第167話 超武闘派仮面系アイドル…その名は『SecretService』
やぁ。『TRY AGAIN』の白石レオだぁ。
今移動中だぁ。今日はバラエティ番組に出るんだぁ。
「え?うん。そうだよ。今日はねー…22時にはお家帰るね?うん。え?今日シチュー?やった。楽しみ。うん、じゃあまたね」
隣で楽しそうに電話してるのうちのセンター、明石ミライだぁ。
「…なんだい?恋人でもできたのかい?ミライ」
「違うよレオちゃん…りあちゃんだよ」
「あぁ…『FOOLS』の…まだ居候してるんだって?」
「今日はシチューなんだ♡」
「……そっか」
ミライのお父さんとの問題はとりあえず解決したって聞いてるけど…
僕の隣でシチューにルンルンなミライの姿に一抹の不安が過らん事も…ない。
「なんかりあちゃん、元気ないんだ」
「…3月のライブも近いし、緊張してるんじゃないかな?」
「それだけならいいんだけど…」
なんだ?まるで初めて恋人ができた友人の惚気を聞いてるようなこの感覚は…
いや、別にいいんだけど。いいんだけどさ?
「まぁ…同棲が楽しいのはいいんだけど…」
「同棲やめてね(ニヤァ)」
「全国ツアーも近いんだしあんまり気を抜かないようにね?最近レッスン中少し気が抜けてるんじゃないかい?」
「そんな事ないよ…ふぁぁ…」
「眠そうだね」
「夜更かししておしゃべりしてたから…へへへ」
……大丈夫か?
「えっ!?いいんですかっ!?ほんぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
……うるさいのが居るな。
「はぁと、その電話誰から?」
「は?誰でもいいだろ?束縛系彼氏か?キンモっ!!」
「……(イラッ)」
うちのクソガキ、荻窪はぁとです。
「まぁ気になるんなら教えてやらんでもないけどぉ?」
「別にいいや」
「琴音様。今度一緒に子供科学館行かないかって誘われちゃったんだ~」
そう言えばこの前鏑木琴音とデートしたって言ってたな。
また『FOOLS』か…
「うらやましい?うらやましいか?ん?ん?レオの休みの予定は?ナンパか?そこに愛はあるんか?」
「うるさいよ町子」
「あっ!?本名で呼ぶな!!」
「え?…そんな急に…はい……はい」
運転席でハンドルを握るマネージャー、巌鉄砕さんがながら運転しながら表情に暗雲を立ち込めさせてる。
「……失礼します」
「マネージャー、誰から?」
「おいっ!レオ!!本名禁止だろ!!」
「あぁ…いえ、大した事では……」
「お前も本名呼んだろかっ!?」
……うるさいなぁこのクソガキ。
「はぁとちゃん、ポッチーお食べ」
「わぁいポッチーだっ!ミライありがとう!!」
「晩御飯食べれなくなるから、三本だけね?」
「えぇぇ~っ!」
……バカガキ。
「……実は…新曲をお願いしていたぱちゅぱちゅさんが突然断ってきて……」
「え?」
ぱちゅぱちゅさんは『TRY AGAIN』の楽曲をいつも作ってくれている作詞家さんだ。
「え~!?じゃあ新曲は!?」
「大丈夫ですはぁとさん。何とかしますんで…」
「ほんと?」
「はい、必ず」
巌鉄砕さん、力強く言ってくれてはいるけど…
ぱちゅぱちゅさんがこんな形でうちの仕事断ってくるなんて今までなかった。察するにこれは…
「……」
「ミライ」
隣で俯くミライに声をかける。その顔は深刻に沈んでた。
「君のせいじゃない」
「……うん。ありがとう」
「……あんまり考えすぎちゃだめだ。たまたま都合が付かなかったんだよ。ぱちゅぱちゅさん、フェイスハガーに張り付かれてから体調悪いって言ってたし」
「うん。それ、生きてる?」
キャンドルベリーの妨害の可能性が高い。いや、正確にはそのバックに居る政財界のフィクサーの…
だから巌鉄砕さんの顔色もこんなに優れないんだ。今にも事故りそうな顔してる。
…しかし、キャンドルベリーとの話は芸能界の便利屋、雨宮小春(前作主人公)がつけるって話じゃなかったのか?
「……で、レオ。お前さっきからどこにかけてんの?」
ポッチーを三本どころじゃない数貪るはぁとが指摘するように、僕は狂ったように電話をかけていた。
しかし繋がらない。
僕がTELしてるのはその、芸能界の便利屋さんだ。
『TRY AGAIN』の結成の時にもお世話になった雨宮さん(前作主人公)。どんな難問もぶん投げれば解決してくれる彼の有能さは業界では有名だ。
僕も今ちょっとした案件を抱えてる。
……そう。一陽君のお姉さん捜索。このミッションには僕と陽君のエッチが懸かってる。
…とはいえ僕も『TRY AGAIN』のリーダーで多忙だし、便利屋さんにお願いしようと思ったんだけど…
『おかけになった電話は現在、電源が入っていないかくたばってる為、お繋ぎできません。一昨日来やがれでございます』
……忙しいんだろうか?
……と思ってた時期が僕にもありました。
テレビ局について車が駐車場に入った時だった。
巌鉄砕さんが僕達の荷物をトランクから出そうとしたんだけど…
「あれ?」
「どうしたんですか?」
「いや…なんだろ、これ…サンドバック?」
トランクに見知らぬ荷物が積んであった。
それは特大のサンドバック。人ひとりすっぽり入れてしまいそうな…
「はぁとちゃん、またこんな物勝手に積んで…」
「いやミライ、なんでも私のせいにすんのやめてね?」
「重いです…」
巌鉄砕さんが苦労して引きずり出した。乱暴に地面に落とされたそれは中に何か入ってるような妙な膨らみがあった。
……
「なんでしょう…この膨らみは…まるで…」
「…この中に神心会の加藤が入ってたら私は笑うね」
「もうはぁとちゃん」
「……開けてみよう」
僕の声に三人は躊躇しながらも…
「ふんっ!!ふぅんっ!!」
ビリッ!!ビリリリッ!!
「巌鉄砕さんすごーい」
「いや素手て…ゴリラじゃん」
「怖」
巌鉄砕さんが素手で引き裂く誰のか分かんないサンドバック。そしてその中に入っていたのは……
……まぁお察しの…
人だった。
「カ……カトオォォォッッ」
「はぁと違う。これ雨宮さんだ」
「きっ…きゃぁぁぁぁぁぁっ!!」
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キャンドルベリーの代表取締役社長に就任してもう何年になるかしら…
アチシとて芸能界は長い。
群雄割拠、魑魅魍魎の潜む芸能界。
そんな中でも特級の厄ネタって言われてるのが、芸能界の便利屋、雨宮小春よん。
日本のスキャンダルキングにして各方面に太いパイプがあり、その力は世界の映画業界のドン、アレックス・アーガイルを下したとかなんとか…
そんな厄災がうちのパトロンに殴り込みに入ったと聞いて、アチシも飛んで来たわけ。
「…ヤッテ・ランネーからの依頼で来たようだよ。『TRY AGAIN』にちょっかいを出すのはやめろ、とね…」
「お手間取らせます…」
「…構わないよ、瓶張丹君。持ちつ持たれつ…我々は運命共同体じゃないか」
……冷や汗が止まらないわん。
アチシ達キャンドルベリーが落ちぶれて、どん底まで落ちた後ここまで上り詰められたのはこの男の力あってこそ……
政財界のフィクサー、御代帝。
日本の闇に潜む怪物…
この男を敵に回して生き残れる奴はいないわん。例え芸能界の厄災だとしても…
故に、アチシ達とてこの男の機嫌を損ねる事は許されないわん。
奴の前では全て等しく蟻に等しい…アチシ達であっても。
アチシが頭を低くして向かい合う先、豪華絢爛な洋室の奥の暗闇の中で鋭い眼光が光ってる。
彼の一挙手一投足に対して冷や汗が止まらないわ……
「御代先生にはご迷惑をおかけして…」
「まったく問題ない…便利屋かなにかは知らないが…一芸能人など私にとっては何も恐れるには足らない…君は何も心配する事はない…」
重厚な声。心臓を鷲掴みにされてるみたい…
「おっしゃる通りかと…」
「彼にはしっかり‘’反省‘’してもらったから、安心したまえ…」
反省…不穏な言葉。生きてるのかしら?
「ありがとうございますわん…もし何かトラブルがありましたら…」
「心配には及ばん…私には彼女達がついているからね…」
その時、暗闇から三つのシルエットが浮かび上がる。
闇に紛れていたその姿が現れた時、アチシの本能が危険信号を発したわん。
…雨宮小春は実践剣術の超武闘派…雨宮を下せるとしたら…
……こいつらねん。
その三人はそれぞれ…鬼、天狗、翁の面でその顔を隠してる。
闇から染み出してきたみたいなその異様なオーラに意思とは無関係に体が震える。
芸能界の闇の結晶。御代帝の懐刀。
その正体はおろか、素顔すら誰も知らない異質すぎる存在。誰が呼んだか…芸能界の死神。
超武闘派仮面系アイドル…その名は『SecretService』




