第49話 人手不足なんだってば
『二つの中から選ぶとか言ってたが、断れるのか?』
(聞いてから断ってもいいよ? 人手不足ならぬ神手不足だから手伝ってほしいのは山々だけど、元々神サイドの問題だからね、無理強いはしないよ)
『わかった。まずは聞こう』
(うん。じゃあ、一つ目は前の依頼の続き。プタルカを殺すこと。これは僕たちの派閥的にも絶対にしなくちゃならないことなんだ。何故だかわかるかい?)
『うーん、単なる復讐ってわけじゃなさそうだな。プタルカの逆恨みで逆に復讐されるのを防ぐための討伐か? 正当防衛的な?』
(ほぼ正解だね。付け加えると『見せしめ』のためだね)
『なるほど、他のファンタジー派を牽制するためか。地球の刑罰もその一面はあるな』
(完璧じゃないけどね? もしこのままプタルカを見逃して僕が泣き寝入りすると調子に乗ったファンタジー派が同じことを繰り返すかもしれない。ううん、もう別の宇宙で起こってるかも知れないんだ。仲間とちょっと話したけど、そういう予想が立てられたんだ。今仲間たちは僕の惑星みたいなところがないか調べてる。中立派も被害に遭ってないか調べなきゃならないし、そのせいで人手不足なんだよ。だから、僕という生き証人がいるプタルカは絶対に生かしちゃおけないんだ)
『わかった。だが、プタルカの本拠地に乗り込むのはいいが、俺がプタルカ本体相手に戦えるかどうかだが……』
(この要塞のスペックを100%発揮できたらプタルカと1対1なら互角に戦えると思うよ。それにタロー君一人を特攻させるつもりはないし、少なくとも僕自身が戦わないとね)
『なら大丈夫か』
(うん。相手に援軍がなければね?)
『援軍か。ありそうなのか?』
(まだわからない。プタルカの暴挙がプタルカ個人の行動なのか、それとも派閥としての行動なのか、今調べてるところなんだよねー。個人の暴走だったら今度こそウチの派閥で包囲してタコ殴りで終わるんだけどなー)
『仮に派閥の行動だったら?』
(そのときは派閥同士の大戦争かな? ラグナロク? でも僕という生き証人がいるから大儀名分はこっちにあるさ。根回しすればプタルカや実行犯たちを尻尾切りするんじゃないかな?)
『根回しに尻尾切りか。宇宙に来てそれも神サマから聞くとは思わなかった』
(あははは。ごめんね、下世話で)
『ラグナロクになるかどうかは調査次第ってことだな。さすがに世界が消滅しそうな戦いは付き合えないぞ?』
(あははは。僕もさすがにそこまでは言わないよ?)
『ならいい。で? 二つ目は?』
(うん。惑星の再生をお願いしたいんだ)
『惑星の再生? どういう意味だ?』
(言葉どおりだよ? ほら、ファンタジー派の拠点って魔力っていう名の放射能に汚染されてるじゃない?)
『ああ、そうだったな。実感はないが』
(キミはマイクロチップで保護されてるからね? それはいいとして、惑星の再生は元通りの魔力のない環境に戻すことだね)
『それは、神サマパワーでサクッと出来ないのか?』
(できるできないでいうと、もちろんできるよ。でも、何度も言うようだけど、人手不足なんだってば。ラグナロクは最悪の予想だけど、もしプタルカの単独犯でサクッと片付いたとしてもその後の処置がまた面倒でさー)
『ああ、戦後処理ってやつか』
(そう! プタルカがいなくなった星系、多分被害者の僕に渡るとは思うけど、ファンタジー派も口を出してくるはずだし、防衛のため仲間にも協力を求めなきゃならないしで大忙しなんだよ)
『忙しいのはわかったが、お前たちの派閥、人間に干渉しないんじゃなかったか? ほっとけばいいじゃないか』
(あー、それね。もしプタルカの惑星が生命誕生する以前から、神の干渉無しで魔力に汚染されてたとしたら僕も放っておくね。僕たちの派閥のコンセプトは誰の干渉も受けずに人類だけで正当な進化をするところを観察するってことなんだよ。僕の惑星は元々魔力なんかなかったんだ。プタルカに放射能撒き散らされて人類が無理やり進化させられたようなものさ。とてもじゃないけど観察対象にはならないよ)
『なるほど。魔力や魔法自体は認めると』
(うん。それが自然発生だったり人類自らが魔力という名の放射能をバラ撒いて順応したものだったらね? そういう環境、星間連盟にもあるんだよ? 魔法科学とかあったりしてね、おもしろいんだー)
『言葉は物騒だが、そういう異世界なら俺も行ってみたい気もする……じゃあ、プタルカの惑星は……』
(うん、たぶん一から十までプタルカが干渉してるだろうね。ステータスとか神の加護とか言ってさ)
『それがアーたんの管理になったなら白紙の状態に戻さないと観察する意味がないと。なるほど、だから魔力を撤去して以前の環境に戻すわけか。現地人に恨まれないか? 魔法って便利そうだし、化石燃料を使うより環境に優しそうだし』
(恨むんならプタルカを恨めばいいさ。なんだったら邪神アーテラスを恨んでも一向にかまわないよ? 僕は観察さえ出来ればそれでいいんだ。信仰心なんか必要ないし、放射能汚染でも環境破壊でも自由にすればいいんだよ?)
『うわー、お節介とか善意とかじゃなくてあくまでも観察のためと。徹底してんな。逆に尊敬するわ』
(わかってもらえて僕もうれしいよ。それで、タロー君はこっちの依頼は引き受けてくれるかい?)
『そうだな、ドンパチよりも危険はなさそうだ。魔力除去ってあの装置を使えば簡単じゃないか? ん? あれ? そういえばあの世界の人間って魔力がなくなったら倒れるんじゃなかったか?』
(うん、そうなんだよねー。元に戻すには魔力除去だけじゃ済まないんだよ。それでいいんならとっくにやってるさ。人間たちも元の生態に戻す必要があるし、動植物もだね。神にとっても大変な作業、っていうか、ぶっちゃけ面倒?)
『だから俺にやれってか?』
(うん、そう。どう? やってくれる?)
『待て、考えさせろ』
(いいよー。どうせ仲間たちの調査が終わらないと方針が決まらないからね。その調査結果で判断してかまわないよ? あ、報酬のプタルカか僕の惑星どっちか一つ、っていうのは再生の仕事込みでだよ?)
『それは、カチコミの依頼引き受けても同時に惑星再生のお仕事がくっついてくるってことか? 二つの依頼の中から一つ選ぶんじゃなかったのかよ!』
(あははは。ごめんねー。空前の人手不足なんだー)
『人手不足を理由にすれば何でも許されると思うなよ! うっ、トラウマが……』
(うわっ! 精神波に異常が!? タロー君、落ち着いてーっ! こういう時は脳内物質をコントロールするんだよ? 訓練したでしょ?)
『……宇宙にもサビ残、休日無手当出勤があるとは思わなかったぜ……』
(そこまでブラックじゃないよ!? ファンタジー派の世界に比べれば僕たちの派閥の世界はマシな方だと思うけどね? 少なくとも僕は報酬は出すつもりなんだし)
『……マシねえ? まあ、人権も保護されないような世界よりは確かにマシか』
(言っておくけど、僕の派閥の神たちは人間世界の人権には一切関わってないからね? 観察してるだけなんだから)
『ああ、そういえばそうだったな。ってことは、天国やら極楽浄土なんかないわけだ……夢も希望もねえな』
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