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第29話 閑話2 アンドンの華麗なる冒険



 俺はアンドン。しがない冒険者だ。いや、冒険者だったというべきだな。


 最近魔物の被害が増えている。

 とうとう俺の故郷まで被害に遭った。

 俺はすぐさま駆けつけたね。だが、間に合わなかった。畑は荒らされ、村の知り合いが何人も死んだ。


 悔しかった。悲しかった。


 そこに追い討ちがかかる。

 魔物じゃねえ。魔物だったら俺がぶっ殺してやる。


 クソ領主が税金を上げやがった。


 てめえは領主の癖に、何もしなかった癖に、金だけは取り上げるのか!

 挙句に、税金が払えなければ奴隷になれだと? 


 俺は冒険者だからいいが、村のモンはどうするんだ。もう何も残っちゃいねえ。


 俺は頭に来たね。先史文明だかの言葉でMK5っていうんだったか。それともカムチャッカだったか。どうだ? 冒険者にしては学があるだろ?


 そんなことはどうでもいい。

 頭に来た俺は、奴隷として捕まったやつらを逃がしてやった。ざまあみろだ。


 俺もうまく逃げられたが、王都でヘマして結局捕まっちまった。

 役人なんてのはどこも一緒だ。クソ領主の肩を持ちやがって、こっちの訴えなんて聞きやしねえ。

 あっという間に死罪の判決が下ったよ。


 だが、ここからが俺の逆転劇の始まりだった。


 刑を待つ間、減刑の話が来た。

 大穴と呼ばれるダンジョンでちょいとした仕事をすれば無罪放免だと。


 話ができすぎている。大穴といえばガキでも知ってる『魔力食らい』の出るダンジョンじゃねえか。

 ちょいとした仕事ってのは肉盾のことなんだろう。命がいくつあっても足りねえよ。


 だが、俺は話に乗った。

 だってそうだろ? このままじゃ死刑が決まってるんだからよ。


 出発は急だった。奴隷の首輪を嵌められ、檻車に押し込められる。

 相棒はひょろっとした兄ちゃんだった。


 どっからどう見ても冒険者には見えねえ。いいとこのボンボンだな。政争とかいうヤツで負けた煽りでも食ったに違いねえ。目が死んでやがる。

 騎士どもの話を聞くと、なんでもこの兄ちゃん、魔力食らいに対抗できるスキルを持ってるんだと。俺の仕事はこの兄ちゃんのスキルが本物かどうか確かめることだと。


 へっ、よく考えられてらあ。

 俺が魔力切れになっても兄ちゃんがピンピンしてりゃ、そのスキルが証明できるってワケだ。

 だから兄ちゃんのそばから離れるなって命令された。

 おいおい、今からその命令かよ。ダンジョンはまだだぜ?


 しょうがねえから兄ちゃんに話しかける。

 この兄ちゃんのスキルのおかげで、危ねえ仕事だが、チャンスがやってきたんだ。感謝はしてるよ。

 だからそんな死んだ目をすんなよ。


 ま、気持ちはわかる。冒険者の俺だって生きて帰れるかわかんねえんだ。こんな剣も持ったことのないような兄ちゃんがダンジョンで何ができるっつうの。


 それでも、短い間だが相棒にゃ違いねえ。楽しく生きなきゃ損てもんだ。

 俺が話しかけるとやっと俺の存在に気がついた。こりゃ重症だ。

 こんなときは、酒はないが、言いたいこと言って気持ちを吐き出したほうがいい。冒険者が酒場で管を巻くのはそんな意味がある。

 俺も仲間と散々やらかしたもんだ。


 兄ちゃんは俺の巧みな話術で少しずつ元気になっていった。

 しかし、話を聞いて驚いたね。

 神に攫われた? ステータスもスキルももらってない? 異端者に認定された? ダンジョン行きは神の試練?


 どれか一つ本当のことでも世間が大騒ぎするぞ?

 俺は信じなかったが話を合わせてやった。

 神を呪う? おう、どんどん呪ってやれ。俺だって恨みはある。なんで俺の故郷が魔物に襲われなきゃならないんだ。

 何もしなかったクソ領主に何で神罰が落ちないんだ。そんなクソ領主をかばう国もクソ食らえだ。魔物が村を襲ったのは神の試練で、俺が領主の兵を襲ったのは犯罪だ? そんな勝手をいう教会もくたばればいいんだ。

 俺は兄ちゃんに同情したぜ。どう考えても国と教会が悪い。


 俺と兄ちゃんは、タローっていうらしいが、檻の中で大声で国や教会、神サマの文句を言いまくった。

 これが街の中なら兵が飛んできて問答無用で捕まるところだが、檻車の回りにいる騎士たちは話が聞こえているくせに何の反応もしやがらねえ。

 ま、ここで俺らを罰してもこいつらの仕事が失敗に終わっちまうだけだからな。無視するに限るってか? 

 どうせダンジョンで死ぬんだから言いたいこと言っておけ、みたいな目で見てんじゃねえよ。俺は死ぬつもりはねえぞ。


 同じ理由からだろう、まずかったが飯はちゃんと食えた。

 やっぱりタローはいいとこの出で美味いもの食ってたんだろうな。奴隷の飯は喉が通らないらしい。

 だが無理してでも食っておけ。ダンジョンで動けなくなるよりマシだ。

 俺がそうアドバイスすると、元々頭はいいのだろう。すぐに納得してくれた。


 それから数日かけて大穴ダンジョンに辿りついた。ケツがいてえ。

 なに? 野営はダンジョンに入ってからだ? まあ、ここは魔属領だ。外も中も変わりあるまい。


 俺とタローはおとなしく従った。

 だが、俺たちに荷物を担がせるなよ。ああ、戦闘は騎士どもが負担するのか。じゃあしょうがねえ。

 タローはつらそうだがな。


 ダンジョンで何泊かしてようやく大穴の底についた。

 ここからが俺たちにとっての本番だ。


 絶対に生きて戻るぞ!

 タローもそんな意気込みを見せていた。


 しばらく底の探索を続ける。

 魔力食らいが現れないと意味がないからな。


 それにしても騎士から渡された武器はいただけねえ。新人冒険者でももう少しまともな剣を使ってるだろうよ。どうせダンジョンのゴブリンから分捕った鈍らに違いねえ。

 騎士ども、俺たちに勝たすつもりはないんだろうな。


「GSYEEEEEEEHN!!」


 ついに出やがった。


「メカゴ○ラじゃねえかよ!」


 よく聞こえなかったが、タローが何か言っている。ボンボンだから俺の知らない知識があるのだろう。

 だがここでは役に立たなそうだ。


 後ろの騎士は俺たちにもっと近づけ、もっと挑発しろと命令してくる。

 言うことを聞くしかねえ。じゃないと首が絞まる。そんな死に方はごめんだ。


 タローも腰は引けているが前に出る。なかなか根性があるな。相棒として合格だ。

 俺も負けちゃいられねえ。


 魔力食らいに勝つ必要はねえ。

 攻撃させてタローが踏みとどまればそれで騎士どもも納得するはず。

 あとはタローが魔力食らいから逃げ延びてくれればいい。


 俺は? あれ? 魔力がなくなってぶっ倒れたら誰が助けてくれる?

 クソッ! タローあとは頼んだぞ。俺を助けてくれよ?


「GSYEEEEEEEHN!!」


 うっ……ヤツの咆哮を聞いたら急に力が……これが魔力食らいか……ダメだ、意識が……


 最後に見えたのはヤツがタローを追っている姿だった。


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