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第59話 火災!?

 スタジオを借りる人達ってどんな人達なんだろう…

 POPプロダクションの(借りた)スタジオに到着した私には三人の連れ合いがいた。


 公園で出会った美女三人組は目的のスタジオの入ったビルの前で深々とお辞儀をしてくれた。これには闇の帝王もにっこり。


「ありがとうございました。助かりました」

「なにかお礼を……」

「よろしければ、ご連絡先など教えていただけませんか?」


 なんて丁寧な人達なんだろう…

 包み込んでくるような包容感。心地いい礼節。人助けをしてこんなに気持ちがいいのは初めてだよ。

 けど私は道案内しただけだ。それも、自分と目的地は同じ。


「そんな……気にしないでください」


 ママも言ってた。どんなに良さそうな人でも知らない人に連絡先教えちゃダメって。

 丁重に辞退する私は頭を深く下げ返してビルに入っていく三人を見送った。


 ……さてと。


 スマホを確認すると集合時間5分前。私も呑気にしてられないや。

 お姉さん達の後を追う形で私もビルに入っていく。


 エレベーターホールでお姉さん達と数秒ぶりの再会。白ワンピお姉さんが「あら」って振り返って微笑みかけてくれた。



「もうご案内してくださらなくても大丈夫ですよ。ありがとうございます」

「いえ、私もこのビルに用があって」

「そうだったんですね」


 うふふって笑いながらエレベーターに…

 私の向かうスタジオは四階。私と白ワンピのお姉さんが同じ階に同時に指をかけた。

 再び顔を見合せて「あらっ」って。


「同じ階なんですね」

「そうですね」

「もしかしてダンスとかやられてるんですか?」


 黒いお姉さんが後ろから質問してきた。無言でエレベーターに乗ってるのも居心地が悪かったのかもしれない。


「まぁ……そんなところです。お姉さん達もですか?」

「ええ……」「まぁ、そんなところです」「……」


 へぇー……


 エレベーターでの移動時間って人生で一番無駄とか言うけど案外その時間は一瞬で、四階程度なら瞬きの間に到着して、じれったい動作のエレベーターの扉が開いた。


 今度こそお別れかなってエレベーターの前でさよならの会釈をしながら…


 私達は同じ方向に歩いてた。


「あら」

「あら?」


 このビルの四、五階は私達が借りてるスタジオを管理してる会社さんが借りてるテナントらしい。

 四階フロアには廊下に等間隔に並んだ扉がいくつかあって、番号が振られてる。全てスタジオだ。


 同じ階。同じ方向。


「あら?」

「あら?」


 んでもって同じ番号の扉に同時に手をかけた私と白ワンピお姉さんはまたしても顔を見合せて目を丸くする。


「……あの、ここは私達が……」

「変ですね……私達もここを借りてるんですけど……と言っても今日からですけど……」

「……」

「……」

「……とりあえず、入ってみましょう」


 日傘糸目お姉さんがぽつりと提案した。


 ……なにかの手違いかな?


 そう思いながら扉を押し開いたら……



「みんなに残念なお知らせがあるわ。ここのスタジオの料金は私達が折半する事になったわ」

「なんで!?」


 悲しいお知らせと共にまず耳に飛び込んできたのは万理華さんの声。

 ……先日ASMRの話をしたあと、二人で過ごした時間が蘇る。私の囁きボイスで骨まで溶けてたあの痴女の姿はどこにもないよ。


 そしてびっくり仰天するのは我が愛しき『FOOLS』のメンバー達。合宿以来初の全員集合だ。


「あ、りあちゃん遅刻ー」


 マイケル・ジャクソンみたいなポーズで指差してくる紗良ちゃんが私の背後を隻眼で捉えて「ぽうっ」て吠える。


 私の後ろ手ぽかんとするお姉さん方。


 見知らぬ来訪者の姿に琴音ちゃんが素早くジ〇イソン・ステイサムのマスクで顔を隠した。


「りあちゃん、その人達は…?」


 はーちゃんが寄ってきて尋ねるけど、それはこっちが訊きたい。


「何もんですか?ここは私達が使うスタジオなんですけど?頭ねじ切りますよ?」


 オラオラって感じで寄ってきたチンピラ全開せいちゃん…

 その目の下に隈ができてるのを私は見逃さなかったよ。


「……せいちゃん、寝不足?」

「そんな事より、この人達だぁれだぁれ?」


 なんか機嫌悪そうだぞ?


「……あれ?夏祭さん?」


 その時だった。

 私の後ろをじっと見つめる万理華さんと目が合った白ワンピお姉さんが素っ頓狂な声をあげたのは。

 真っ先に反応するのは我らがトリックスター紗良ちゃん。万理華さんの苗字「夏祭かさい」を「火災かさい!?」って自動変換。

 わざとやってるのか否かは定かじゃないけど…この人「取り壊すから荷物持ってこい」を「鳥殺すからモツ持ってこい」にした前科有るからな…


「火事だぁぁ!!」

「チゲーヨオチツケ」

「琴音!!逃げるぞ!!あの窓から飛び降りるんだ!!」

「オリレルカシヌワ!!」

「なに!?窓の位置が高くて登れない!?仕方ねーな私が抱っこしてやるよ」

「ヤメロバカタレ!!」


 ……これはわざとだね。


「……?……?」


 万理華さんの方を伺ってたらお姉さん達が「久しぶり」って嬉しそうに破顔しながら万理華さんの方へ寄っていく。


「不法侵入者だぁ!!ここは私の部屋だぞ!!」

「違うよ?せいちゃん。ここに住む気?」


 はーちゃんがツッコミながら機嫌の悪いせいちゃんをなだめてる後ろで「ヨシ!」ってしてる仕事猫みたいなポーズで紗良ちゃんが壁際に歩いてるのを目撃した。


 嫌な予感したけど一旦無視して私達は万理華さんを見る。


「……みんな大丈夫よ。この人達は…」


 万理華さんが説明仕しかけた時でした。


「これにゃーんだっ」

「サラヤメロ!!」


 ポチッ。



 ふざけ半分で紗良ちゃんが押したボタンには『排煙口解放装置』って書いてました。


 平和なビル内に火災警報がめっちゃ鳴り響きました。

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