第81話 ニューヨークを仕切ってるドン・カルチオーネです
天鬼りあ、もうすぐ17歳。ママを心配させるお年頃。
そんな過保護なママを安心させるために一芝居打つことになりました。
「…こ、ここは……っ」
立ち尽くす私の前にそびえるのはPOPプロダクションの悲しい事務所…じゃない。
どこの外資系事業ですか?っていう立派でかっちょいい、黒っぽくてどこに入り口があるのかよく分かんないビルでした。
よく見ないと見つからない玄関に「株式会社POPプロダクション」って書いてるよ…
「……こ、このビルは……?」
隣でドヤ顔してる万理華さんに問いかける。
「……買ったの?」
「買えるか。借りたの」
「え?ビルってそんな簡単に借りれるの?」
「ここは貸しスタジオよ。ドラマとか映画の撮影に使ったりする」
へぇ……
「あのオンボロ倉庫に案内するわけにはいかないでしょ?ここならちゃんとした事務所だって親御さんも安心できるでしょ?」
万理華さん……っ。
「やっぱり好きだよね?私の事……」
「いい加減にしなさい?」
「だって…私の為にこんな…お高いんでしょ?」
「一時間500円」
「えぇ!?そんなに安いんですか!?」
万理華さん…こんなスタジオ借りたりサーキットフェスの出場決めてきたり…何者?
やっぱりお母さんが凄いから?
「いいなぁ…そんなに安いならここに引っ越せばいいのに…」
私の隣でビルを見上げてほぇ~ってしてるはーちゃんがもっともな事を…
「……なんでみんな居るのよ」
万理華さんが呆れながら尋ねる先には『FOOLS』が勢ぞろいだった。
わくわくが抑えきれないって様子の紗良ちゃんがソーシャルディスタンスを破壊しながら…
「りあちゃんのおかーさん来るんでしょー?会いたいじゃん?」
「別に面白いものじゃないよ?」
肩を組んでくるせいちゃんは朝から酒臭いよ…
「挨拶しなきゃね」
「ご迷惑じゃなければ…」
控えめに言うはーちゃんの顔にも好奇心が隠しきれてない。
いろいろ言いたいけど、わくわくってオノマトペを頭の上に浮かべた琴音ちゃんを見たら、もう何にも言えなかった。
私のママの何にそんなに関心を惹かれるのか皆目見当つかないけど…そんな不思議なメンバーにリーダーが釘を刺す。
「みんないい?りあのお母様は今日、この事務所が安心できる会社なのか見に来るのよ?あんた達が変な事したら台無しなんだからね?いい?紗良、星羅」
「「大丈夫。万理華の事はちゃんと見てる」」
「あんたらが不安なのよ(怒)」
……みんな、こんな事してる時間あるのかなぁ……?
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「おい星熊、うち、いつの間にか株式会社になってんぞ」
「夢が叶いましたね、社長」
「東証に上場できるかな?」
「ほざくだけならタダです」
見事なまでの外資系企業のオフィスでもう星熊さんと社長が待ってた。
「おいっ!!中に子供がいるぞっ!!琴音っ!!お友達連れてきたらだめでしょっ!!」
「誰がお友達だ」
「紗良、うちの社長よ」
万理華さんの紹介に雷の利かないゴム人間に驚く神みたいな顔をする紗良ちゃん。
「あれ?紗良ちゃんって社長と初対面?オーディションで入ったんだよね?」
「オーディション居なかったもん。はーちゃんのオーディションの時居た?」
「ううん。そういえば契約のタイミングでは会ってないや…琴音ちゃんとせいちゃんは?」
「初めましてだよ」
「ここ禁煙?」
社長の顔も知らないで契約ってヤバいのでは…?私もだけど…
「その点についてどうお考えですか?社長」
星熊さんが意見を求めるけどちびっこ社長はムスッとしたまま万理華さんを睨んでる。
「なによ?」
万理華さんも社長に対する態度じゃなかった。
「なんでこんないっぱい連れてきたんだよ」
「勝手に来たのよ」
「こんな簡単に会える社長じゃ大物感ないじゃん」
後ろのパキラに存在感で負けてる身長140以下(目算)の社長が電子タバコを咥えた…
「だめよっ!!子供がそんなの吸ったら身長伸びなくなるでしょっ!!」
けど、せいちゃんに奪われた。
「ふざけんな返せ!!」
「スパーッ」
「おいっ!!吸うなっ!!充電するのにも電気代かかってんだぞっ!!」
ただっ広いオフィスの中でじゃれ合ってる親子みたいだ…
「あ、星熊さん。今日はうちのママが吸いません」
「天鬼さん。こういう時は「すいません」より「すみません」の方がいいですよ?また誤変換してますよ」
「吸いません」
「直ってないですよ?パソコンで書くのやめた方がいいんじゃないですか?」
「でも…作syが折角ノートパソコン買ったので…」
「もう「作者」打ててないじゃないですか。タイピング下手すぎです。タイプミスで割り食うのは登場人物なのでやめてほしいですね…私達は文字でしか存在できないというのに…」
「……二人とも、なんの話してるの?(汗)」
「何でもないよ、琴ちゃん」
「鏑木さんにもいずれ真実をお教えします」
世界の真実に肉薄してたらオフィスに綺麗なおねーさん(大好物)がやってきた。
「え?誰?」
「エキストラ。社員が星熊だけじゃおかしいでしょ」
万理華さん…これがリーダーの頭脳…
「社長、お客様がお見えです」
「そっち社長じゃないんですけど?(怒)」
せいちゃんの方に行っちゃった報告に社長がキレてる。せいちゃんが「うむ」って頷いた。
「お通ししてよろしいでしょうか」
「お通しは何かな?」
「は?」
「メンマがいい…冷ややっこは好みじゃない」
「……??」
「出来の悪い秘書だなぁ…チューするぞ?」
「????」
……来たみたいだ。
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「万理華、来たぞ~」
「星羅は電子タバコやめなさい」
オフィス(偽)でりあのお母様を待ち構える私達。星羅の声掛けにすりガラスの扉の向こうを見る。シルエットが見えた。
私達の前についにその人が…
「こちらになります」
「Merci beaucoup」「C'est une belle entreprise」
「C'est par ici, Monsieur 」
姿を…
「……なんだ?この怖い兄ちゃん達」
社長がビビってる。
エキストラさんの案内で入ってきたのは私達の予想とは違いすぎる光景。
お母様が来られるって聞いたら普通、お母様がお一人で「こんにちは。娘がお世話になっております」って来ると思うわよ。
思うわよね?
まさか全身黒スーツにサングラスの謎の男達が来るとは思わないわよね?
なにこれ?
「……え?」
見なさいよ。りあもびっくりしてるじゃん。
誰よこいつら。
琴音がビビって背中に隠れるくらいの威圧感満々の連中の奥から、一際ゴツイ二人にサイドを固められた、白髪を後ろに撫でつけた男が現れる。
ディアドロップ型のサングラスの奥から虎みたいな眼光が覗く。顔に刻まれた険しい表情…長年激しい潮風と荒波に晒され続けた岸壁を思わせる。
とにかく、周りに居る連中の物々しさも相まって、世界に誇る法治国家の首都、東京のど真ん中に現れていい風貌じゃないんだけど…
端的に言ってマフィアなんだけど……
「ひゃ…110番????」
あの、違法カジノで殺されかけてもギャンブラー魂を忘れなかった星羅が震えてるんですけど。
今日ってりあのお母様が来る日だよね?
「…社長、マフィアから借金してたんですか?」
「してねぇよ」
「じゃあ金盗んだとか…?」
「お前じゃねーのか星熊」
もう懐に拳銃忍ばせてるとしか思えない、マフィアの構成員の間からゴットファーザーが出てくる。
たったそれだけでうちの社長は「ひいぃぃぃぃっ!!」って悲鳴上げて腰抜かしてたわ…
いったい何が起きてるのか分かんないけど…
「あの……すみませんが、どういったご用件ですか?(震)」
「(万理華いったっ!!)」「(怖くないのかな…)」「(万理華さんが…殺されるっ!!)」「(震えてるよ…)」
男の猛獣みたいな眼光がこっち見た。構成員達が私を取り囲む。
もうおしっこちびりそうなんだけど…
……でも、マフィアのボスは巌みたいなその顔をにっこり破顔させた。
あれ……?
「パパぁ!?」
私の後ろからりあの素っ頓狂な声が飛ぶ。
パパ?
パパって何?ファーザー的な?
「いつ日本に来たの!?」
……言いながらりあがファーザーに抱きついた。ファーザーが大きな体でりあの体をすっぽり包んじゃった。
「りあ、居たの」
「あ、ママ」
黒づくめの男達の隙間から安心感の塊みたいなご婦人が出てきて、りあがその人をママって呼んだ。
「……ご両親みたいですね」
……マフィアのファーザーはりあのお父様?
星熊が状況を整理して呟いたのと同時に風呂敷担いで逃げ出そうとしてた社長が安堵の笑みと共に歩み寄る。
「あ、社長。この人はパパです。あと、こっちがママ」
「そーだよねそーだよね」
「お世話になっております。りあの母です」
「どもども。社長です」
……なんて中身のない自己紹介。
それにしても怖いパパだな。一緒に来てるこの黒服のボディーガードみたいのはなんなんだ?
一方、完全に緊張が解けたバカ社長は調子に乗り始める。
「いや~、お父さんすごい迫力ですね~。マフィアのドンかと思いました」
失礼すぎるだろ。
「うふふ。こちらは私の夫で、ニューヨークを仕切ってるドン・カルチオーネです」
「ヨロシク」
凍り付いたわ。




