第22話 神サマ嘘つかな~い
(……というようなことが、あったようななかったような)
『何気に拉致されてたのかよ!? 勇者召喚と合わせて1日に2度かよ! ホントだろうな!?』
(イヤイヤ。ホントだよ? 神サマ嘘つかな~い)
『信じられるか! 何人の頭ん中に埋め込んでくれてんだよ! 取りやがれ!』
(僕が埋めたんじゃないけどね? でもさ、そのチップのおかげでこうして助かってるんだし)
『そのチップのせいで「ステータス」も「スキル」ももらえなかったんだろ? 殺されそうになったのも結局チップのせいじゃねえか!』
(確かにそうなんだけど、それだとプタルカの思う壺だよ? 他の『勇者』と同じように使い捨ての駒にされるだけで何の説明も、本当のことも知らないままだったよ? その方がよかった?)
『……クソッ! わかったよ! 説明があるだけマシだよ! クソッたれ! どっちにしろ巻き込まれたんじゃねえか!』
(あははは。それについては運がなかったね。でも、そういうのを『万事塞翁が馬』っていうんじゃない? この出会いをチャンスに変えるかどうかはキミ次第だと思うよ)
『……わかった。そういうことにしておく。で? 色々ツッコミどころ満載の説明だったが、ワケのわからん理由で宇宙人に拉致されてチップ埋め込まれてついでに色々病気治してもらえたのはありがたいが、性格が変わったってどういうことよ。確かにそんな気がしないでもないが』
(そうみたい。キミ、子供の頃頭強くぶつけたことない?)
『……ある。オレが幼稚園……小さい頃隣の家の塀から飛び降りて着地に失敗してアスファルトに頭ぶつけて病院で何針か縫った』
(あはははは、そこは『オラがうんと小せえ頃~』って言わないと。でも、頭を強打して性格が変わるって、キミ、満月を見たら大猿に変わったりしないよね?)
『うるせえな。今同じこと思っちまったじゃねえか。それより、オレの性格そんなに変わったのか?』
(さあ? 僕がわかるのは表層意識とマイクロチップからの情報だけだし、お望みならもっと奥まで見てあげようか?)
『いや、それなら要らん。オレはオレだ。それでいい』
(うわー。男らしい。絶対変わってるよ)
『性格の話はもういいってんだ。肝心の相続権の話はどこに行った?』
(あ、そうだったね。星間連盟のことは何となくわかってくれた?)
『いや、全くわからん。変な宇宙人が3人いることだけだな』
(もっとたくさんいると思ってくれればいいよ。で、ぶっちゃけその連盟の人間なら皆相続権があるってことさ)
『ますますわからん。オレはその連盟なんかには加入してないぞ』
(キミに埋め込まれたマイクロチップが連盟所属の証明にもなってるんだよ。僕がキミを船内に引き入れたのもそれが理由。チップがなかったら放置してたね)
『そんな勝手な話があるか! まあ、命が助かったから文句は言えないか。じゃあ、何でオレだったんだ?』
(それは主観の相違というヤツだね。例えば宝くじ、LOTOじゃない方、その当選者に当たった理由を聞いたらどう答えると思う? 運、偶然。そんなところでしょ? 逆に運営側から見ると、必ず誰かが当たることになってるよね。
キミの場合も、もしかしたらチップを埋め込まれることも異世界召喚されることもなかったかもしれない。ここの大穴で捨て駒にされることもなかったかもしれない。
でも、僕から見ると、誰かチップを持った日本人がやってくればそれでよかったんだよね。ここって怪しまれてたからいずれ『勇者』が来るだろうしね。
ちなみに、プロジェクトXだかAtoZだかでチップを開発させたのは僕の派閥です。キミがここに来たのは僕の努力の成果ということさ)
『……つまり、何か理由があってオレが選ばれたわけじゃないと』
(あ~、それね、人間がよく陥りやすい、勘違いしやすい思考だね。ファンタジー派が大好きな言葉に『選ばれし戦士』なんてのがあるけどさ、選び方って色々あるでしょ? さっき言った宝くじだって『抽選』っていうし。
キミが拘っているのってアレでしょ? 企業が優秀な人材を三顧の礼でもって迎える所謂ヘッドハンティング。キミ、サラリーマンだったでしょ? 前の会社にはどんな選ばれ方をしたんだい?
ああ、別にイヤミじゃないよ? 条件に合った中から先着順で定員に達したら締め切り。コネや条件内での優劣ぐらいはあるけど、日本のサラリーマンの大部分ってそんな感じでしょ? 『選ばれし企業戦士・ブラック』みたいな? 『レッド』や『ピンク』があるかはわからないけどね。あ、なんか含蓄があるなあ。鬱な人は『ブルー』? 外資系の日本人は『イエロー』? 『ホワイト』は元々ないか。
どう? 選ばれた理由、ほしい?)
『神のクセに人の夢壊しやがって……』
(あはははは。だって僕、ファンタジー派なんてチョー大嫌いですから。あいつらこそ人間を薄っぺらな言葉で誑かすクズばっかりなんだよ? キミもこの世界でちょっとは見てきたでしょ?)
『……見たな……そういえば、ちょこちょこ出てくるファンタジー派ってのはもしかして神が大勢いて派閥作ってるってことか?』
(そうだよ~。これ、結構大事なことだからね、ちゃんと教えるよ。というか、遺産相続にも依頼にも関係あるからね。
キミ、躊躇なく引き受けたけど、まだ決定じゃないよ。そりゃ僕だって後継者ができるのはうれしいし、依頼を引き受けてもらえる、正に千載一遇のチャンスだけど、後から『話が違う』とか言われて依頼を放棄されるのも敵対派閥に鞍替えされるのも困るんだ。だから説明と思想チェックぐらいはするよ)
『……何か入社試験みたいだな』
(あははは。正にそのとおりだね。だから相続した後も気をつけてね? 僕だって目的があるんだし、ペナルティーや没収も考えてるからね?)
『それってもはや相続じゃなくて備品の貸し出しじゃないのか。だが、いいぞ、やってくれ。あっと、どっちにしろ引き受けるつもりだったから聞かなかったが、遺産のブツは何なんだ? それによってはやる気も出るかもしれん』
(タロー君、やる気だけは満点だよ? ちなみに、相続っていうのは、僕が生前使ってたものを譲渡するのだから相続で合ってま~す。没収に関しては、裏切った後は敵だから遠慮なく武力で奪い返します。所詮この世は弱肉強食ですから~)
『お、おう……わかった……で? ブツは?』
(ホントわかってるのかな~? 『生前』はスルーだし~。
まあいいや。ブツは……遺産の項目は『惑星級超巨大宇宙要塞』1ヶ、『衛星級巨大宇宙要塞』4ヶ、付属として『特大・大・中・小型宇宙戦艦』各種盛り合わせ、細かい備品については今のキミの精神だととても覚えきれないから後日資料を見てね。ま、こんな感じ」
『……お前は、オレに宇宙戦争をさせるつもりなのか? それが依頼か? 宇宙の支配者にでもなれと?』
(まさか。これっぽっちの戦力じゃ宇宙の支配なんてとても無理だよ。頑張るのはタロー君の自由だけどね。応援はするよ?
僕的には『お古をあげるからその代わりにちょっと手伝ってくれない?』ぐらいの感覚だよ。そのあとはキミの自由にしてもらっていいんだ。ただし、自由にも限度があるからねぇ。お古でも一応後継者ってことになるし、派閥に害を与える存在じゃ本末転倒だからね。
正式な依頼内容は思想チェックが済んだ後になるから、その前に断ってもいいんだよ? 僕にとっても残念だけど)
『フハハハハ! 面白い! 異世界転移でファンタジーな世界に来て、一人だけチートなしの展開に転落チートでも発生するルートかと思ってたら、いきなりSFチートか! 面白い! しかも神自身に選ばれたわけじゃないと否定されるとはな! ならこれはオレの運だ! 宝くじが当たったらそれを放棄するか? 否! 意地汚いと言われようが、オレは手放さん! 必ずこの遺産を相続してみせるぞ! さあ! 圧迫面接でも何でも来い! 正々堂々受けてやる!』
(アツすぎる!? 圧迫面接だなんて失礼だな。ウチは『ホワイト』だよ?
キミ、ホントに性格変わったみたいだね。これじゃ『企業戦士ブラック』じゃなくて『企業戦士レッド』がお似合いだよ。まあ、まだ元の会社の影響が残ってるみたいだけど。キミが受ける面接は平社員レベルじゃないんだからね?
わかってる? 独立企業のトップになるようなものだよ? 責任と義務はどこの世界に行っても付き纏うんだよ? 耐えられる?)
『大丈夫だ! 今のオレならできそうな気がする!』
(うん、ドーパミンがドバドバ出てるね。少し落ち着こう。ノルアドレナリンとセロトニンをこう……どうだい? 落ち着いた?)
『……オレは最初から落ち着いているぞ。さあ、説明を続けてくれ』
(……脳内物質のコントロールの仕方を今度訓練しようね?
それはさておいて、おや? 身体の治療が一先ず終わったみたいだ。癌細胞は除去したし、左上腕の断裂部分のクリーニングも上手く行ったよ。どうする? 一旦外に出てみるかい? 説明は船内でもできるからね)
『……そういえば、オレは何故水の中に入っているんだ?』
(いまさら!? 治療槽って言わなかったっけ?)
『治療って、癌のか? 左腕がどうしたって? 目も見えないし、身体の感覚が全然ないから今一わからん』
(あー、これは僕の配慮が足りなかった。ごめんね? 意識を失った時のこと覚えてる? 落とし穴に落ちたんだけど、実はね、船のエアダクトを無理矢理キミの足元まで伸ばして瓦礫ごと回収したんだけどね、気密シャッターを閉じる時ね、そのね、キミの左腕挟んじゃって、肘から先が千切れちゃったんだ。ゴメンね? 騎士から攻撃されるところだったし、緊急事態だったんだ)
『そうだったのか……そういや、何となく痛かった気がする。まあ、命を救ってもらったんだ、感謝してるよ。そうか、左腕無くなっちまったのか……』
(あ、腕なら治せるよ? 勿論)
『マジかよ!? エリクサーとか神聖魔法とかか?』
(キミ、僕がファンタジー派嫌いなの知ってるよね? ワザとなの? まあ、いいけどさ。
治療法はいくつかあります。
1番、このままそこに浸かってる。そのうち生えてきます。
2番、左腕だけフラスコで培養してから移植手術します。
3番、義手にします。左腕だけどカセットアームです。知ってるかな?
4番、サイコガ 『4番で!!!』 食い気味だね!?)
『4番で!!!』
(そんなにかい!? 左腕だからネタで言ったつもりだったんだけど……)
『え? やっぱり問題があるのか? 版権とか……』
(何の心配? 違うよ、僕は神サマだよ? リスペクトって言えば大概大丈夫だよ、って、そうじゃなくて、できるけど、コスパがよくないんだ。火力重視なら義手に色々機能を付けたほうがお勧めだよ。操作性だって一々取り外ししなくてもいいし。もしどうしてもっていうのなら外見だけそっくりに多機能で作ってあげるよ。ただし、名前は最高の性能ということで『サイコーガン』でお願い)
『じゃあ、どうしてもで』
(そんなに!? ……わかったよ。でも、名前は気を付けてね)
『やっぱり版権が(違うよ!!!)あ、食い気味……』
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