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第40話 ……アソビマシタ

 違法カジノに響き渡ったその声の主……

 それは瓜二つの容姿をした美女二人組。


 黒いスーツに身を包む真っ直ぐ伸びる黒髪はまるで墨汁を溶かした小川の…いや、例えが悪いや。

 光沢を放つ漆黒の黒髪。黒髪と対になるような真っ白な肌。モノトーンな色彩の息を呑む美女二人。瓜二つの二人はまるでエージェントみたいにかっこよくて、鶴の一声でその場を支配した。


 ……ただ。


 二人の手首を繋ぐ白銀の鎖……それはあまりにも異質。

 この危険極まる賭博場に見たところ丸腰で突入してきた二人はあろうことかその両手を手錠で繋いでた。


 ……なんかえっちだ。


「浅野探偵事務所です!!ここで賭博行為が行われていると判明しました!!」


 凛とした顔つきの方が名乗り…


「つるっとまるっとお見通しだっ!!」


 ヤクザよりも目が怖い方が消火器を構えた。


 二人の乱入によって一瞬静止した時間…

 真っ先に動き出したのは会場の影からぬるりって飛び出した黒服の男達。多分警備かなんかだ。

 彼らが懐に手を入れた…


「死ねおらぁぁっ!!!!」


 その手が抜かれるより早く…目がイッちゃってる方の人の手元から白煙が噴き出す。

 いや違う。消火器から噴射された消火剤だ。


 そんなに広くない会場が一瞬にして白に塗りつぶされた。


 悲鳴とか怒号とか……パニックに陥った会場内に色んな声が響き渡る。それに混じって足音とか物が倒れる音とか何かが叩きつけられる鈍い音とか……

 もうとにかく大変な様子だった。


 ただ私達はガラスの檻に閉じ込められたままでそのパニックに巻き込まれる事は免れた。


「……な、なに?」


 呆然とする万理華さんは事態の把握に頭が追いつかない。いや、他のみんなもそれは同じか。


 ただ檻の中に居るのは私達だけじゃない。

 私達をジリジリと追い込んでた弓矢の射手達が外の状況なんて知らぬ顔で淡々と弓矢を構えた。


「チョットマッテッ!!」

「やめなさいっ!!無駄な抵抗はやめなさいっ!!」

「ゲームは中止やろ!?おどれら早く逃げた方がええで!?」

「がははは」

「姉さんが言ってた…逃げる時は証拠を全部消して行けって」

「私は死なない……死なない方に賭ける!今運は私に傾いたからっ!!」


 キリキリと……矢が引き絞られてく……


 手足を拘束された哀れなるウサギちゃんでしかない私達には為す術なく……


「オタスケッ!!」

「待って待って待って!!」

「これ以上罪を重ねんなやっ!!」

「がははははははっ」

「姉さん……僕は先に逝きますっ」

「外れる外れる外れる外れる……っ!!」

「みっ……みんなっ!!最後に……っ!!実は私みんなの事不純な目で見」


 矢が放たれる……っ!!

 まさにその時、ガラスの破片が甲高い音と一緒に飛び散った。


「あっ目に入った!?」


 朋花ちゃんの目に破片のダメージが浴びせられるのと同時、背後から飛び込んで来たさっきの女性が射手の後頭部に深紅の鈍器をフルスイング。

 まるで今まで幾多の頭蓋骨を叩き割ってきたと言わんばかりのその流れるような襲撃は一瞬で、躊躇いもなく、その場の頭をリズミカルに粉砕してた。


 怖かったです。


「すごい……まるで姉さんみたいだ……」


 はーちゃんの一言も怖かったです。


 ********************


 全てが終わった時、会場には警察官がひしめき合ってた。まるで特殊部隊みたいな格好の人達が変態紳士達を連行してく。

 ちょっとかっこいいなって思いながらそれを眺めてたら……


「りあ!りあ!逃げるわよ!!」


 通用口みたいな所から顔を覗かせて小声で私を呼ぶ万理華さんの必死の形相に「?」ってなってたら……


「こいつら賭博場を摘発しに来たんや!!」


 って朋花ちゃんが焦ってる。焦りがおっぱいに表れてるのかぷるんぷるんしてたよ。


「でゅふっ」

「何わろとんねん!!」

「私達が焦る事あるのかな?被害者だよ?私達」

「ウチらも遊んだやんけっ!!」


 次々に手錠をかけられていく変態紳士諸君をチラ見してから…

 私と朋花ちゃんは既に脱出経路に向かってる万理華さん達の方へ駆け出した……


「ちょっとすみません」


 んだけど……


 後ろからがっしり肩を捕まえられた私は手錠のお姉さん(優しそうな方)に捕まっちゃった。


「……あ、朋花ちゃ「すまん許せや!!」


 朋花ちゃんが私を切り捨てて逃げようとしたけど……


「どこ行くんだ?こら」


 通用口からぬっと現れた手錠のお姉さん(目がイッちゃってる方)に押し戻されるように、逃げ出したみんなが戻ってきた。





 私達はお姉さん達に連れられて外に…あ、バニーガールのままね?

 外の駐車場で直射日光に剥き出しの肌をジリジリ焼かれながらの事情聴取が…


「あのぉ、まずあなた達なんなんですか?」


 始まろうとした時先制したのは紗良ちゃんだった。


「申し遅れました。私、浅野探偵事務所の浅野詩音あさのしおんって言います。こっちは妹の美夜みよです」


 探偵……

 優しそうな方の詩音さんが丁寧に名刺を差し出してくれたけど……私の目にはその手書き感満載な名刺より、二人の手首を繋ぐ銀の輝きしか目に入らないよ。


 どうして手錠で……?

 手錠で繋がれた美女なんて好奇心が抑えられないよ……


「あ、姉妹なんですね?」

「そうです。双子なんですよ」

「あの、訊いてもいいですか?」

「質問をするのはこっちだ(怒)」

「こら!美夜!!」


 詩音さんが美夜さんの頭を消火器で殴った。ツッコミだろうか?本物のお笑い芸人に今のやり取りの真意を確かめるけど、振り返った先で朋花ちゃんは「どっから出してん!?」って消火器にびっくりしてた。

 多分ツッコミなんだと思う。


「何が訊きたいんですか?」

「姉さん今の一撃私じゃなかったら死んでたぞ?」

「その手錠なんなんですか?」


 私の指摘でようやくそれに気づいたみんなの視線も集まる。紗良ちゃんが「お前らこそ逮捕された違法賭博の客やろ!!」って騒いでこの場を乗り切ろうとしてる。浅はかすぎる……


「ここが違法賭博なのは知ってんだな?」


 流石探偵…紗良ちゃんの浅はかな抵抗の揚げ足を取って言質を取って行っちゃった。知りませんでしたはもう通用しなさそう…

 何よりこの美夜さんのおぞましき三白眼を前に下手な言い訳なんて喉が震えて出てこないよ。

 なんて迫力……


「この手錠はね……」


 震えが止まらない私を前に質問を拾った詩音さんはうっとりしたような表情を浮かべながら隣の美夜さんの肩を抱いた。


「私達姉妹の絆の証なの」

「……?」「……?」「……?」「……?」「……?」「……?」

「……くわしく」

「私達は昔色々あったんだけどね?…もう二度と離れ離れにならないようにって……私と美夜はこの鎖より固い絆で結ばれてるんだ。この手錠はそれを何時でも確認し合えるようにする為のものだよ」

「ヤベェヨコノヒト……ナンカコエェヨ……」


 大丈夫だよ琴音ちゃん。


「昔何があったんですか?」

「もういいだろ。こっちの質問に答えろ」

「分かりました。じゃあこれだけ訊かせてください」

「なんだ?(怒)」

「お二人の間には姉妹愛を超えた感情があるんじゃないですか?」

「姉さんこいつ…っ!ぶっ殺していい!?」

「美夜、やめなさい」

「肉体関係はおありですか?」

「姉さんこいつぶっ殺すわっ!!!!」

「美夜っ!!」






 変態紳士達が次々とパトカーで連行されてく…

 それを横目に今度は私達が問い詰められる番だった。


「私達は警察の依頼でこの賭博場を調べてたんだ」

「警察が私立探偵に依頼するなんて日本の警察組織も落ちたもんだな」


 せいちゃんが辛辣すぎる…フィクションで決して言ってはいけない事を……


「それで今日こうして乗り込んだんだけど…これ、賭博場の顧客リストなんだけど……」


 びっしり名前の書かれた紙が私達の前に突き出される。その最後尾には……


 夏祭万理華

 錦野星羅

 黒沢紗良

 一陽

 桜朋花

 鏑木琴音

 天鬼りあ



 オワタ。


「この7人のみ逮捕者の中に居ない…んで、お前らも7人だ」


 嘘は許さねぇって殺人級の眼光で私達を睨みつけてくる美夜さん。琴音ちゃんはカブトガニの下で震えてた……


 ……やっぱりエロいよな手錠。


「正直に答えろ」

「あの……」

「おう、言ってみろ」

「……どっちが受けでどっちが攻めですか?」

「……?……っ!?お前はさっきから!私らをバカにしてんのか消火器食らいたいのかどっちなんだよ!!」


 ああ今ので理解しちゃうって事はやっぱり…

 近親相姦百合……


「ハードだ……」

「りあ、あんたどうしたの?」

「でゅふふふふふっ」

「りあ!?」

「万理華さん。この二人…てぇてぇよ?」

「りあ!?」


「お姉さん怒ってないんだ」っていいながら詩音さんが琴音ちゃんの目を覗き……


「……?目、どこ?」

「姉さんやっぱりこいつらおかしい。だってバニーガールの上にカブトガニだもん」


 たしかに……


「お姉さんの質問に正直に答えてくれるかな?」

「……」

「琴音!琴音!!分かってるだろーな!!」


 せいちゃんが小声で圧を……


「遊んだのかな?」

「……」

「琴音ぇぇ!!」

「んーーー?」


 ……あっ。詩音さんが攻めだね。間違いない。


「……ア」

「あ?」

「やめろーーーっ!!」

「……アソビマシタ」

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