第168話 なんぼオモロいネタ披露してもマン島語で喋られたら客には何言っとるのか伝わらんやろ!?
「朋花ちゃん、私今度のライブでメインMCなんだけどさぁ……」
「花形やんけ!!」
メインMCとは…
ライブの時、曲と曲の合間の短いトーク時間で全体を引っ張る役の人の事。
今までは万理華さんか紗良ちゃんがやってた事だ。
天鬼りあ、初めてのメインMC…
「万理華さんとか紗良ちゃんが普段どうやってたのか、あんまよく分かんなくて…」
まぁそもそも…ちゃんとしたライブ自体まだ二回だし…
路上ライブの時はあんまり意識してなかった。
その今までの二回に関しても、なんか普段みんなと喋ってる時の感覚で流してたからよく分かんないんだよね…
「相談しようにも万理華さん…今アレだから……」
「なるほどなぁ…!!」
「そこでお喋りのプロたる芸人さんの出番なわけ」
「照れるやないけ!!」
「たまにはマネージャーとして仕事してもらわないとね」
桜朋花、かつての芸名を桜太夫。夢半ばで一度は散った桜である。今度こそ咲き誇る為に道を分かった彼女と今、こうして新しい形で私達は一緒にいる。
「……まぁ、ウチに任せときぃや!!」
豚もおだてりゃ木に登る。おだてられていい気になった朋花ちゃんは鼻の穴を膨らませて胸を張る。推定Dカップの双丘が揺れた時、青いアフロもまた揺れていた。
「あらん?MCの相談?」
ご存知ダンスコーチ、ハナアナ・カッポジーリ先生。
「それなら万理華ちゅわんに相談したらん?おーい、万理華ちゅ……わっ!?」
空気の読めない青ブロッコリーが万理華さんを呼んだんだけど…当の本人はスタジオの隅っこの方で膝抱えて座ったまま、じっっっと私の方をガン見してた。
……ずっとあんな感じです。
ハナアナコーチは多分、今みんなの輪から外れ気味の万理華さんを無理矢理にでも輪に入れようとしてるんだ。
けど今あの人には時間が必要なんだよね。
……私に怒ってないって言ってたけど、なんて粘度の視線なんだろう…(汗)
「……なんなのあの子(汗)」
「今はそっとしときぃ!!それよりや!!天鬼!!おどれが最高にステージで輝く為の話術、ウチが伝授したるさかい!!」
「りあちゅわん?あなたの武器はなぁに?」
「ウチが教えるんさかい!!黙っといて!?」
ハナアナコーチが問いかける。
「……声、そして美貌…?」
「ナルシストなやっちゃな!!」
「アイドルには必要なものよん?朋花ちゅわん…一流のアイドルはみな、エゴイストかつナルシストなんだからん。その心根こそが彼女達をスターたらしめてるのよん」
「せやったんか……!!せやから古き良き日本人のウチには向いてへんかったんや!!」
話を戻そ?
「コーチ、私はどうしたら……」
「あなたには天性の声があるじゃない。MCなんて、それを活かすとっておきの機会よん。どうすればお客さんの目に魅力的に映るか…もうあなたはそれを理解してるはずよん」
つまり……ASMR!?
「あかんあかん!!」
「あらん?」
「何が開かないの?貸してご覧?」
「やかましい陽、あっちいっとけや!!…あんな?天鬼。お笑いでいっちゃん大事なんが何か分かるか!?」
お笑い?
「面白い事」
「ちゃう、それは大前提やろ!?…いっちゃん大事なんはな…伝える力や!!」
「伝える力……」
「そや!なんぼオモロいネタ披露してもマン島語で喋られたら客には何言っとるのか伝わらんやろ!?笑えへんのや!!ってマン島語で喋る芸人がおるかーい!!」
「……」
なるほど…大事だね、伝える力。
「ネタが分かりにくいんもよーない!!」
「説得力があるよぉ」
「朋花ちゅわん?何の講義してるの?」
「あとな……?相方との掛け合いも大事やねん!!お笑いには適切な間っちゅうもんがある!!」
「間……」
「それはお客さんや相方が聞きやすい、話しやすい言葉と言葉の間や…!!一方的に毎分600発のマシンガントークする奴の話は聞き取りづらいやろ!?って毎分600発ってM2ブローニングかーいっ!!」
「……」
「ぶっ…!!ちょっ……あかんっ…自分のボケにツボってもうた…っ!すまん……っ!!くっ…くくくくっ!!ぶははははははははっっ!!」
「……」
「あははははははははっっ!!!!」
……朋花ちゃん。
「はぁ…はぁ…まぁつまりや。聞き取りやすいペースで聞き手や話しとる相手を意識して話す…ま、会話の基本やな!!」
「うん」
「あと、相手と共有するイメージも大事やな…今ウチがやって見せたみたいに…ネタは分かりやすく伝わりやすいものがええ。まぁ…細すぎて伝わらないモノマネみたいな、それを逆手に取った笑いの取り方もあんねんけど…やっぱみんなが知っとるモンをネタに使うた方が笑えるやろ!?」
「うん、凄く説得力あるよぉ」
「これが反面教師ねん…」
ハナアナコーチが巨大なアフロを振って、笑いすぎてまだお腹の痛そうな朋花ちゃんを弾き飛ばしながら…
「りあちゅわん」
「痛いっっ!!」
「あ、はい」
「ひとつ、大事な事教えてあげるん」
何故か通りかかった紗良ちゃんがコーチのビシッと立てた人差し指にとんがりコーン置いてった…
ついでにとんがりコーンをバドミントンのシャトルみたいにラケットで万理華さんに打ち込んでたけど、万理華さんの凄い湿度で一瞬にして湿気ってた。
……あぁ、そっか。分かりづらいと面白くないってこういう事…?(作者の声)
「メインMCの一番大事な仕事はね…」
「時間稼ぎ?」
「夢も希望もない事言ってんじゃないわよん。一番大事な仕事は仲間達の魅力を引き出す事よん」
「魅力……」
「メンバーの会話、ファンはそこに、その子の新しい魅力を見つけるのよん。それを引き出すのが、全体を引っ張るメインMCのや・く・め」
「みんなの魅力……」
振り返った私はその言葉を反芻しながらみんなを見つめた。
せいちゃんが鼻くそほじってて、紗良ちゃんがブタメン本気でデコってて、琴音ちゃんとはーちゃんがとんがりコーン回してバトってた。
みんなの……魅力…
「みんな見てー。鼻くそ集めて丸めてたらソフトボールくらいのデカさになった。あははは」
「食べられる国宝と言われる十勝ロイヤルマンガリッツァ豚を豪華に使ったチャーシューをトッピングだぁ…」
「「スリー!ツー!ワン!ゴーシュート!!」」
…………魅力?
「大丈夫よりあちゅわん。そんな顔してても、あんたも大概だからん」
「ええチームになってきとるやないけ!!」




