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第53話 第三層の詳しい説明


「気を取り直して、わーさん、第三層の詳しい説明を頼む」


「はい。第三層は創造主様の故郷をモデルに設計されています。地形はモニターを見てのとおり、陸地と海洋が3対7です。サイズは、オーナーの知識から得た『メートル法』を使用すると、赤道半径約1200km、円周40000km弱です」


「地球よりちょっと小さい? ん? 小さいのに何で一日の長さが長いんだ? 逆じゃないか?」


「惑星によって条件が異なると自転速度も変わります。データによりますと、創造主様の故郷の惑星は衛星が二つあったそうですからその影響かと思われます」


「なるほど、わからん。だが、自転速度を変えると生態系に影響が出るんだよな? だからそのままでいいって決めたんだし。まあ、これからも俺の認識が間違っていたらその都度教えてくれ」


「はい、了解しました。ではオーナー、早速ですが、この要塞は自転しておりません」


「え? あ、ああ、そういえば太陽の周り回ってるわけじゃなかったな。木星みたいなガス惑星の中に隠れてるんだっけか」


「はい。自転はありませんが、第二層の底部が全面スクリーンとなっておりまして、そこに一般的な恒星が放射する、生物にとって有害なものを除いた光線を投影しております。当然地軸の傾きも恒星の高さで擬似的に表せます。太陽以外の気候は第三層地表や海から蒸発する水分が雲になり、雨や雪を降らせます。また、自転も衛星の重力影響もないため海洋や大気の循環がないのも問題ですので重力制御装置で最低限の循環を維持しております」


「……難しくてよくわからんが、普通の惑星とほとんど同じってことでいいのか?」


「はい。創造主様の故郷はあくまでもモデルでしかありません。スリープモード中は重力制御も最低限に抑えていたため、気候の変動は極めてマイルドです」


「えーと、つまり?」


「海は穏やかで風も余り強くなく、寒暖差も激しくありません」


「それっていいことなのか?」


「この件に関しましては善悪の判断基準をインストールされておりませんので回答不能です。ですから、ここは新しい『惑星』と看做して対応した方がよいのではないでしょうか?」


「なるほどな。そもそも俺にとっては『あれから3年、何もかもが新しい……』ってヤツだ。素直にあるがままを受け入れた方が建設的だな。よし、納得したところで説明の続きを頼む」


「はい。重力は創造主様の出身惑星と同じに設定しており、地球計算ですと約1,1Gになります」


「ほう? 大きさは地球より小さいのに重力は大きいと。ファンタジーじゃなくて科学的理由があるんだろうな?」


「はい。重力は惑星自体の重量だけでなく、自転による遠心力の影響も受けますので、自転速度の遅い創造主様の惑星は強くなっているものと思われます。


「なんとなくわかった。しかし、1,1だと誤差みたいなものか? プタルカに侵略された世界に召喚されたときも重力の違いはこれっぽっちも頭になかったぞ。どこの惑星もこんなものか? それとも偶然か? そもそも、アーたんの出身惑星って、あの惑星アーテラスなのか?」


「いいえ、プタルカに侵略されていた惑星アーテラスは創造主様の出身惑星ではございません。管理惑星です。地球、惑星アーテラス、創造主様の出身惑星、この三つの重力がほぼ同じな点については偶然といってもよろしいのですが、必然に近いともいえます」


「簡単に説明して?」


「知的生命体の発生する条件が決まっております。統計によりますと、重力が0,7から1,4Gまでとなっており、中間値である1,05G付近が最も割合が多いのです」


「重力10倍の野菜の惑星はないんだな……なるほど、地球の重力は宇宙的にスタンダードなわけだ。となると、他の条件も似たようなもんだと思ってもいいのか?」


「そのとおりでございます。大気成分も気温も湿度も、地球は平均値に近いといってもよいかと思います」


「そりゃいいこと聞いた。これで他の惑星に気楽に遊びに行けそうだ。ところで気になったんだが、アーたんの出身惑星って名前はないのか?」


「あるといえばあります」


「ハッキリしない言い方だな。AIが高性能すぎる弊害か?」


「申し訳ございません。対外的なもの、現地での呼称と複数かつ多数ございますので、オーナーには馴染みがないかと」


「対外的ってのは?」


「記号と番号です」


「そりゃ俺の天敵だ。じゃあ現地の呼び方は?」


「複数の言語がありますが、『日本語』に翻訳すると『地球』になります。このパターンは数多くの惑星で見られる呼称です」


「あー、なるほど。丸い大地か。確かにどこでもそんな名前付けそうだ。惑星アーテラスは神サマの名前だし、万人受けはしないだろうな。しかし、そうなると区別するのが大変だな。何かいいアイデアはあるか?」


「現地の発音そのままを使用するのはどうでしょうか?」


「採用。そりゃそうするしかないよな。行った時また考えよう。脱線しちまったが、他に必要な説明はあるか?」


「はい。第三層の平均気温は約15度。最高気温は赤道付近で約40度、最低気温は極圏でマイナス30度を観測しております。成層圏は第二層底部で第三層からの距離は約8千メートル固定です」


「8千か。エベレストよりは低いんだな? 問題ないのか?」


「第三層の地形の最高峰は海抜7500メートルです。この10万年スリープ状態でしたが何の問題も発生しておりません。ご安心ください」


「そうだな。実際安全だったんだよな。疑って悪かった」


「いいえ。オーナーあっての私たちです。泰然自若として構えてください」


「いまだに俺の必要性がさっぱりわからんが、そうさせてもらおう。なんにしろ、第三層は地球とほぼ環境が変わらないといっていいんだろ? じゃあ、適当に決めてもよさそうだな。どこにしよっかな?」


 翔太郎はスクリーンに映された地形図を眺める。

 改めてマイホームの建設地を選ぼうとしたが、地球の地形とは全く違うので、どこをどう選んでいいか皆目見当がつかない。

 これが日本での話なら、通勤時間や資金面など建物そのものだけでなく様々な条件が付随してくるため選択肢は限られていただろう。

 だが、ここでは世知辛い条件など一切ない。完全に翔太郎の自由なのだ。

 逆にそれが翔太郎を苦しめる。


「ぬおーっ! わからん!」


「オーナー。僭越ながら、条件をいくつか提示いただければこちらで候補地を絞り込めますが?」


 地図を前にして頭を掻き毟る翔太郎を見兼ねてか、AIが提案してくる。


「……それもそうだな。プロに聞けばいいんだ。家なんて買ったことないから、こんな簡単な方法気付かなかった……」


 翔太郎がマイホームを手に入れるにはもう少し時間がかかりそうだ。


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