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第170話 桜さんが卍解を奪ってくる強敵を前にどうやって戦えばいいのか分からない阿散井みたいな顔で叫ぶ横で……

 夏祭さんを帰した後、続、緊急役員会議です。


「…どう思う?」


 代表取締役社長の社長です。名前はありません。


「どうって…!!」


 マネージャーの桜朋花さんです。バイトです。

 そしてマネージャーの私、星熊。以上の三人がPOPプロダクションの役員であり、全従業員です。


「恋の悩みってお前…」


 社長(う〇こ済み)が険しい顔で唸っています。最近大の後はいつも残尿感に悩まされてるという話でしたが、それではなさそうですね。


 夏祭さんの最近の不調は恋の悩みだという事です。その事実を前に彼氏いないどころか生涯告白された回数ゼロの私達いい大人三人は盛大に狼狽え、結果詳細を聞き出すには至らなかったのですが…


「難しく考えすぎやないんか!?魚の鯉の事かもしれへん!!」

「桜さん。それは逆に深読みしすぎてますよ。恋は恋です」

「せやかて工藤「星熊です」万理華に限ってそないな事が…!!男が出来た言うんか!?言っちゃ悪いけどあいつ、顔はええけどモテるタイプやあらへんで!?」


 あなたもですね。


「ああいうしっかりもんは男に嫌煙されるもんや!!」

「おいおい桜…じゃあ私の結婚も絶望的って事?」


 社長は黙ってください。


「なにも恋人ができたとかそういう話とも限らないでしょう?好きな人が出来たとか?」

「「なに!?あいつに!?」」

「そんなに驚きます?夏祭さんだって年頃の女の子ですよ?」


 まぁそうは言いますが…私自身も言っててしっくりきてません。夏祭さんとは長い付き合いですが、あの人は恋愛に現を抜かすような人ではないように思えます。

 ですが本人が言うんだから恋…してるんでしょう?


「……相手は誰だ」


 社長が見たことない真剣な顔で呟きます。


 アイドルの恋愛…

 POPプロダクションには恋愛を禁ずるルールはありません。が、アイドルの恋愛となればそれは軽視できない深刻な問題には違いないのです。


「……まさか…陽ちゃうやろな!?」


 まぁ真っ先に候補に挙がるのは彼でしょうか…

『FOOLS』最大の爆弾、一陽。男の娘です。

 今夏祭さんにとっておそらく最も身近な男性とは彼でしょう。


「いや…それはない」

「なんでやねん!!」


 社長の慧眼が光ります。


「これは「百合」を謳ってる作品…メインキャラが男と恋愛など…」

「な…何の話をしとんのや…!!」

「私も一さんはないと思います」

「どないしてそう思うねん!!星熊さん、考えを聞かせてもらおか!!」

「……ここ最近の夏祭さんを観察してる限り、一さんとは特段変わった様子はありません」

「じゃあ誰なんや…!!」

「私達の把握してない関係の人、という可能性もありますが…」


 社長の首が横に旋回しました。


「あいつに友人はいない」

「決めつけんでったってや!!」

「想像できるか?」

「「……」」

「あいつ、ウザがられるタイプじゃん?」

「「……」」


 ……確かに。


「……せやけど…陽やないんなら…まさかっ!!コーチ!?」

「え?ケツアナ&ハナアナですか?」

「他に男なんて…!!」


 また社長が首を横旋回。


「ない」

「なんでや!!」

「誰があんなの好きになるんだ?」

「「……」」


 確かに。


「せやったら…せやったら一体誰なんやっ!!」


 桜さんが卍解を奪ってくる強敵を前にどうやって戦えばいいのか分からない阿散井みたいな顔で叫ぶ横で……


「…男とは限らない」


 社長が呟きます。


 …まさか、同性?

 …まさか、百合?

 そんな…いや。この作品のタイトルは「百合や尊死」…


 むしろ男に恋してる方が叩かれる…


「……え?つまり…!!」


 桜さん、その顔はなにか思い当たる節が……?


「……ウチ!?」

「最近の不調とその人物とが直接関係ある可能性はあるな」

「社長。ウチかもしれへん!!」

「と言うと?」

「万理華は公私はきっちり分けるタイプだ。恋に悩みんでるからってアイドル業に支障が出るのは…」

「ではやはり…メンバーの中の誰かだと……」

「ウチの可能性もあるで!!」


 だとしたらまだ救いはあります。


「どこの馬の骨とも分からない奴と熱愛されるよりはまだ…身内なら対処のしようもありますね」

「ウチかもしれへん!!」

「問題はその恋の悩みとやらが…万理華の片思いなのか、それとももう交際にまで発展してるのか…」

「ウチはまだ付き合うとらへんで!!」

「交際にまで発展してると面倒ですね……」

「なんでや!!応援したればええやんけっ!!」

「…交際にまで発展してて悩んでるという事は、関係が上手くいってない可能性もあるじゃありませんか」

「……っっ!!」

「関係がこじれてそこからグループが分裂…なんて事も……」


 かつてのユニットでメンバーが妊娠して突如として消えた経験がある私達としては、アイドルの恋愛にはピリピリせざるを得ないのです。


 ……しかしまさか夏祭さんが。


「……まぁ憶測はやめよう。問題は……相手が誰かだな」


 風呂キャン社長が腕組みして貫禄を出しつつ、話の主導権を握ろうとしていました。小賢しいです。


「星熊ぁ。心当たりは?」

「私でないのは確かです」


 先月夏祭さんと恋愛シュミレーションゲームを一緒にプレイした際、私の選択肢を見て「あんたとは絶対恋愛できないわ」って言われましたので。


「ウチの可能性は正直あるわ!!」


 論外として……


「最近夏祭さんとよく一緒に居るのは……」


 夏祭さんに限らず『FOOLS』のメンバーはみんな仲がいいので…


「…最近よー一緒居るのは星羅ちゃうん!?」


 …確かに。

 錦野さんのレーベルの仕事とか、曲についての意見交換とか……夏祭さんは錦野さんと一緒に仕事をしてる時間が長いように思いますが……


 まさか……


 夏祭万理華×錦野星羅(酒、ヤニ、博打のクズの3点セット)


「……」

「……」

「……手篭めにされてもうたんかな…万理華!!」

「星熊、桜。お前らちょっと探り入れて来いよ」

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