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第44話 幼児も居るのよ!?受動喫煙って知らないの!?

 ブロッコリー式アイドルレッスンが終わったその夜…私達はリラックススペースに集まってた。



 どういうアイドルになりたいか考えておいた方がいいわょ♡



 て言われたから考える事にした。


「私達のなりたいアイドル像」


 倉庫から引っ張り出したホワイトボードを前に万理華さんが司会進行。


「みんなはどう?……って紗良、何してんの?」

「撮るんだよ。これも動画にしよーぜ」


 三脚にスマホを立てて録画を開始する紗良さん。


「へいへーい♪POPプロダクションの超新星!アイドル業界に突如として出現した激カワアイドル候補生紗良ちゃんだよー☆お前ら震えてるー?」

「……もう挨拶考えてる」


 はーちゃんの感嘆の声を皮切りにミーティングが開始される。


「天鬼はなんかあんの!?」


 相変わらず語尾の勢いだけは強い朋花ちゃんが私に振ってきた。

 天鬼りあの考える理想のアイドルユニット。


「……私はとりあえず…みんなでイチャイチャしたい…いや、それを眺めたい」

「どういうアイドルになりたいのか訊いてんねん!!」

「やっぱりアイドルといえばフリフリの服着てカワイイ曲歌ってってイメージだよね」


 はーちゃんはカワイイ系のアイドルを夢見てるみたいだ。万理華さんがカワイイ系ってホワイトボードに書き込む。


「でも私の趣味じゃないなー」


 ってせいちゃん。


「やっぱり今ってK-POPとかが流行りじゃん?キレキレのダンスとカッチョイイ衣装でさ?腰振りまくって…」

「確かに……腰フリフリはいいとして……せいちゃんとか紗良ちゃんは似合いそうだね。でも僕としては琴音ちゃんにはフリフリ着て欲しいな」

「カッコイイ系ね……」


 ホワイトボードにカッコイイ系が追加。


「私は……K-POP好きだな」

「でも琴音ちゃん、ああいう系って露出いっぱいのセクシーな服着るんじゃない?僕はね〜……琴音ちゃんにはやっぱりリボンがいっぱいの…」

「……着るもん」

「琴音は幼稚園の制服とかが似合うと思うぞ?がはははは」

「誰が幼稚園児だっ!!私が着るんだったらお前も幼稚園児の服着るんだぞ紗良!!」


 幼稚園の制服を着た琴音ちゃん……合法ロリ……じゅるっ。


 ここで既にお眠なせいちゃんが挙手。


「そういえば『THREEPIECE』ってどういうグループだったの?曲とかは王道なアイドルって感じだったよねー」

「……」

「万理華ちゃんが可愛い服着てニコニコしてんの想像できないけど…」


 せいちゃんがおもむろにスマホを取り出すのを見て万理華さんが「待ちなさい」って全力で止めに入る。

 抵抗するせいちゃんとソファの上でくんずほぐれつ……


「ちょっとやめてよ!!」

「検索しなくていいから!芸能人の前でエゴサとか非人道的!!」

「やめて!!いやんっ!どこ触ってんの!?このぉ!!」


 ぶちゅーーっ


「んんっ!?」

「がはは!聖羅はホントにキス魔だなー」


 てぇてぇなぁ……せいちゃんのポテンシャル高いよなぁ…このフランクな性格…誰とでもカップリングが成立するよ…


「でゅふふふっ」


 さて、POPプロダクションでかつて活躍した『THREEPIECE』とは……せいちゃんのスマホがかつてのライブ映像を掘り出した。


「やめてっ!!」


 万理華さんの悲鳴じみた静止の声を無視して動画が再生される。


『THREEPIECE』はその名の通り三人組のユニットみたい。みんなガーリーな感じでピンクとか水色とかの明るい色調でフリフリな衣装に身を包んだ美少女達がライブハウスでパフォーマンスしてる。


『THREEPIECE』のパフォーマンスは曲から予想できるように可愛らしくて、男性ファンに人気が出そうなビジュアル。

 アイドルに触れて来なかった私が初めて観る本物のアイドル…

 可愛かった。

 万理華さんはセンターらしい。他の二人とは違う熱量を画面越しでも伝わってくる。


 ……すごいな。


『THREEPIECE』はそこまで知名度が高いアイドルじゃない。それは何となく分かってた。

 それでも本物のアイドルのパフォーマンスは私達の目指す場所を圧倒的熱量で分からせた。


「……///」


 万理華さんは赤面して悶絶死してた。


「可愛いね万理華ちゃん♡」


 はーちゃんの素直な賞賛も皮肉としか受け止められないのか「死ね」って返してる。


「……万理華ちゃんはこういう系でやりたい?」


 せいちゃんが問うけど万理華さんはとても返事できる状態じゃなかった。


『THREEPIECE』は曲もいいしメンバーのビジュアルもいい。でも解散した。


「……万理華さん。このグループ…沢山お客さん居るしみんな可愛いのにどうして解散しちゃったの?」


 私は尋ねながら失言だったかなって反省。


「……実力があったら売れるって単純な話じゃないのよ。この世界は…」


 顔を上げた万理華さんは真剣な顔で答えてくれた。


「実力が知名度に繋がるとは限らないし…メンバーにも事情がある。仕事である以上いつまでも売れないグループの面倒を事務所が見るわけにもいかない。私達はメンバーがそれぞれ別の道に行ったから解散したけど…それもいつまで経っても売れなかったからよ」


 万理華さんの語るアイドル業界のリアル。


「アイドルの賞味期限は短いの…若いうちしかできない仕事だしね…うちのメンバーは三人が20歳……20歳って日本のアイドル業界じゃもう限界ギリギリだし……」

「ぐさっ!」「ぐさっ!」「ぐさっ!」


 20歳組の三人のハートが激しく抉れてた。


「だから急がなきゃいけないし…やるからには結果を出さないといけない。うちの事務所は弱小だし、正直もう後がない。だからこの場で改めてみんなに問いたいんだけど……」


 和気あいあいとしたミーティングの空気感が万理華さんの視線で一転する。真剣な眼差しで私達を見つめる。


「みんなは本気でアイドルやる覚悟はある?」


 その問いかけは重かった。

 一度グループの解散という憂き目に遭ってそれでもアイドルを続ける万理華さんの気持ちは重たい。この人の覚悟と責任感の重たさを改めて見せつけられた。


 でも……


「がんばるー」

「私はアイドルになってもう一度ファンに会う」

「琴音は私が居ないとアイドルになれないらしいから」

「僕も本気です」


 みんな覚悟は本物だ。ダメ社会人若干一名軽かったけど…


「……」


 ただ朋花ちゃんだけは俯いて両膝に置いた拳を見つめてた。それが少し気になった。


 ……まぁ私も。


「……私にもアイドルにならなきゃいけない理由があるから」


 みんなの返答を満足気に受け入れて、また色々背負い込みそうになってる気もするけど…とりあえず万理華さんは納得したみたい。

 そのうえで缶ビールをプシュッし始めるせいちゃんにジト目を向けて…


「……私はあなたを信用しきってはないけど」

「なんで!?」

「そもそも…あなたどうして合宿初日に来なかったの?」

「バイトしてたから」

「いやそれは分かってるけど…バイトするなとも言わなけど…星熊マネージャーにも連絡してなかったみたいだし…あなたどうして無断で合宿バックれてたのよ」

「せやせや!!おかしいやろ!!おどれアイドルになる気あんのかい!!」


 万理華さんと朋花ちゃんからの質問に私も答えを期待する。たしかにこの人…合宿の事知らなかったって事もないだろうし……


 せいちゃんはみんなとはフレンドリーに接してくれる。ただレッスンには今ひとつ身が入ってない印象なんだよね。

 なんというか…あんまりやる気がない、というか……合宿参加最初の万理華さんのレッスンも寝転がって眺めてただけだし…

 それでも私達とは一線を画してるけど。


 せいちゃんはどこまで本気でアイドル目指してるんだろう……

 合宿終わるまでタダでご飯食べれるから…本気でそんな理由なんじゃないかって心配してる。


 そんな私の心配を他所に……


「あるよ」


 せいちゃんはタバコに火を付けながら…


「禁煙(怒)」


 万理華さんがブチ切れながらペットボトルの水をぶっかけてた。むほほっ。水に濡れてちょっとセクシーに…あっ!!白Tが透けて……っ!!


「何すんのさ!?」

「幼児も居るのよ!?受動喫煙って知らないの!?」

「万理華さん!?誰が幼児!?幼児って私の事!?(怒)」


 プンスカ怒る琴音ちゃんもてぇてぇなぁ…


「私こう見えて16歳だから!!さっきから幼稚園児とかふざけんじゃねぇ!!」

「えっ!?琴音ちゃん……私と同い歳…?」

「そうだけ…………りあ、りあ。なんでちょっとショック受けてんの?私とタメでなんか問題あんのかおいっ!!」


 はーちゃんが私達のじゃれ合いに「まぁまぁ」って優しく入ってくる。琴音ちゃんの頭を撫でながら船をこきはじめたせいちゃんを見て「寝ちゃうからその辺に」って。


 万理華さんが空のペットボトルでせいちゃんの頭を叩いた。


「星羅、話の続きを」

「ふがっ!?……ああ……えっと……星熊マネージャーからアイドルになって人気者になればお金持ちになれるって言われたから頑張る」


 すごい雑な感じだ。


「あなたもスカウト組なの?」

「スカウトってか……んー……街中で歌ってたら声かけられて、喫茶店に連れ込まれて…」

「それをスカウトって言うのよ」

「なんか色々説明されて最後に契約書出されて「サインしないならここで飲み食いした分は払ってもらう」って」

「それは脅されてんのよ」

「星羅はなんで街中で歌っとったん!?」

「歌うのが好きだから」


 朋花ちゃんの質問にシンプルに答えるせいちゃんのその時の顔には嘘がなかったように思う。


 プロ級の実力と音楽に対する考え方…普段ちゃんとしてないけどこの人は音楽に対して真剣なんだ。


「……そう」


 万理華さんはその答えに納得したみたいだ。

 コホンと咳払いひとつしてから……


「……で、結局どうする?」

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