第43話 ロケットパンチ! からの『俺にかまわず先に行けwww』
突然のAIの反乱。
翔太郎は、地球のエンターテインメントでよくあるテーマだと認識していたが、実際地球よりも高度なAIを目の当たりにして不安のほうが勝った。
しかし、対策方法を聞いてみると旧式のコンピューターとほぼ変わらない。人間と機械のイタチゴッコだ。
プログラミングが完璧なら反乱は起こるべくもない。
しかし、この世に完璧な存在は観測も出来ないとほかならぬ神が証言した。
なら、AIの反乱も確率の問題なのだ。
もっと確率の高い問題がある。
それは第三者によるサイバー攻撃。
いわゆるハッキングだ。
ウイルスでも仕込まれると、AIの意思によらず反乱は起こりうる。
翔太郎は突然仲間だと感じていた存在に襲われてしまった。
翔太郎が相続した物件の場合、製作者が神ということもあってほぼ完璧に近い信用はある。
翔太郎の心配は最低値まで下がっていた。
だが、現在敵対しているのは製作者と同レベルの神。
つまり、原因は一つしかない。
「て、てめぇ……プタルカか……」
『不敬であるぞ。虫けらが』
「けっ! 薄汚ぇ侵略者が何を偉そうにしてやがる」
『ほう。思考が読めぬゆえ不思議に思っておったが、あの崇高な理念が理解できぬ無能どもの犬であったか。さしずめ我の召還魔法に紛れ込み、我が世界を調査しに来たのであろう。無駄なことを……』
「勝手に攫っておいてステータスもスキルも寄こさなかったのはてめぇだろうが! 虫けらだの犬だの何わけのわかんねぇこと言ってやがる! 無能はてめぇだ! (うーさん、うーさん、聞こえるか?)」
「(はい、オーナー。感度良好です)」
翔太郎は殴り飛ばされたダメージが残り、やっと両腕で身体を支えている。
今はプタルカに乗っ取られたらしい船長ロボを下から睨み付けながら悪態をつくので精一杯だが、その実、脳内ではAIと緊急連絡をしていた。
『ぶ、無礼な! いや、しかし、ただの偶然だったのか?』
「おい! そんなことより船長に何をした! 身体を返せ! (うーさん、船長はどうなってる?)」
「(回線が遮断されています。おそらくは魔法的な結界です)」
『ふむ? どちらにせよ処分予定だ。最期に教えてやるのも神の慈悲である。傾聴せよ』
「何が慈悲だ。早く言え! (うーさんは大丈夫か?)」
「(はい。創造主様の対策のおかげでしょう。今のところ問題ありません。最悪の場合はシャットダウンしますので、オーナーは手はず通りに)」
『無様であるな。そのほうは神と知ってなお粋がっているようだが、これはただの分霊である』
「分霊だと? (わかった。なんとか逃げ出してみる)」
『そのとおりだ。たかが人間ごときに我が自ら出る必要はない。船に魔力が一切ないので人形を支配下に置くまで時間がかかったがな』
「追いかけてきてるのが本体か」
『愚か者が。その必要はないと言ったはずだ』
「お、俺をどうする気だ……(マズイ! 本体じゃねえ! アーたんは無事か?)」
「(わかりませんが、どうやら創造主様のことには感付いていないようです。救援信号は出ていますから計画通りで問題ないと推測します)」
『ふむ。このまま人形で弄り殺すか、船を魔力で満たし魔法で甚振るか、外から押し潰すのも一興よな』
「ゲス野郎が。何が崇高な理念だ。(わかった。計画通りに、だな)」
『ふふ。いつまでその悪態をついていられるか試してやろう。外の分霊が魔力を転送してきたからな』
「オーナー! 追い付かれました! 巨大な魔力反応です!」
『おお。やはり魔力はいい。では受けてみよ、ファイヤ―ボール』
「くっ……」
『なにっ!』
付けたままだった眼帯が自動で魔法攻撃を無効化した。
「そ、そうだった! 魔力除去! 吸収! ついでに食らえっ! ロケットパンチ!」
翔太郎は残った力を振り絞り、左腕を船長ロボに向けた。
義手が恐ろしい勢いで飛び出し、船長ロボの身体に命中する。
翔太郎は反動で再び倒れてしまうが、船長ロボは倒れず踏みとどまった。
『どうした? それが攻撃か?』
「こいつもくれてやる!」
義手部分がなくなれば、現われるのは翔太郎が熱望した伝説の武器。アーテラスが命名した『サイコーガン』だ。
翔太郎は倒れたまま銃口を船長ロボに向けた。
脳内チップが眼帯とサイコーガンを連動させ、吸収したエネルギーを最大限で放出させる。
光が船長ロボを貫いた。
胴体に大穴を開けて船長ロボは崩れ落ちるのだった。
『ふん、人形を倒したところで、すでに魔力は満ちておる。好きなだけ足掻くがよい』
船長ロボからガスが漏れ出したかのように、おそらくは魔力が人型を形どる。スクリーンに映っていた巨大な人影もそうだったが、薄くて表情はハッキリしない。
「ああ! 最期まで足掻いてやるぜ! 頼むぜ! サイコーガン!」
アーテラス謹製。ネーミングセンスはともかく性能は文字通り最高。
翔太郎がこのプタルカの分霊に対して選択した機能は魔力除去であった。
『ぐおーっ! これは! この分霊では持たぬか。だが、いい気になるなよ? 外の分霊を見るがよい! その程度の力では通用せぬぞ? フハハハ……』
サイコーガンの最大パワーで魔力除去波を浴びせると、何とか効果があったようだ。
プタルカの分霊は笑いながらも消えていった。
「クッソ! テンプレなセリフ残していきやがって……うーさん! 船内の魔力、早く除去してくれ! また乗り込まれたら面倒だ!」
「アイアイサー。これ以上利用されないためにもロボットをエネルギーに変換することを再度提案します」
「わかった。俺がもっと早く決断していたらゴブさんも船長も無駄に壊されることはなかったんだ。早く決着を付けて直してやろう。実行してくれ」
「アイアイサー。船内の魔力除去、ならびにロボットの回収実行します」
翔太郎の決断すると破壊されたロボットたちが消えてった。微粒子に分解されエネルギーとして吸収されたのだ。
だが、翔太郎には感傷に浸っている暇などなかった。
「うおっ! なんだ! この船が揺れる!?」
「オーナー! 補足されました! 強制的に相対速度を0にさせられています!」
「よくわからんが、捕まったのはわかった。対策は? ジャンプは?」
「結界に閉じ込められています。ジャンプしても元の地点に出現します」
「あー。無限ループか。俺を消耗させる気か……魔力除去は効果がないのか? 結界は一度破ってるだろ?」
「あの時は本船のフルパワーでしたから。現在は物量で負けています」
「ちょっとずつ壊しても修復される。それを繰り返してフルパワーまでエネルギー吸収しても……」
「オーナーが持ちません」
「そうか……持久戦になると俺が弱点になるのか……まだ甚振るつもりみたいだから即死は免れたけど、いやらしい手を使うな……うわっ! 今度は何だ!」
「結界が消えています! オーナー! 外部から通信です! これは……星間連盟のテンプレートです!」
「味方か! 何て言ってる!」
「読み上げます。『俺にかまわず先に行けwww』以上です」
「……うーさん。緊急ジャンプ、よろしく」
「アイアイサー」
スクリーンからプタルカの姿も星空も消えた。
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