)中型宇宙戦艦・うーさんである。
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