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第33話 閑話4 アンドンの華麗なる冒険3



 俺はアンドン。しがない冒険者だ。いや、冒険者だったというべきだな。


 今はスラムで潜伏中だ。


 大穴のダンジョンを脱出した後東辺境伯領に辿りついた。このまま西へ進んで王都に行こうと考えたが、予定を変更した。

 俺の格好はダンジョンで色々装備を拾ったおかげで一端の冒険者に見える。魔石も一ヶ月も魔物を倒し続けたんで持ち切れないほどある。

 ないのはギルドカードだ。王都で捕まったときに身包み剥がされたからな。

 カードがなきゃ門でステータスを調べられる。

 もう刑が執行された扱いで手配されてなかったら町に入れるかもしれねえが、こればっかりはやってみねえとわからねえ。

 そんな危ない橋は渡れねえな。


 裏の人間に頼めば王都に潜入出来るかもしれない。だが、伝があるのは俺の故郷の近くの町だ。王都の西側で、こっからは遠い。しかも王都を迂回するならなおさらだ。


 悩んでも仕方がないので、とりあえず故郷を目指して進む。


 大きな街は避け、ステータス審査が誤魔化せそうな小さな村で魔石を一つずつ食料と交換する。


 王都の南側に位置するどっかの貴族の領都に近づいた。

 あの大きさの街は確実に審査があるだろう。

 俺は道を逸れて進んだ。


「待ちな! 金置いて行きな!」


 裏街道を進んでいると、数人に道を塞がれた。

 酷い身なりだ。冒険者にも見えない。


「盗賊か? 盗賊なら貴族でも襲え。俺は襲ってやったぞ?」


「うるせえ! 一人で勝てると思うな!」


 盗賊たちは一斉に襲い掛かってきたが、元々腕に覚えがあり、最近はダンジョンでかなりレベルアップしたのだ。

 鎧袖一触という難しい言葉はこんなとき使うのかと考える余裕があった。


 殺してはいない。

 今の俺と境遇に違いはないからな。


「おまえたち、街の裏の人間に伝はあるか? 戦利品を換金したり食料を買ったりしてるんだろう?」


「お、おまえ、役人か?」


 倒れたままの盗賊に質問したが、役人と疑われてしまった。

 俺の格好を見てわからんのか? あ、そういや俺も王都で密偵に騙されたんだ。

 こりゃ交渉が面倒になりそうだ。


「違う。大きな声じゃ言えねえが、俺もお前たちと似たようなもんだ。魔石は持ってるが街には入れねえ。伝があるなら俺に紹介してくれ」


「な、なんで俺たちがそんなこと……」


「断るならここで殺す」


「う……」


「引き受けてくれれば、この魔石半分やろう。なに、魔石ならいつでも獲ってこれる。最近魔物が増えてるからな」


 俺は荷物から魔石の袋を取り出し、盗賊たちに見せてやった。


「わ、わかった。お頭に聞いてみる」


「ああ、そうしてくれ。ただし、行くのは二人までだ。残りは人質にする。早く帰って来いよ。仲間が大事ならな」


「わ、わかった」


「おい! 早く助けに来てくれよ!」

「お頭が来ればこんな男なんて……」


 俺は二人を送り出し、残りの盗賊たちの監視をする。

 待っている間情報を集めた。

 しかし、王都に関してはろくな情報はなかった。自然にお互いの身の上話となる。


 予想通り、こいつらも貴族どもの犠牲者だった。税が払えなくなり逃亡。冒険者にもなれず、同じ境遇の人間が集まって盗賊になったらしい。


 俺も故郷の話をした。

 自分のことのように聞いてくれた。

 やはり同じ人間だった。違うのは貴族と教会の連中だけだ。


「おまえか。裏の伝がほしいっていう冒険者は」


 しばらく人質のはずの連中と仲良くしゃべっていると、送り出した二人が何人もの盗賊を連れてやってきた。

 話しかけてきたのが、たぶんお頭、なんだろう。


「いや、元冒険者だ。今は死人だ」


「死人? ふざけたことを抜かしやがって。おい! やっちまえ!」


「お頭! 待ってくれ! この人は役人なんかじゃねえ!」

「そうだ! この人も俺たちとおんなじなんだ!」


「お、おまえら! いったいどうした!」


 驚いたことに、人質だった連中が俺を庇ってくれた。うれしいねえ。


 俺はお頭に改めて自己紹介をする。名前だけは出さなかったが、故郷のこと、王都で捕まったこと、ダンジョンで囮にされたこと。そして見捨てられ、おそらく死んだものとされていること。


「そんなわけで、俺は街に入ることができねえ。あんたたちが頼りだ」


「そんなこと信じられるかよ」


「ただの商売だ。信じなくてもいい。あんたは俺に食料と裏のコネを教える。俺は魔石を出す。簡単だろう?」


「それが信じられねえっていってるんだよ! 一網打尽にする気だろ!」


「疑い深いな。じゃあどうしろっていうんだ? お前らを皆殺しにしても俺にはメリットがねえんだが」


「む……」


「お頭お頭、紹介するだけで魔石が手に入るんなら儲けモンですぜ?」

「そうだぜ。もし嘘だったら、向こうが始末してくれるでしょうよ」


「おまえら……」


 人質からの援護射撃が入って話はうやむやになったが、疑いは残ったまま街のスラムの顔役に紹介してもらえることができた。


 門を通らず、街の中に入る。

 こんな抜け道、よく作ったもんだ。


 で、ついにスラムの顔役と面会が叶う。


「おめえさんかい? 俺に会いたいってのは?」


「ああ、名前は名乗れねえが、元冒険者で今は死人のはずだ」


 盗賊にもした自己紹介をここでも繰り返す。嘘は一つも言ってねえよ。


「ほう? 聞いたことがあるな。何でも王都じゃ勇者サマが召還されたらしい。おめえの相棒とやらもそうじゃねえか? 黒目黒髪だろ?」


 これまでろくな情報が入らなかったが、ここに来て特大の情報が手に入る。


 勇者召還!

 これで繋がった!

 タロー、信じてやれなくてスマン! お前の言ってたことは本当のことだったんだな……


「……そういうことかよ。教会も国もタローを使い捨てやがって……」


「ふむ。くわしく教えてくれんか?」


「ああ、いいぜ。というより、出来るだけこのうわさを広げてほしい。特に外国と取引している連中なんかにな」


 俺は話半分で聞いていたタローの言っていたことを思い出しながら顔役に説明する。

 神に無理やり攫われてこの国に来たこと。

 ステータスが見えず、魔力も測定できなかったため教会から異端認定されたこと。

 魔力のないことを利用して大穴ダンジョンの魔力食いに挑まされたこと。

 最後は騎士どもに見捨てられ、おそらく魔力食いに殺されたこと。


「うわさにするんだからどうでもいいが、おそらくってのはなんだ?」


「しょうがねえだろ? 俺はそのとき魔力切れで気絶してたんだから。だが、状況からみて間違いねよ。もしタローが生きてたら、それはそれでめでたいぜ。タローが王都にいなかったらそれが証拠だ」


「ふむ。何を考えているかわからんが面白そうだ。俺ももうかるしな」


「おう。手持ちの魔石全部くれてやる。だから、王都のスラムに伝はねえか?」


「王都はねえな」


「じゃあ、ほかの街は?」


「それなら問題ない。手下を付けてやる。魔石は用意しておけよ」


「わかってる。あんたの手下にもたっぷり持たせるからな。期待しておけ」


 こうして俺はスラムの顔役と伝を持つことができた。

 一足飛びに王都へはいけなかったが、なに、うわさを広める時間ができたと思えばいいだけだ。


 俺は王都の南方面から西に回り、途中魔物を狩りまくって、各町のスラムの顔役にドンドン繋ぎをつけた。

 そしてうわさをバラ撒くことを依頼していった。


 そしてついに王都のスラムとの繋ぎが取れた。


「時間がかかっちまったが、タロー待ってろよ。もうすぐ仇は取ってやるからな」


 魔物が一層増えたとうわさになるころ、俺はスラムでそのときが来るのを待っている。

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