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第36話 大元を排除すれば自ずと結界に回すエネルギーも減少するだろう


 翔太郎の乗る宇宙船が完全にこの世界に姿を現したちょうどその頃。


 ブレスト王国の各地方、ダンジョンや森の付近では人と魔物の戦いが激化していた。

 人々は大氾濫がピークを迎えつつあると感じていた。


「GSYEEEEEEEEHN!!」


「なんだ! 新手の魔物か!」


「おい! 魔物が倒れてるぞ!」


「うわーっ! 空からドラゴンが! メタルドラゴンだ!」


「なにっ! な、なんだと! ドラゴンが魔物を攻撃しているだと!? どうなっている!?」


「大変だ! 魔物の近くにいた連中魔力切れで倒れちまった!」


「なんだと! それは無事なのか!?」


「運よく魔物も倒れてるからまだ襲われてねえ。だが、問題はそこじゃねえぞ」


「メタルドラゴン、魔力切れ……おい、ひょっとして……」


「ああ、俺も見たことはねえが、酒場でしょっちゅう聞いてたよ」


「ま、魔力食らいだっ! 大穴から飛んで来たんだ! さがれーッ! みんなさがるんだっ! メタルドラゴンに近づくな!」


「待て。見ろよ、魔力食らいのヤツ、狙ってるのは魔物のほうだぜ?」


「なんだと? 仲間割れか?」


「案外俺たちを助けに来たのかもな。おい! 見ろ! 魔物が消えてる!」


「何をバカな……なんだ!? 何が起こっている!? ヤツが何かしているのか!?」


「魔力食らいは魔力だけじゃなくて魔物そのものも食らうのかよ……」


「あ、ああ……何故か知らんが、人間は襲わないみたいだがな……」


「倒れてる人間は食わないみたいだな。だが、そのままだと踏まれたらイチコロだぜ?」


「みんな! 倒れてる連中を助けるんだ! メタルドラゴンには近づかなきゃ危険はないっ!」



 そのような出来事が各地で起こっていた。

 人々は首を傾げながら、恐々としながらもメタルドラゴンとの共同戦線を張り、魔物を駆逐していった。

 魔物の死体の多くはメタルドラゴンが食らったと後に報告される。


 アーテラス関係者ならこの現象が理解できる。

 魔力除去装置の大本、物質崩壊波照射装置。あらゆる物質を微粒子レベルまで分解できる、翔太郎に言わせるとトンデモ謎技術なのだが、アーテラス謹製の逸品だ。

 加えて、同じくトンデモ謎技術のエネルギー吸収装置も併用しているので、メタルドラゴンが魔物の死体を食らったという見解はあながち間違いではない。


 これは本作戦の一環である。

 作戦の最終目的は敵対派閥の神・プタルカの排除だが、それに至る過程として、まずアーテラスの脱出が必要だ。

 そしてそのために翔太郎が囮になる計画だが、さらにその前提として惑星を包む結界を破らなければならない。

 では、どうすれば結界を破れるのかと考えると、一つは力押しである。

 どう考えても脳筋スタイルだが、アーテラス謹製の宇宙船にはそれだけのスペックがあり、実行可能だという。しかし実際問題として、結界を破った後も逃げ続けなければならない予定なので、エネルギーに余裕はほしい。なので第一案は保留になった。

 第二案は結界の強度を緩めること。

 これは、この世界が魔力をエネルギーとして成立しているので、その大元を排除すれば自ずと結界に回すエネルギーも減少するだろうとの推測である。


 アーテラスによると、この世界を維持するためにプタルカから魔力というエネルギーが供給されているという。

 その方法は100年ごとの魔物の氾濫だろうと予測。

 翔太郎は、何故そんな迂遠な方法をとるのが疑問に思ったが、神《ファンタジー派》のメンタルとはそんなものらしいと聞いて考えるのは止めた。


 さらにアーテラスは推測した。

 元々すべての神の目的は『更なる高みに上る』こと。その方法は神によって様々だが、ファンタジー派のコンセプトは『神の手で人類の進化をコントロールする』である。

 エネルギー供給のついでに人類の敵を作り出し、戦わせてレベルを上げさせる。

 翔太郎は謎科学よりもよく理解できた。

 ラノベの展開で、主人公たちは激闘の最中限界突破し力を手に入れる。アーテラスが説明したように生物としての『階位』を上げることになるのだ。ある作品では神になった主人公もいた。


 何故100年間隔なのだろうという疑問が再び出てくるが、アーテラスの予想は、そこは余り問題じゃないというやる気の見られないものだったが、間隔が短いと人類が衰退し、長すぎるとレベルが上がりにくい、キリもいいから100年なんだろうという答えだった。

 では、今年が特に大氾濫である理由は? 邪神が復活するという預言は何なのか? という疑問にもアーテラスの予想は楽観的なもので、おそらくこの千年の中で今が一番文明が安定しているから、神目線で梃入れしたのだと。邪神云々は、どうせ人間にはわからないのだし、被害が増えたときの言い訳用だろうということだ。


 座学でAIからこの説明を聞いたとき、翔太郎は『ゲームの運営みたいだな、よく知らないけど』と思ったものだ。


 アーテラスの推測はともかく、この惑星には満遍なく魔力が満ちているが、その中でも凝り集まっているのが魔物なのだ。

 プタルカ側のエネルギーを減らし、アーテラス側のエネルギー不足を解消させるには、この大氾濫、持って来いのイベントであった。

 ついでに、元々この惑星はアーテラスの所有するものだったので、そこに住む人々もまたアーテラスの所有物といっても過言ではない。

 その人々を守ることにもなるのでこの作戦は一石二鳥、いや、三鳥だ。


「オーナー。各機がエネルギーを目標値まで集めるまでどうしますか?」


 翔太郎の乗る宇宙船はブレスト王国の兵たちを回収したあと、大穴の底の瓦礫と隣接するダンジョンを崩壊させ吸収した。

 今ではドックの痕跡を除いて綺麗に更地になっている。

 しかし、アーテラス謹製の宇宙船のエネルギーを満タンにするのは足りていないようだ。


「そうだな。この船でもエネルギー集められるなら、北からも集めよう。魔大陸だっけ?」


「アイアイサー。本船はこれより北に進路を取ります。

 オーナー、提案があります。予備の艦載機が一機ありますので、それを魔大陸北部に向かわせるのはどうでしょうか? それから飛行可能なロボットも複数いますので南部と西部は彼らに任せてはどうでしょうか。我々は東部から中央部を回れば回収も容易となるはずです」


「さすがうーさん。こんなこともあろうかと、ってやつだな。よし、採用! 東部に向かってくれ」


「アイアイサー。本船は進路変更して魔大陸東部に向かいます。各機出撃します」


 スクリーンには先ほどとは別の格納庫から小型飛行機とロボットたちが飛び出していく映像が映し出されている。


「うおぅ……魔物だらけ……知ってるのもいれば見たこともないものいるな……」


 スクリーン越しだが、魔物の群れは迫力があった。

 が、それも長いことではない。姿を捉えた瞬間に魔力が抜かれ、塵になる。その後は、目には見えないがエネルギーとして吸収されているのだろう。


「ん? 残っているのって……あ、あれが魔族か。ん? 獣人? ゴブさんみたいなのもいるぞ? あれが魔族なのか?」


「はい。センサーでは人間と判断できますので」


「魔物のゴブリンとか、コボルトとか、ワーウルフとか区別が付かないんだが……」


「魔力の影響でしょう。(創造主様によると、これも侵略者・プタルカの策略だそうです)」


「いずれ人魔大戦のイベントがあったかもしれないのか……」


 翔太郎は、アーテラスの派閥の謎科学よりもファンタジーのほうが理解しやすいと感じている。

 しかし、プタルカの悪辣なやり方には嫌悪感しか覚えなかった。

 改めて『ファンタジー派』と『ファンタジー』は全く違うものだと再認識する。派閥の名前を変えるべきだとも考えていた。


 エネルギー満タンになるまでプタルカに見つかりませんように。

 翔太郎はプタルカ以外の神に祈りながら、魔大陸の空を進む。



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