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第50話 ホントに今更だね


(夢を見るのは人間の勝手さー。大体、人間の考えた極楽浄土のどこに夢があるんだい? 停滞そのものじゃないか。僕たちのコンセプトには合わないねー。ああ、中立派のどこかにはあるかもだね? タロー君、住んでみたいかい?)


『いや、老後はそれもアリかもしれんが、今は折角宇宙船が手に入ったんだ。冒険が先だろ?』


(あはは、そうでしょ? やっぱり人間には刺激が必要だよね? 若いときには買ってでも苦労しろって聞いたことあるでしょ? ということで惑星再生の依頼はどうかな?)


『他人の不幸は蜜の味、ってのも聞くがな。お前ら神は人間の不幸を見て楽しんでるんじゃないだろうな? マジで邪神っぽいぞ?』


(ヤダナー。ソンナワケナイジャナイカ)


『おい、棒読みヤメロ! 不安になるわ!』


(あははは。冗談、冗談。僕たちは観察してるだけだよ? まあ、ファンタジー派も不幸を演出してそれを原動力に人間を進化させようとしているから、神の娯楽っていうのとは違うかな? 念のため言っておくけど、庇ってるワケじゃないよ?)


『……前に聞いた方針の違いってヤツか。ファンタジー派の世界の人間にはご愁傷サマとしか言えねえな。家庭の問題とか国策に例えられたら部外者は口出しできねえもんな』


(そうなんだよ。でも、今回みたいに直接侵略を受けたら方針どうのこうのって問題じゃないからねー)


『復讐するは我にあり、ってヤツか。それは理解できるがな。だが、それと俺が苦労する話は別だろ? 大体、唯の人間が神サマに関わっていいのか? 今更の話だが』


(あははは。ホントに今更だね。立ってる者は親でも使え、っていうじゃない? 僕がタロー君に関わったのは緊急事態だったからし、神である僕が納得してるんだから何の問題もないよ? これ以上人間に関わらないためにもヘルプを頼めるのはタロー君しかいないんだ。ということで、依頼、引き受けてくれないかな?)


『……しかたない、引き受けてやる。ただし、プタルカの件が片付いてからだ。お前が負けたら俺は逃げるからな』


(ありがとう! 今度は負けないからね!)


『はあ……にしても、惑星の再生か。スケールがハンパねえな』


(あははは。やり方は任せるよ? タロー君が一人で地道に惑星を歩き回るもよし、仕事はロボットたちに丸投げしてタロー君は宇宙要塞で惰眠を貪るもよし、だよ?)


『なに、その両極端!? 後半は人聞き悪いな!?』


 翔太郎の次の仕事が決まったようだ。


(さてと、約束も取り付けたことだし、僕はもう行くよ。タロー君の意識はこの宇宙要塞が再稼動するまで眠らせておくからね? 次に目覚めた時が本当の冒険の始まり、ってとこかな? ああ、プタルカ抹殺の詳細が決まったら連絡するから、それまでは要塞の機能なんかを慣らしておくといいよ)


『おう。これでついに宇宙要塞持ちか。なんか、年甲斐もなくワクワクするな!』


(あははは。年甲斐ってほどじゃないでしょ? でも気持ちはよくわかるよ? それこそ年甲斐もなくこんなの造っちゃったくらいだからね。おっと、もう行かないと。じゃあ例の件、よろしくね? またねー)


『おう! またな!』


 その思念を最後に翔太郎の意識は薄れていった。



 ◇ ◇ ◇



「……知らない天井だ……」


 どうやら口癖になってしまったようである。

 だが、ウソではない。


「お身体の調子はどうですか? こちらのセンサーでは良好のはずですが」


「あー……大丈夫だ。ところでここは? 声は要塞のAIだな?」


 翔太郎は身を起こしながら辺りを見回す。

 椅子は登録時に座った歯医者さん風の豪華なリクライニングシートのままだが、正面は扉ではなく、ザ・SFとでもいうべきメカメカしいオブジェが鎮座している。

 後ろを見てみると扉があった。しかし、椅子の方向を変えただけではない。ここは通路のように狭くも天井が低くもない大部屋だ。オブジェが大きいため狭く感じるのではあるが。


「はい。ここは中央第一制御区画の中枢です。正面にありますのがこの宇宙要塞のメインコンピューターになります。引き続きオーナーとお呼びしてよろしいですか? それともご主人様で?」


「オーナーの方で」


「了解しました。ここは登録された所有者以外は入れません。オーナーは登録完了後運び入れました。後ろの扉の外が先ほどの通路になります」


「なるほど……って、さっきアーたんが来てたんだが……」


「……声だけです。入ってはおりませんからノーカンです」


「いやいや! それは無理があるだろ!? アーたんだったからよかったものの、プタルカだったらエライことだぞ? セキュリティー、ガバガバじゃないか?」


「……善処します」


「いやいや! それって否定の常套句だよな!?」


「いいえ。私は人間ではないので言葉通りの意味です。先ほど件は完全起動する前のことですから創造主様であれば進入は可能です。ですがこうしてオーナーを迎えて再起動した現在はセキュリティー機能も100%発揮できます。今後はオーナーの許可がなければ創造主様といえど進入禁止できるようにセキュリティーを充実させます」


「あー、プタルカの件があるから是非それで。それに、登録完了したんならもう俺がここに来る必要はないんだろ? 修理とかできるわけじゃないし」


「必要性に関しましてはその通りです。私との通信は本体である惑星級超巨大宇宙要塞内部だけでなく、私の下部AIが担当する宇宙要塞や宇宙戦艦、各種ロボットを通じて行えますのでオーナーがどこにいらっしゃっても問題ありません」


「わかった。ここは俺も含めて立入り禁止で。最後の砦にしよう。で? これから俺はどうすればいい?」


「オーナーのご自由に……という答えを求めているのではありませんね? アドバイスや指針が必要ということでしょうか?」


「まあな。アーたんからプタルカ討伐の連絡が来るまで要塞の機能に慣れとけって言われてるんだが、この通り、アータンたちから見れば原始人のようなもんだからな。何から始めればいいのか、サッパリだ」


「では、僭越ながら、住居環境の整備から始めては如何でしょうか?」


「あー、そりゃ大事だな。俺が寝かされてた部屋か?」


「いいえ、あの部屋は二階層からのエレベーター出口の直近でしたのでベッドを用意しただけです。住居とはいえません」


「じゃあ、どこかに住居区画みたいなところがあるのか?」


「いいえ、現在はございません」


「は? ないの? 要塞なのに?」


「はい。現在はデフォルト状態ですので」


 翔太郎が詳しく聞いたところ、アーテラスが神に進化した後所有権が放棄され休眠状態になった宇宙要塞は支柱や壁などの構造物とメンテナンス関連以外の施設を破棄、エネルギーに還元したそうだ。これは中途半端にメイドロボから聞いた話だ。まさか住居までとは思わなかった翔太郎であった。


「わかった。じゃあ、森のある第三層が候補地かな?」


「はい。デフォルトで大気が存在するのは第三層だけですので環境改造の時間短縮が望めます」


「そうだな。空気は必要だよな。え? こことか、通路とかは?」


「もちろんオーナーが通過する場所は適切な大気で満たしております。極小範囲ですので負担も時間もかかりません。それ以外の場所は真空か窒素100%ですのでお気をつけください」


「恐いな!? 窒息の罠かよ!」



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