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第25話 根性で幽霊になれば裏技で神になれるかも

「プタルカを殺してほしい、と言ったんだよ?」


「いや、聞こえてるから。派閥闘争ってマフィアかヤクザの抗争みたいだと思ってたが、殺人依頼までされるとは思わなかった」


「殺人(●)じゃないから、一応アイツも『神』だから。それに、タロー君が正式に僕の遺産を受け継いで派閥の方針に従って活動するなら間違いなくファンタジー派に目を付けられるよ? 遅かれ早かれ戦いになるのは間違いないし、やるなら徹底的にだよ。僕みたいに生き延びてリベンジされても面倒でしょ?」


「……まあ、勇者召喚された時点で戦いに巻き込まれるのは覚悟してたけど、それとこれとは話が違うって言うか、相手が神って、虚弱な人間に期待することじゃないだろうが」


「あー、別に一人で玉砕しろって言うつもりはないよ? 僕の遺産はあるし、勿論僕が何もしないわけじゃないし」


「ちょっとビビっただけだ。覚悟はできてるって言ったろ? で、具体的に何をどうすればいいんだ?」


「それね。ウチの派閥は人間に細かい指示を出さないスタンスなんだ。だから方針だけ伝えるね?」


「既に人間とここまで接触しておいてそれか? 丸投げが過ぎるんじゃないか? 大体派閥とか連盟とかあるんならそいつらに救援頼めばいいんじゃないか?」


「それそれ。正に僕が手伝ってほしいことだよ。タロー君さ、一応は神である僕が、それも積極的に人間に干渉しないって公言してる僕がさ、わざわざ人間のタロー君に依頼するって矛盾してると思わなかったかい?

 正直非常事態なんだ。千年前プタルカに殺されかけて何とか逃げ延びたけど、今もダメージが残ってる。人間でいうと面会謝絶がやっと解除された程度なんだ。派閥の仲間に連絡ぐらいは取れるけど、それをやったらすぐに見つかって今度こそ僕は殺されるだろうね。だからこの千年じっと身を隠してたんだよ」


「千年も仲間の神は会いに来なかったのか?」


「この惑星ね、プタルカが結界張っててたぶん外からは見えなくなってる。『邪神封印』はアイツの出鱈目だけど、結果的に惑星ごと封印されてて外に出れないんだ。それに僕のダミーでも作って連絡とか誤魔化してるんだろう。神にとって千年は短くはないけど長いとも言えないしね。

 でね、ちょっと僕的には指示が細かすぎると思うけど、これも非常事態ということでキミの要望どおりに僕が指示しよう。あ、でも、今回だけだよ? あまりマニュアルに拘っちゃこれから先大変だよ?」


「わかったわかった。あまり新入社員をいじめるな」


「全く。いつまでサラリーマン気分なんだか……それで、やってほしいのは惑星結界を破壊すること。その方法はこの惑星に溜まっている『魔力』を除去すること。そのやり方はこの宇宙船に記録してあるからあとで確認してね。そして結界が破れたらすぐに脱出、行き先は僕の遺産、超巨大宇宙要塞さ。プタルカが追って来るから捕まらないでね。僕もその隙に脱出して救援を呼ぶから」


「おい、それって囮になれってことだろ? 殺人依頼どこいった?」


「あははは。それは結果的な話さ。勿論必ず仕留めるよ。宇宙要塞まで辿り着けばキミにだって十分対抗できる。まあ、僕の技術力を信じてよ」


「……信じるしかないか。わかった。その方針に従おう」


「わかってもらえてうれしいよ。遺産を継承しておいて尻込みされてもねえ?

 じゃあ、決行の日時はまた僕から知らせるよ。何かまたプタルカがやらかすらしいし、できるだけそれにタイミングを合わせたいね」


「ああ、『大氾濫』だっけか。プタルカは何でそんなマネするんだ?」


「向こうにも一応方針があるんだよ。『人類の発展をコントロールする』っていう如何にも神目線なね。押し付けがましいと思わない?」


「余計なお世話だな。まあ、人間も碌な連中じゃないからな。気持ちはわからんでもない」


「そうなんだよ! 僕たちがどれだけ怒りの鉄槌を我慢してるのか、アイツら(ファンタジー派)にはわかってないんだ!」


「……『人類に積極的に干渉しない』って方針の裏にはそんな苦悩があったのか……そりゃファンタジー派が嫌いになるわけだ。しかし、だからって何でそんな面倒な方針にしたんだ? 仮にも神なら好き勝手やればいいだろうに」


「それねー。ほら、僕たちの最終的な目標は『更なる高み』でしょ? 実際人類なんて滅びても関係ないんだけど、それは最後の手段に取っておいて、宇宙のエネルギーバランスの実験の一環だと思ってくれればいいよ。今(●)やってる実験が『管理している人類が自力で文明を発展させ種族進化すること』なんだよ。『自力で』って条件がミソだね。だから今(●)はなるべく干渉しないようにしてるんだよ」


「すごいよくわかった。今日の説明で一番わかりやすいぞ。もっと早く言えよ」


「あははは。そうかな? でも、物事には順序ってものがあるし。

 そうだ、種族進化が出たついでに『神』に至るプロセスも説明しちゃおう。人間から神に至るまではあと3段階残ってるんだ。

 僕ファンタジー派の連中は大嫌いだけど、ファンタジーそのものは別だよ? サブカルとしては高く評価してるから『ファンタジー用語』使うね。タロー君にもわかりやすいしね。


 それでファンタジー的に言うと、『レベル制』ってあるじゃない? スカウター的なハイパーインフレ戦闘力値じゃなくて『魂の位階』的な数値。神と人じゃ文字通り桁が違ってる。二進法でも十二進法でも構わないけど、例えば地球で一般的な十進法でいえば、非知的生命体、動物なんかは1桁1~9レベルで、知的生命体つまり人間は2桁10~99レベルって具合。ライオンと人間が戦ったら、とか考えちゃダメだよ? 文明とか技術を含めた総合評価だからね? 赤ん坊や脳筋も無視してね?」


「ドラゴンっているのか? 恐竜とか人間じゃ勝てそうにないが」


「だから戦闘力の話だけじゃないってば。まあ、いるところにはいるけど、個体差が激しいんだ。それこそピンキリ。知性のないトカゲレベルから『神龍』レベルまでね。

 説明を続けるよ?

 2桁レベルの知的生命体が3桁になったのを『超人』と呼ぶことにしよう。地球人視点だとネーミングが難しいね。ファンタジー作品だと『ハイヒューマン』とか『ハイエルフ』とか出てくるでしょ? あんな感じ。レベルで言うと100~999だね。『人間』も『超人』も言葉の上では同じ『知的生命体』だけど、明確な差があってね、知ってる? 『人間』って『脳の機能の30%しか使えない』んだよ?」


「つまり、『超人』は30%以上使えると……」


「正解。ファンタジー的にいうと『限界突破』的な?

 勿論いきなり100%になるわけじゃないし、個人差もあるよ。地球でも歴史に残る天才とか偉人がいるでしょ? かなりの確率で『超人』になってると思うな。まあ、精々35~40%ってとこかな? 何度も言うけど戦闘力じゃないからね? 

 100%に近づけば寿命も延びるし老化も緩やかになるけど、まだ一般の生物の範囲だね。その上の段階が『仙人』なんて呼ぶべき存在。1000~9999レベルだよ。ここまで来るとほぼ不老不死になれる。

 ああ、『ほぼ』と言ったのは、寿命がなくなったってことだけで、脳をやられたらあっけなく死んじゃうからね? キミも気をつけてね?

 大体、真の意味での『永遠』とか『不滅』って言うのは『神』ですら届かないんだ。それが僕たちが目指している本質だよ。

 そう、『仙人』が更に進化すると、肉体を捨てて精神だけで存在できるようになる。それが僕たち『神』の正体さ。だからSF的に言うと『精神生命体』と言ってもいいかもしれない。

 どう? 幻滅した?」


「それって、幽霊とかゴーストとかと何が違うんだ?」


「あはは。タロー君ブレないね。ちょっと感動しちゃったよ。

 ああ、ゴーストね? 僕的にはちゃんと進化のプロセスを踏んでないから認めない、といいたいところだけど、この大宇宙、絶対的な正義も悪もない世知辛い世界だからね。混沌の名の下に同じと言ってもいいんだけど、あえて言おう『力こそ正義』だと! みたいな? ぶっちゃけレベルが足りないね。さっきの例で言うとレベル10000は必要だよ。まあ、だから幽霊のまま修行してレベル10000に到達したら僕は『神』と認めるよ。だからタロー君も仮に死んじゃったとしても根性で幽霊になれば裏技で神になれるかも。がんばってね?」


「そんなことが聞きたかったわけじゃないが……まあ、死なないように気をつけるよ」


「うん、僕のためにもしばらくはそうしてね?

 よし! これで説明終わり! いや~、ついに協力者ができたよ。今日は記念日だね。あ、僕そろそろ休眠するね? Xデイに向けてエネルギー溜めておかなきゃだから。詳しい計画はこの機体に伝えるから、それに従ってね?」


 神ロボはそう言いながら自分を指差した。

 翔太郎は一瞬怪訝そうな顔をした後、目の前の『人間』がロボットだったことを思い出す。


「わかった。相談相手がいるならオレでも何とかできるだろ。ゆっくり休んでくれ」


「ふふ。一応これが直接会話できる最後の機会だよ? 何かまだ聞きたいことある? サービスで教えてあげるよ?」


 翔太郎は腕組みしようとして失敗し、左腕が義手だったことを思い出して苦笑した。


「いや、今日は、というか異世界召喚されてから混乱しっぱなしで逆に聞きたい事だらけだ。だから聞かない。その船長ロボにゆっくり聞くことにするよ」


「そうかい。わかった。じゃあ、僕は行くね。いつかキミも高みに昇ってくるだろう。その時にまた逢えるといいね」


「オレはそんな長生きできねえよ。ああ、そうか、癌は治してもらったんだったな。それだけでも感謝してるよ」


「ふふふっ、後でこの機体に聞くといい。じゃあね?」


 その言葉の後、神ロボの表情が消えた。


「……行ったか……」


「はい。創造主様とのリンクが切れました」


「いきなりでビックリしたな……」


 新たな出会いがあった。

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