第27話 もう俺いらなくね?
「さて、これで自己紹介を終わったことにして、AIの反乱も俺レベルじゃどうにもできないことがわかっただけで十分ってことにして……じゃあ、これからどうしよう? うーさん、アーたんが言ってたXデイっていつだかわかる?」
翔太郎は艦長席に深く座りなおし、シチュエーションがそうさせるのか、大して長くもない脚を組み換えると宇宙船AIに今後の予定を相談する。
「未定です。創造主様からの連絡待ちです」
「未定ね……千年封印されて、それが大した時間じゃないっていう神サマの感覚だから一体どれだけ待つことになるか。千年は勘弁してほしい……」
「オーナー。僭越ながら申し上げます。それほど待つ必要はございません」
「なんで?」
「創造主様の計画では、侵略者・プタルカが起こす事件を利用してこちらも行動を起こすことになっています」
「あー、そうだった。魔物の氾濫か。そういや、今年が大氾濫だから勇者召還したんだっけ。じゃあ、最長でも一年、早ければ明日ってこともあるのか……こりゃ早く準備しておかねえと。少なくっても計画の骨子は把握しておかねえとな。
うーさん、その計画って聞いてるよな。アーたんがうーさんに教えたって言ってた気がする」
「はい。オーナーへの開示許可も出ております。お聞きになられますか?」
「聞くよ。いきなりXデイ発動とか言われても困るしな。具体的には俺は何をすればいいんだ? 魔力の除去とか言ってたけど」
「オーナーは識別番号657C7-001A17-007の性能を覚えていますか?」
「いや、番号で言われても……船長とかの番号も覚えてないし」
「オーナーと創造主様がミニメカ○ジラと呼んでいた機体です」
「あー。うん。メタルドラゴンて聞いてたからそれなりのイメージしてたところでアレが出てきたからインパクトはあったな……千年封印されてて、なんでアレを知ってるのか気になるが、ファンタジー嫌いなのに存在自体がファンタジーな神サマだから追求はやめとくけど……それが?」
「はい。そのメカゴジ『メタルドラゴンって呼ぼうか』……はい。これより識別番号657C7-001A17-007はメタルドラゴンをコードネームとします。全AIに通達完了しました。報告を続けます。そのメタルドラゴンですが、機能の一つに放射能除去装置を改良した魔力除去装置を組み込んであります」
「ここはイスカンダルかよ。確かに時代は同じだったはずだけど、アーたん封印中逃げ隠れしてたって、まさか地球に潜伏してたんじゃないよな……まあいいや。話はわかった。その除去装置でこの世界の魔力を消すってことだな。でもあの一匹だけで? 世界中の魔力消すほど強力なのか?」
「メタルドラゴンは一体だけではありませんし、そもそもあれは実験機兼カモフラージュ役です。すでに最新型を本船ならびに小型艇に設置済みです」
「それって、もう俺いらなくね? 準備万端じゃん」
「これまで創造主様の指示で実験と準備は続けてきましたが、正式な所有者の方はいませんでした。大きな作戦行動になるとAIだけでは……こちらから創造主様にお伺いすることはできませんので」
「なるほど。これも方針の違いなんだろうな。SF派の神サマはいちいち現場に出張らないと。俺は現場監督みたいなものか。
俺の役目はなんとなくわかったが、俺にできるか? 戦いなんてわからんし、宇宙船の運用だってチンプンカンプンだ」
「計画書は創造主様から受け取っております。計画発動のタイミングでオーナーに実行の許可を求めますので都度許可を願えればこちらで処理可能です。オーナーはオーナーでいてくださればよろしいのです」
「至れり尽くせりだな。ダメ人間になりそう……まあ、今回はアーたんにとっても非常時だっていうし、おとなしく手伝ってればいいか。
じゃあ、それまで何してればいいんだ? 前線に出るわけじゃないんだから戦う訓練はいらないだろ……あっ! 忘れてた! アンドンはどうなってる!?」
翔太郎はガバリと食いつきそうな姿勢になって慌てて尋ねた。
「アンドンとはオーナーに前後して船に運び込まれたこの星の人間のことですか?」
「たぶん、そいつだ」
「その人間であれば、現在眠ったままです」
「いつ起きるかわかるか?」
「このままだと永遠に起きません」
「ハァ? アーたんは寝かせておけばそのうち魔力が回復して目が覚めるっていってたぞ? あれは嘘なのか?」
「いえ。おそらく創造主様のおっしゃっていたのは『船外で寝ていれば』ということだと思われます。船内は魔力が一切ありませんから」
「アーたん何故船に運んだ……って俺が頼んだんだっけか。船に魔力がないの知ってただろうに、教えてくれよな」
「創造主様は自らおっしゃっているように完璧な存在ではございません。しかも現在は非常に弱っておられます。単純に忘れていただけでしょう。それでどうなさいますか?」
「どうって聞かれても……どうすればいいんだ?」
「オーナーの意向どおりに、といいたいところですが、本船も創造主様と同じく千年前のダメージが残ったままです。できることは限られております」
「そのできることと、できないことを具体的に教えてくれ」
「はい。エネルギーが十分であればオーナーのように治療槽で本来の人間に戻すことができました。そうすれば彼も船内で活動することができたでしょう。現在は最低限の生命維持装置を使っているだけです。意識を回復させるためには船外に放置するしかありません」
「本来の人間て、嫌な響きだな。まあわかるけど。あれだろ? プタルカの野郎だかクソ女か知らねえが、アイツが魔力でこの世界の人間を変質させてその上ステータスなんてものを使えるようにしたんだろ? 魔力依存症か。麻薬よりヒデェな。
じゃあ、船の中に魔力を取り込むのは?」
「いけません! 断固反対します!」
「お、おう……」
宇宙船AIの思った以上の反応に一瞬反乱を疑った翔太郎であった。
「健康上の理由ではありません。そもそも本船がいままで侵略者プタルカに発見されなかったのは徹底的に魔力を除去していたからです。ダンジョンが至近距離にあったので罠の一部と思われたのも幸いでしたが、魔力が船内に充満しますと感知されかねないのです」
「わ、わかったよ。じゃあ、アンドンはどうすればいい? 俺は全然この世界のことがわかってないから、できればアドバイスしてくれ」
「わかりました。データを検索します……最善は魔族に助けられたということでダンジョンの外まで連れていきます。その後希望があれば魔族の村までは送って行けます」
「魔族? 知り合いがいるのか?」
「いえ。偽装したロボットです」
「ああ、納得。でも、人間と敵対してるんだろ? どうせプタルカが両陣営を煽ってるに決まってる。そんなところに連れて行ってアンドンが殺されでもしたら目覚めが悪い。人間側のほかの国に行けないか? 飛行機とかでビューンって」
「エネルギー節約という理由に加えて、本船が発見される可能性大です。推奨できません」
「世知辛いな……船長たち、何かいい意見はないか?」
「いえ、データは共有されていますので……」
「そうか……ダンジョンの外までは問題ないな。よし、俺が聞いてみよう。それからどうするかはアンドンが決めればいい。それで手配してくれ」
「オーナー自身が会うことは推奨できません」
「なんでよ?」
「これまでのデータを分析すると、オーナーは侵略者プタルカにすでにマークされていたと考えられます。今は死んだものとして扱われているはずですから、ここで生存を明かすのは悪手です」
「いや、アンドンは政府でも教会でもないぞ?」
「侵略者プタルカにとってステータスを持つものはすべて駒でしかないと推察します。オーナーは魔力を一切持ちませんから直接干渉はされませんが、関係者は本人の意思にかかわらず記憶などを精査される可能性があります」
「げっ、プライバシーもないのか。ほんとクソだな」
友人とはいえないが、同じく理不尽な目にあった同志の身の振り方に悩む翔太郎であった。
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