始まり
それは何も変わらない同じ毎日の繰り返しだと思っていた。
ある日、それが起きるまでは。
聖ガハラ女学園、いわゆる女子高だ。
全校生徒完璧な女子、お姉さまと妹を結ぶ制約も見受けられる。
スポーツの成績もまあまあ、学力もそれなり。
ここまではどこにでもある女子高だが、1つだけ違う。
それは全校生徒みんな百合好きなのだ。
百合本、百合ゲー、百合グッズ、百合アニメとその個人にとって様々な趣味が見受けられる。
幼馴染同士で付き合う者、姉妹同士、先輩後輩同士、しかも先生たちまで愛を交わす。
ここは男子禁制唯一の花園だ。
私、根愛花が図書室で唯一ある百合本を読もうとしてる時であった。
その本のシリーズは毎週事に新刊が置かれていく。
どういうストーリーかというと現代の女子高が異世界に転移されそこで会った悪役令嬢と恋をする、まあどこにでもあるお話だ。
そのシンプルさがとても魅力的で特にこの悪役令嬢であるイソス・フランティーがトゲトゲしく時に甘々な性格で私はこんな出会いをしてみたいと願っている。
百合本のタイトルは内緒だが、ここは図書室でみんな趣味が百合なのだからこそこそ隠れず読まなくてもいいのでは?
そうだ、隠れる必要はない。
正々堂々としてればいいのだ。
目の前にある席に座りテーブルにその百合本を置きパラパラとめくる。
時折、受付で眼鏡女子が恋人らしい人と愛を語り合う声が聞こえるのが耳障りだが。
そんなこともありつつ、熱心に百合本に集中してると突然雲が真っ暗になり始めた。
「これは一雨降るな」
今日でこの新刊を読み終えようとしていたが雨が降るんじゃ早めに帰るか。
バイバイ、イソス・フランティー。
貴女の愛情表現もっと見たかった、だけど、天気が悪いのなら帰るしかない。
別れを告げその本を元の位置に戻すと突然雷が鳴った。
その瞬間、私は気を失った。
ゆさゆさ。
体が揺さぶられている?
私は気が付くと受付にいた眼鏡女子が私のことを見下ろしていた。
「気が付いた?」
「すぅ、いたたたた、いや痛くない? あれ?」
どうしてこんな所で気を失ってたのか理解できなかった。
先程まで百合本を読んでそれを元の位置に戻した瞬間は覚えてる。
そして、雷が鳴ったような。
それ以降の記憶がない。
私はその瞬間倒れたのか。
そうふわふわ考え事をしていると眼鏡女子は口を開いた。
「誰か入ってきた」
「え?」
眼鏡女子の目線の先には窓から昇降口が見える。
そこから誰か入ってきたという。
私からにはその人物を捉えることはできなかった。
「それよりも、十都、貴女は大丈夫?」
眼鏡女子は私のことはお構いなしで相方の生徒に声をかけていた。
「ええ、大丈夫よ」
そんな2人を見ていても仕方ないので、私は起き上がり図書室から出ることにした。
図書室を出ると、何やら下の階が騒がしい。
女子高特有の悲鳴から怖い者見たさの悲鳴も聞こえる。
もしかして不審者が来たとか?
そう思い私は下の階に降りていった。
「キャー」
「サインしてください」
なんだなんだ?
芸能人かアイドルでも来たのか?
下の階に着き騒ぎのほうを見るとそこにはツンツンと跳ね上がった髪の毛。
どこの学校かも知らない規則正しい制服。
周りの女子たちに囲まれあたふたしてる姿。
どこかで見たことがある?
そんなことをふと思うと私は頭の中を巡り合わせた。
そして、あっ!と気づいた瞬間私はその人のほうを見て指をさした。
「イソス・フランティー!!」
その声に気づいたのか、周りを囲んでいた女子たちもイソス・フランティーも私を見つめる。
「貴女、どうして私の名前を?」
どかどかと足音を鳴らしながら私の目の前までやってくる。
私は突然のことに驚くことしか出来ない。
「え、いや、でも気のせいだよね。あの本のイソス・フランティーが現れるはずないし」
「私の存在を消さないでくれるかしら?」
ぴきぴきと怒り私の顔をつねる。
「ごめんなさーい、事実でした」
「それで、私を知ってるあなたは誰なんですの?しかも、ゼンサ界に突如として現れたこの建物、見たこともない女の子達。謎ばかりですわ」
「は?何を言ってるの?」
「それはこっちが聞きたいですわ」
まず、説明しよう。
それしかお互いの存在を知らせる手段はなかった。
いや、私がそのゼンサ界?とやらに顔を出せばいいわけだが。
何故か外に出る気が起きない。
とりあえず外に出て確認する前に情報を聞いて頭の中で整理するのが先決だ。
「まず、ここ日本だよね?」
「はぁ? 日本って世界地図を見ても載ってないわよ」
「マジ? でも、あなたはイソス・フランティーなわけだし、もしかして私が本の世界に入っちゃったとか?! それはありえるかも、だって、あの雷があっておかしくなっちゃったわけだしこれはもう一度あの雷に打たれないと元の世界に戻れない。うわー」
「あの」
「あぁ、お母さんとお父さんに別れの挨拶をしておけばよかった、いや、でも恋人にも伝えるべきだった? そうだ、可憐は元気にしてるのかな? それこそ、確認にしに行かないと!」
「あなた、少し黙ってくださる?」
何故だろう、イソス・フランティーが怖い表情をしているのは?
「そんなことより、可憐の存在のほうが大事だよ」
私の恋人である峰可憐のほうが気になった。
今はイソス・フランティーのことはどうでもいい。
あの雷に打たれてないか、怪我をしてないかの方が心配でたまらなかった。
イソス・フランティーから離れると私は体育館へと向かった。




