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第17話 お願いっ!!私を罵って!!

「朋花さん白ひげの事敗北者だと思ってるんですか?」

「天鬼…それはちゃうっ!!」


 桜朋花、敗北者決定。


 一つ目の爆弾が破裂したNGワードゲームはここからヒリヒリとした緊張感を伴って、最後の一人になるまでノンストップで加速していく……


「……このゲームって会話に参加しなかったら勝ち確だよね」

「紗良、それはルール違反でしょ?」

「でも万理華さん……一人だけさっきから全然参加しない、ズルい人がいるよ?」


 また自分に鉾が向くのか、と身構える琴音ちゃん。ただ、紗良さんの眼光はそのフラミンゴ頭の横にスライドする。


「ねー陽さん」

「参ったな…」


『外道』をおでこに貼り付けた陽さんが眉を八の字にして笑ってた。


「ルールを守れない奴ってのは、協調性のない奴だよね。そーいう奴って、大体悪い事する」


 紗良さん…話が無理矢理だけど陽さんのNGワードに話題を振ろうとしてるらしいかった。

 陽さんをディスる紗良さんにフラミンゴ頭から強烈な敵意の眼差しが…


「悪い事っていえばこの前親子三人が殺害された酷い事件あったね〜。ああいう酷い犯罪とかする奴って…なんかこう…なんて言うんだっけ〜」

「…ハルサントソンナヒドイコトスルヤツヲイッショニスルナ」

「琴音ちゃん?ゲームだからね?これは。大丈夫だよ?ありがと」

「…別に一緒にはしてないけど……」

「分かってますよ、紗良さん。そっか…知ってたんですね?」


 何故か陽さんが観念したような顔をして……


「『お姉ちゃん』ですか?僕のNGワード」

「いや違うけど、どゆこと?」


 紗良さん困惑。


「陽、陽。仏教用語であの…仏の道から外れた人の事なんて言うんだっけ……?あの〜……」


 万理華さん攻める。あと思ったんだけどみんなNGワードゲーム下手じゃない?もっとさりげなく誘導できないのかな?


「……『お姉ちゃん』?」

「いや待ってどゆこと?」


 なんか聞いちゃいけない気がする!!


「万理華さん、最近喉が痛いんですっ」

「えっ?……りあ。アイドルになるんだったら喉には気をつけないと……」

「そうなんですけど……痛めたって言うかなんて言うか…最近食後とか……喉に違和感があってー……」

「びょうい……っはっ!」

「あ、違いますよ。『病院』ではないです」

「……病院とか行ったら?違和感って具体的には?」

「あれやろ?胸のムカムカ感とかやろ!?」


 最初に敗北者になってしまった敗北者が暇を持て余して他人を陥れる為に参戦。


「そうですそうです。よく分かりましたね朋花さん」

「それ、有名は病気やで!!」

「なんて言ったかな〜……」


 先程会話に入っていかないのを原因に集中砲火を浴びた陽さんもとぼけながら参加し、万理華さんを追い詰める。


「なんだっけ万理華さん!ほら!あれ!あの〜…」

「……」


 紗良さんに促されても口を開かないこの顔…露骨すぎて気づかれた?



「……どうでもいいけど」


 その時割り込んでくるような声に全員の意識が引っ張られた。


「今朝建物の周り散歩してから靴が臭いんだけど……」


 今まで聞いた事ないくらいはっきりした声で喋る琴音ちゃんの一言だった!


「……サラ、ナンカシタ?」


 ちゃんとした声で…っ!と思ったらまた萎んでいった。

 そして話振られた紗良さんは……


「は?知らないよ。『うんこ』でも踏んだんでしょ?」

「アウトーーーっ!!!!」


 その瞬間の朋花さんの喜び様と言ったら…かまぼこみたいな嬉しそう形の目で紗良さんを指さして「敗北者じゃけェ!!」って叫んでる。

 まさかこんなにあっさりやられるとは……本人が一番虚を突かれて動揺してるのかいつもニヤニヤとした余裕を浮かべてるその顔がポカンと固まってる。


「……っっ……ぐっ…くっ」

「…………ザコ」

「ぐぐぐっ!ぐぎぃっ!!!!」


 ……終いには顔を赤くして歯ぎしりしだしたよ。

 ヤバいヤバい。


「最近芸術にハマっててさ…」


 さっさとゲームに戻ろうと、万理華さんが再び会話に舵を切る。紗良さんは余程屈辱なのだろうか、ずっと琴音ちゃんを睨んでる。


「芸術作品ってさ、これが芸術なの?って思うようなもの、沢山ありますよね?」


 陽さんが続いた。これは誰に向けた誘導だろう?


 …もしかして私か?


「そうなのよね。例えばほら…子供の落書きみたいなさ……なんだっけ?」

「えーっと……」


 ……これ、画家かなんかの名前だな。私のNGワード。

 やっぱりみんな下手すぎるよね。


「花の絵……描いてた……」


 下手すぎるよね。


 ……よし。


「今日はいい天気ですねー」

「ムンク?」

「あームンクも居たわね〜」

「明日もいい天気だといいですね〜」

「……えっと、そうですね。りあさんどうしました?」

「あとほら!有名なので……私買ったんだけどこの前!」

「明後日もいい天気かな〜」

「えっ!?買ったんですか!?万理華さん何者!?」

「いやもちろんレプリカ「今週はずっと晴れかな〜」…ちょっとりあ、少し黙って(怒)」

「来週も晴れるかな〜」

「……あの〜……有名な……ね?(怒)」

「再来週はどうですかね〜?万理華さぁん」

「知らない(怒)」

「先週はどーでしたかねぇ〜?万理華さぁん」

「忘れた(怒)」

「胃酸が逆流してくるアレってなんでしたっけぇ〜」

「『逆流性食道炎』……あっ」


 ……その反応。やっぱり気づいてたね。


「万理華ぁ!!おどれも敗北者じゃけェ!!」


 三人目の爆弾が破裂した。





 ……なんか、思ってたのと違ったなぁ。

 当初予定してたのはもっとこう……和気あいあい真っピンクなやつなのに……


「りあさん、好きな画家さんとか居ます?」


 残り三人…陽さんが勝負を賭けてくる。

 まぁ琴音ちゃんを溺愛してる陽さんが琴音ちゃんを口撃する事はないだろうから…


「そーだなぁ…あっ…強いて言うならコゼ・ポルカロッサ?」

「誰?(汗)」

「1987年にオーストラリで8人を殺害した殺人鬼だよ。絵も描いてる」


 紗良さんからのなんでそんな事知ってんだよ情報。

「いい趣味してるねりあちゃん」とニヤニヤする紗良さんだけど、Wikiで見ただけの情報なので好きとかないです。

 無論それは陽さんを追い詰める為の切り返しなわけで……


「え?……天鬼あなた…そんなのが趣味なの?(汗)」

「あっ……あーっ!万理華さんそれ偏見ですよ!?芸術家としてはちゃんと評価されてる人ですからっ!!(汗)」

「バラバラになった死体とかグロテスクな絵を描いてるんだよね」


 紗良さん……


「……(震)」

「違うよ?琴音ちゃん。そんな目で私を見ないで」

「そんな目てフラミンゴで目見えへんで!!」

「でもりあちゃんは評価してるけど、私は平気で人を傷つけるような人は許せないなぁ……」


 紗良さんの言葉にお前が言うなみたいな目をしたフラミンゴからの無言の抗議が刺さる。


「ねぇ陽さん?そういう人の事なんて言うんだっけ?」

「…………『お姉ちゃん』ですか?」

「だからなんでさっきから『お姉ちゃん』やねん!?」


 ハッとした陽さんが「そうか…」と呟いて何かを悟ったけど……


「『姉』とかですか?」

「待って待って、ちゃう!!」

「陽さん、人の道を外れた人の事なんて言うんですかね?」

「……りあさん…やっぱり……『お姉ちゃん』ですよそれ。もうこの話やめましょ?」

「だからさっきからなんで!?陽さんのお姉さんってなんかしたんですか!?」

「おどれの中の姉の価値観どないなっとんねん!?」

「ハルサンノオネエサンッテドンナヒト?」


 ちょんちょんと陽さんを突っつく琴音ちゃんが尋ねた。この話やめましょうと言った陽さんに。


「えっとね…悪逆非道人間失格この世のクソというクソを煮詰めた最低人間、クズ、ゴミ、人でなし、『外道』…」

「「「あっ」」」

「え?」

「陽ぅ!!おどれも敗北者じゃけェ!!」


 琴音ちゃん強……


 てか、陽さんってお姉さんの為にアイドルなるんだよね?

 陽さんのお姉さんって何者?





 ファイナルラウンド!!カーーンッッ!!


 私と琴音ちゃんのタイマンになっちゃった。私は琴音ちゃんに『変態』って言わせないといけないんだよね。

 でもこれって簡単な事なんだよね。

 ……私のメンタルは削れるけど。


「……てか、これ面白いの?」

「面白いじゃん」


 万理華さんの冷静なツッコミに紗良さんは満面の笑みだ。このゲームにおけるファースト敗北者は「先の時代の敗北者じゃけェ!!」ってずっと言ってる。


「琴音ちゃんってさー… F〇NZAとか観るぅ?」

「敗北者は黙っとれや!!」

「紗良ってなんか琴音にキツくない?」


 フラミンゴ頭と一騎打ち。この絵面は結構面白いんじゃないかな?


「琴音ちゃん、私の秘密教えてあげる…」

「?」

「実は昨日私……露天風呂でみんなの残り湯、飲んだ」


 凍りつく食堂。


 ちなみに……“飲んで”はない。ぺろっ…くらい。


「……昨日のね、陽さんの風呂上がり、興奮したんだ」

「……(汗)」

「琴音ちゃん……安産型なんだねぇ」


 これは強烈だ。

 待って?これネットに流されるの?


「何か言ってよ琴音ちゃん」

「……」


「……琴音ちゃんだんまり?」

「これは琴音なりの作戦よ、紗良」

「どういう事です?万理華さん」

「紗良が言ったじゃない。このゲーム、会話に参加しなければ負けはないわ…」

「このままだんまりで押し切ろっちゅうわけかい!?せこっ!?」

「今の天鬼を見てみなさい…」


「コトネチャンノウンコタベタイ」


「あの天鬼を見て琴音のNGワードを口に出さない事なんて…不可能」

「りあちゃんキモー(笑)」

「琴音は耐えるつもりよ…この猛攻が終わるまで」

「なんて奴や……っ!!この時代の名前は琴音やったんか!?」

「朋花さんいつまでそれ擦るんですか?」


 膠着状態は30分にも及んだ……及んじゃった。


「……」


 くっ!なんて精神力……っっ!!


「ほぅほぅ…りあちゃんは青姦近親相姦スカトロプレイがお好みなのか……」

「やめてあげなさい、紗良…」

「りあさんっ!!攻めすぎてなんか……とんでもない性癖になっちゃってますよ!?もうやめましょうよ!?」

「命がもったいないでっ!!」


 くっ……くるじい……っ!!琴音チャン何か言ってよ!!


「……」

「ずっ…ずるいよさっきから私ばっかり喋って!!ねぇ琴音ちゃんお話しよ?」

「……」

「ゲームとして成立してないからっ!!」

「……」


 ……このゲーム、こんな犠牲を払ってまで勝つ必要、ある?


「……あの、そろそろカメラのバッテリーが切れそうなので決着つけてもらっていいですか?」


 ここで永遠続くと思われた地獄に星熊さんがリミットを切ってきた。


「琴音ちゃん!!」

「……」

「お願いっ!!私を罵って!!」

「がははははっ!!M属性まで!!」

「紗良っ」


 ぐるじいよぉ…………(涙)


「……あの」


 ここで星熊さんが一言。


「……思ったんですが天鬼さん、これネットに乗せられません」

「……え?」

「え?て……さっきから言ってる事エグすぎだし…てか、逆に動画にしていいんですか?」

「……じゃあこのゲーム…」

「ボツで」


 ふざけんな。


「りあさん……もうこれ以上あなたが傷つく必要は……っ」

「これは勝負やで!!ヤワな事言うなや陽!!」

「『ピカソ』」

「「「「あっ」」」」


 じゃあもういいわ。


「……オシイ」

「『パブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ・ホアン・ネポムセーノ・マリア・デ・ロス・レメディオス・クリスピン・クリスピアーノ・デ・ラ・サンティシマ・トリニダード・ルイス・イ・ピカソ』」

「……エ、スゴイ…(汗)」


 第一回、非公式NGワード選手権、鏑木琴音優勝。

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