イソス・フランティー
体育館に到着すると中から歓声が聞こえてくる。
試合をして応援してた生徒が騒いでいるのか。
そうなんだろうと思い体育館の中に入ると2人の生徒、つまり、この学校で1番人気の林家ころ様と殿宮ひとみ様が活躍していた。
2人はこの学校で有名で誰人ぞ知る恋人同士である。
特にスポーツは成績優秀、今はどの部活にも加入してない参加型の幽霊部員だとか。
活動してないから幽霊部員なのでは?と思うがその辺は人それぞれ見方が違ってくるのだろう。
私はそんな2人で応援中の生徒たちの間をくぐって恋人である峰可憐がいる場所へたどり着いた。
彼女はバレーやバスケなどのボールを管理、清掃している役割を受けている。
部活動とはいえないが、それが彼女にとって気分が良い作業だとか。
だから、1人体育用具室でボールの整理をしていた。
「やっほー、可憐、またボールの世話してたの?」
むっとした表情で私を見つめる。
「世話じゃないっての、これが私の愛情表現」
「似たような物だと思うけど」
「全然違う、愛する物に魂は宿るっていうでしょ、だから私は魂を磨いてるの」
「よく理解できないなー。だから、可憐の家には物がいっぱいなのか」
「人の家をゴミ屋敷と言わないでよね」
「言ってないよ、それよりさっき変なの見ちゃってさ」
「変なの?」
「いつも私が読んでる百合漫画あるでしょ」
「あー、イソス・フランティーが出てくるやつ」
「そうそう、それでそいつが現れたのよ」
「漫画に?」
「違う、リアルでこの場で」
「ぷっ、それはありえないでしょ。あのツンツンして自分に得することがあるとデレデレする悪役令嬢だよ。リアルに存在するほうがおかしいって」
そう可憐が言うと何処からか殺気を感じるのは気のせいだろうか。
自分の後ろからすごい視線を感じると思うと、そこには先程のイソス・フランティーが私達のほうを睨みつけていた。
「あーなーたー達―」
「うわっ」
2人とも悲鳴をあげると、そこにいたイソス・フランティーはツンツンと歯向かってくる。
「あなたね! 急にいなくなったと思ったらここで私の悪口だなんて卑怯ですわよ。闘うなら真っ向勝負で私に歯向かってきなさい」
「出たー」
「こら! 人を化け物みたいに言うのはよしな」
よしなさいと言い終わろうとした途端、イソス・フランティーの頭にボールがぶつかった。
その瞬間、下を向いたので、体育館内にいた全生徒は落ち込んだのかと誰もが思った。
「ごめんなさい、ボールが当たっちゃって。怪我はしてない?」
先程まで館内でバスケをしてた林家ころ様が手を組んで謝っていた。
その横では恋人の殿宮ひとみ様が様子をうかがっている。
「ふふふ……」
「あ、あのー」
「ふふふあはははは、いいですわ! その勝負! 受けて立ちますわ」
「は?」
私はぽかんと口を開けるしかできなかった。




