第169話 生理、きついんですか?
「みんなぁ…これを見ろぉ」
「それはっ」
「キッズザニアの無料パス…!!」
「琴音ちゃんよかったねぇ」
「なんで?なんで真っ先に私によかったねなの?キッズだから?」
「紗良ちゃん…せいちゃん早く行きたいっ(ハァハァ)」
「私よりよっぽどキッズが居るんだけど?」
「がははははっ!!案ずるな琴音…人数分ある」
「案じてねぇけど?」
「琴音ちゃん行かないの?」
「……行く///」
「……あ、万理華さん。みんなでキッズザニア行くんだけど…」
「私はいいわ。みんなで息抜きしてきたらいいわよ」
「……あ…そうだよね。うん」
……これは。
ここ最近『FOOLS』内の空気に変化が訪れています。
夏祭万理華さんが孤立気味なのです。
夏祭さんはグループのリーダー。名実共にFOOLS、名前に偽りなしな彼女達の中の唯一の良心なのに…
『FOOLS』のメンバーでキッズザニアなんて絶対にはっちゃけてなんかやらかすに決まってます。夏祭さん不在なんて不安しかないです。
……じゃなくて。
こうなってからパフォーマンスにも影響が表れてますし…何より、グループ内の空気間が確実に…
これは放置できない問題ではないでしょうか?
私は美少女育成系戦国オートバトルゲームを放置しつつ緊急役員会議を招集したのです。
あ、申し遅れました。私、POPプロダクションの星熊と申します。
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ゴゴゴゴゴゴゴ…
我がPOPプロダクションは某会社さんの資料室を追い出されてから事務所がありませんので、社唯一の財産である(なぜか差し押さえをま逃れた)アルファードの車内で会議が行われます。
「…なに?」
代表取締役社長、社長です。名前はありません。
「せっまっ!?汚っ!!掃除せぇや!!」
マネージャー、桜さんです(アルバイト)
ここに私を加えた三人がPOPプロダクション重役メンバーにして全従業員になります。
そしてこの会議に招集された当事者…
「…突然何?」
夏祭万理華さん。この4人で車内面積の三分の二を荷物で埋め尽くされた車内スペースを共有します。つまり六分の一です。
風呂キャン界隈の社長の体臭が襲い掛かってきます。
「夏祭さん。何かありました?」
私は鼻に洗濯バサミを装着して問いかけます。
当の本人はツインテールの毛先を指でいじいじ。
「またその話…」
「?」
「何でもないわよ」
「確かになんか最近変やで、自分!!」
そうでしょう?桜さん。
ブッ!!
誰ですか?今屁こいたの。
「なにがよ。ダメダメだった『しゅきしゅきだいしゅきホールド』も上手く出来るようになって、いい感じじゃない」
「そうなんかも知らんけど…いや!!コーチが言うとった!!あんなんアイドルのパフォーマンスやないって!!魂が籠ってない言うてたで!!」
「そうなのか?星熊」
まったくレッスンにも顔を出さない社長が問います。臭いです社長。
「…新曲『しゅきしゅきだいしゅきホールド』はコテコテの恋愛ソングで、歌詞も振り付けも甘々なんですが…」
「あの錦野がそんな曲創るの想像できん」
「どうやら恥ずかしいらしくて夏祭さん、上手くパフォーマンス出来なかったんです。ですが…様子がおかしくなってからは安定しまして…」
「じゃあいいじゃん」
「ただなんか機械的というか…」
夏祭さんを見ます。彼女の瞳はどこか遠くに向けられています。
「反対に他の曲のパフォーマンスは落ちてるというか…」
「……ふぅん」
社長、あんまり興味なさそうです。
「原因はメンバー間で何かあったからだと思ってます」
「なんでそう思うのよ星熊」
「だって夏祭さん、メンバー達とギスギスしてますやん」
「それはウチも思った!!」
「してないわよ別に」
「せやったらなんでみんなとキッズザニア行かへんかってん!!」
「……興味ないからよ」
キッズザニアには心躍らないと……まぁ、そう言われてしまえば…
「とにかく、この問題を放置したら『FOOLS』の崩壊もあるかと…」
「なんやて!?」
「ちょっと!話を大袈裟にしないでよ!!」
「いいえ夏祭さん。あなたは知ってるはずです。私と社長のユニットがなぜ終わったのか…」
「ウチも知っとるで!!」
ブッ!!
「社長さっきから臭いです(怒)」
「万理華」
抗議は無視されました。社長が夏祭さんに問いかけます。
「『THREEPEACE』時代も恋愛ソングなんてクソほどやったのに、今回に限って恥ずかしがっててパフォーマンスの質落としてた理由ってなに?」
社長の鋭い指摘が光ります。夏祭さんが狼狽えました。
「いや別に…っ」
「なんだっけ?『THREEPEACE』の…M字開脚する曲」
「なんやて!?」
「あとほら…通称高速ケツ振りダンス…ってファンから呼ばれてたやつ」
「なんやそれ!?」
ありましたね。
「…お前はどんな恥ずかしい曲もやり切ってみせたはずだ…より売れる為に私達が露骨なエロ路線に走らせてもな…」
「そうだったのね(怒)」
「万理華、お前言ったな?「完璧なパフォーマンスはセンターの義務」って」
「……」
「あの頃のお前は不動のセンターだった。なぜなら…他がポンコツだったから」
悲しい事言わないでください。
「『FOOLS』のセンターは曲によって変わるが…絶対のエースは錦野だ」
社長がこんな真剣な顔をしてるなんて…
「プライドでも傷ついたか?中心でいられなくなって、ヤケになったか?」
「……」
夏祭さん…そんな…
「お前はどんな時もアイドル活動に真摯だった。そんなお前だから『THREEPEACE』解散後もお前を事務所に残したし、『FOOLS』のリーダーを任せたんだがなぁ……」
「いや全然違うけど」
夏祭さんは「は?ドヤ顔でズレた事言ってんじゃねーぞ?」みたいな顔で切って落としました。
やる気がなくなったわけではないようです。
「……あ、そう」
社長のこの情けない顔……
「せやったらなんでパンピーみたいなパフォーマンスしてんねん!!」
「それは……私の個人的な…不調よ」
なんと…
「どこが悪いんですか?」
「いや別に大した事ないし…とにかく3月のライブまでには調子戻すから今はほっといて!!」
「いいえ、そうはいきません。タレントの体調管理もマネージャーの仕事です。問題があるなら把握しておかないと…」
「いや……」
「ウチ、ええ漢方持っとるで!!」
「そういうんじゃないのよ…」
「深刻なんやろ!?みんなとキッズザニアに行けへんくらい!!」
「……元気いっぱいでもキッズザニアには行かない…」
「夏祭さん、話してください。生理、きついんですか?」
「黙れノンデリ」
「…逆に来てない…とか?」
「なんやて!?」
「な訳ないでしょ!!シバくわよ!!」
「話してくれるまで車から出しません」
「そういうの、脅迫だから」
「社長も出しません」
「…え?う〇こ行きたいんだけど?」
……どうして事前に行かなかったんですか?
あの屁の連発がまさかこんな伏線になっていたなんて…
「はよ言わんかい!!」
「いや」
「ウチとあんたの仲やんけ!!」
「早くしてください。社長が漏らします」
ブッ!!プスプス……
「あぁもうっ!!メンタル的な不調よ!!ちょっと悩み事!!体は大丈夫だから!!」
「それはなんですか?教えてください」
「水虫臭いやんけっ!!なんでも話せや!!ウチら仲間やんけ!!」
「デリケートな問題なのよ!!」
ブブッッ!!
「万理華っ!!早く話せっっ!!」
社長の恫喝一閃。車内を震わせる鶴の一声がケツの悲鳴と共に響き渡ります。
夏祭さんは追い詰められた顔をして……そしてとうとう観念した様子でため息と共に口を開きました。
「恋!!恋の悩みよ!!」
……それは私達の予想をK点越えしていく一言でした。
そして私達ダメダメ女子には……あまりにも荷が重くて……
「……じゃ、解散しますか」
「せやな!!」
「お疲れ様」
「なんでよ!?結局相談乗らないの!?」




